[事例2-2] うつ病の職場復帰に際して「試し出勤制度」を採用した事例

1 概要

年齢: 48歳
性別: 男性
職種: 事務職
業種: 人材派遣会社
疾患名: うつ病
家族のサポート状況: 専業主婦である45歳の妻と2人暮らし。21歳の長男は大学生で他県にて一人暮らし。疾患に対する妻の理解は十分だが、やや本人の些細な言動に神経質に反応しやすい傾向があり、自宅療養中に何度か同行受診し、家族としての対応や心構えを主治医から助言されています。

2 経過

 元来まじめな性格で6か月の自宅療養ののち、主治医から「来月1日以降の復職が可能と判断する。ただし、復帰当初は業務負荷を軽減することが望ましい」という内容の診断書が発行されました。これに基づき、本人、上司、人事担当者で面談を行いました。本人は当初、フルタイムで復職したいと希望しましたが、診断書の内容から段階的に復職したほうがいいのでは、という会社側の提案に本人も納得し、最終的に本人の希望にて「試し出勤」を導入することになりました。

 最初の2週間は始業時間の8時30分から10時30分まで、次の2週間は12時30分まで、次の2週間は15時30分まで、最後の2週間は定時の17 時30分までとしました。業務内容は責任がなく期限も厳しくないものとし、業務量も各段階の勤務時間に合わせたものとしました。その後、本人から主治医に連絡をとり、診察とは別枠で面談を設定し、本人、上司、人事担当者で訪問しました。人事担当者が主治医に試し出勤の計画書を見せて説明し、主治医からもこの計画にそってよいとの回答を得ました。

 そして試し出勤の計画を正式文書にし、各人のサインをしました。試し出勤の間は基本的に毎週通院し、主治医に健康状態の確認と勤務上のアドバイスを受けました。翌週の頭から試し出勤を開始。本人は「4時間勤務ならどうってことないだろう」と高をくくっていましたが、初日を終えて「意外と疲れたな」と言っていました。それでも睡眠はよくとれており疲れがリセットできていたため、順調に出勤できました。同僚が忙しく働いている中、自分だけが軽い仕事だけして早く退社してしまうことに後ろめたさを感じていましたが、主治医からの「周囲の忙しさに影響されず自分のペースを保つことが今は重要」というアドバイスを思い出し、けっして無理はしませんでした。家族も当初は試し出勤の導入に不安を示していましたが、主治医のアドバイスも受けつつ適切な対応ができるようになりました。第3段階の15時30分までの勤務になって3日目に疲労が蓄積したことを本人が自覚しました。このため前日までよりも睡眠時間を多くとるように生活リズムを調整し、週末も休養にあてました。このようなセルフケアにより第3段階も休まず乗り切り、最終段階までやり遂げ、無事に正式復職を果たしました。その後も3か月間は時間外労働なしのフルタイムで勤務し、復職後1年経過した現在は通院と服薬を続けながらも順調に勤務しています。

3 解説

 試し出勤制度を利用して主治医、上司、人事担当者のサポートを受けて順調に復職にいたったケースです。ここで紹介した試し出勤のプログラムはあくまでも1 例であり、実際には企業の就業規則や現状などを踏まえて労使間で検討し、試し出勤の期間における処遇、災害時の対応、人事労務管理上の位置づけなどについて一定のルールを定めておく必要があります。しっかりした制度を作っておくことは復職についての関係者の共通認識を促し、休職者の扱いの公平性にもつながります。2009年3月に改訂された「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省)も参照してください。

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