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[事例2-7]疾患特性を職場に説明し、職場復帰が成功した統合失調症の事例

1 概 要

症例:45歳、男性
職業:品質保証
職種:技師
既往歴:20代の頃、幻覚妄想などの精神病症状で入院歴あり

2 経 過

  疾患特性を職場に説明することで復帰が成功した統合失調症の事例です。

  元来、職場では口数が少なく、周囲の人たちが関わることは少なく、「変わり者」として職場に溶け込めない状況でした。仕事でも「ミスが多い」、「一度に多くの仕事をこなせない」など就労能力は高くなく、「無断で早退する」、「無断で休む」など就業規則が守られないことも度々でした。

  数年前からの人員削減により一人当たりの作業量が増え、残業も多くなってきました。次第に無断で早退する、休むなどの勤怠が乱れはじめ、6回目の休職となりました。3か月の休職後、主治医より復帰の許可が出ました。復職面談の際に今回の休職を振り返ると、「仕事が忙しくなって、”ザワザワ”という幻聴、”人影が見える”などの幻視の症状が強くなって休んでしまった」ということが分かりました。過去の休職を振り返っても同様の傾向が明らかになりました。

  産業医が主治医に職場で配慮することを確認し、「残業時間が多くなると服薬が不規則になったり、疲労が強くなり症状が悪化する可能性があること、また、一度に多くの情報を処理することが苦手であるため、突発的な対応がない自分のペースでできる業務が適応しやすいだろう」と意見をもらいました。また、「無断早退」や「無断欠勤」については、その都度、指導してもよいとのことでした。

  この意見を受け、職場の上司に疾患の特徴を具体的に分かりやすく説明しました。そして、産業医は職場に対し、短納期でない比較的に自分のペースで取り組むことができる製品へ担当を替える、残業をさせない、といった職場調整をお願いしました。また、本人に対しては「黙って休んだり、黙って早退すること」は職場の皆が心配すること、また他の人の仕事にも影響がでる可能性があることを説明し、そのような時はきちんと上司に連絡するように指示しました。

  復職2年が経過していますが、以後、月に数日の休みや早退はありますが、長い休みはなくなっています。また、きちんと上司に連絡をするようになっており、上司の支援も受けやすい状況が構築されました。

3 解 説

  本事例は、職場の側に障害特性についての理解がないため、疎通がうまくとれず、業務に支障を来たしていた状況でした。上司は統合失調症の障害特性に関する知識がないことから、統合失調症を患う部下の対応に苦慮し、戸惑いや焦り感、イライラを感じていました。統合失調症者の障害特性には「状況に合わせて必要な情報を選択し、統合する能力が低い」、「容易に溶け込めず、常に緊張している」、「対人的状況の変化に弱く、対人関係を築くことが苦手」、「世間的・常識的な思考、行動をとりにくい」などがあります。そのため、複数の人物とやり取りをし、さまざまな情報から優先順位をつけて対応しなければならない状況下で強い負担感を感じて、幻覚や幻聴などの症状が悪化する場合があります。

  また、対人的状況の変化に弱く、対人関係を築くことが苦手であるため、集団に溶け込むことができず、職場で孤立してしまうことがしばしば見受けられます。今回の症例も普段から職場の周囲の人とのコミュニケーションがなく、職場での振舞い方が分からず孤立していました。また、周囲も障害特性についての知識がないため、「変わり者」として関わらないようにしていました。結果として調子が悪くなると、強い緊張感のためいたたまれず、「無断早退」、「無断欠勤」をとってしまうようでした。

  産業保健スタッフが主治医の意見に基づき、障害特性を理解しやすい言葉で具体的に説明することが職場内での良好な関係性を築き、円滑な職場適応を可能にすると考えます。また、統合失調症者へは、会社のルールが守られない場合は見過ごすのではなく、対応可能な範囲で具体的に分かりやすく指導することが職場適応に必要であると考えます。