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[事例1-1] 長時間労働によりうつ病にかかり自殺未遂したシステムエンジニアの事例

1 概要

症例: 38歳 男性
職業: システムエンジニア
職種: プロジェクトリーダー
既往歴: 高血圧
主訴: 仕事に対する意欲がなくなった、生きていて虚しい、部下に迷惑をかけているので自分はいなくなった方がよい

2 経過

 元来まじめで後輩への面倒見がよく、争いごとを好まない責任感が強い性格でした。大学卒業後、ソフト関連会社に就職。当初はシステム開発に従事し長時間残業をたびたび経験していましたが、体調を壊すことはありませんでした。仕事の真面目さはもとより、上司、同僚からの信頼も厚く、年々職場で中心的役割をになうようになりました。

 35歳時、部署異動に伴い、システムエンジニアとして従事するようになりました。

 37歳時、プロジェクトリーダーに昇格。昇格直後より職場環境は悪く、不況に伴う過重労働やリストラ、社内再編により、部下に退職者や病欠者が多くみられました。人員の補充はなく、さらに自分のプロジェクト以外にも、複数のプロジェクトについても関わりをもつようになりました。帰宅時間は0時をまわる状態がほぼ毎日続き、睡眠時間は3-4時間で、土日も出勤する状態となりました。部下の長時間残業については厳しく管理を行ったものの、自らの勤務時間は管理職であるという立場上管理されることはなく、残業時間は100-200時間/月が続きました。昇格3か月後、意欲、集中力が低下し、頭の回転の悪さを自覚するようになりました。身体的にも頭痛や肩こり、異常な発汗、食欲低下、体重減少などがみられました。休日は一日中寝て過ごしましたが、疲労感は回復しませんでした。昇格5か月後、毎日がむなしく将来に対して悲観的な考えを持つようになりました。作業効率は落ち、部下への指示も十分に行えなくなりました。この頃から「自分は部下に迷惑をかけている、自分がしっかりしないから迷惑をかける、この職場には自分は不要な存在だ」と罪悪感を持つようになりました。徐々に欠勤するようになりましたが、心配した上司にはこのような精神状態であることを相談することはありませんでした。昇格6か月後のある日、内科より処方された抗不安薬を過量服薬して自殺を図りました。家族が早期に発見し救急搬送。処置が早かったため、重篤な合併症を残すことなく数日後には回復しました。同病院の精神神経科医師の診察により、重度のうつ病であるという診断を受け、そのまま精神科病棟へ転床。約3か月間の治療を受け退院となりました。

3 解説

 この方は、真面目で責任感が強く、争いごとを好まないといったうつ病羅患者によくみられる性格をもっています。仕事ができ上司からの評価が高いだけでなく、他者配慮的であるため、同僚や部下からの人望が厚い方です。

 このような方が一度人の上の立場になると、責任を果たそうとするがあまり、仕事を抱え込んでしまう傾向が強くみられます。しかも部下に病欠者が多いとなると、それらをすべて自分が肩代わりしようとし、人並み外れた残業をこなすことも厭わなくなります。また職場のルール上、管理職の健康管理は自ら行うことになっていることから、長時間残業を繰り返していても上司が気づいて管理しない限り、問題になることがありません。「上司に迷惑をかける」、「自分の責任である」などの理由から本人は上司への相談を行わず、このことが、病状の進行に歯止めがかかりづらい状況を構成します。当初うつ病の症状としては、意欲・集中力の低下に始まり、将来に対する悲観的な考えや、生きていても虚しいという虚無感、頭痛や肩こりといった身体症状、食欲低下、体重減少などがあります。さらに、「自分は周囲に迷惑をかけている」という罪業感(ざいごうかん)は自殺に導きやすい症状であり、自殺企図に至ってしまいました。

 このケースを通して、うつ病者への対応は、性格上自ら助けを求めることが少ないことから、周囲による早期発見が重要で、治療も周囲が強く促す必要があると言えます。