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[事例3-10]強い心理的負荷の出来事に遭遇したシステムエンジニアのうつ病の事例

1 概 要

年齢・性別:28歳、男性
職災学会:大企業のシステムエンジニア
疾患名:うつ病
家族歴、生活歴:性格は真面目で几帳面。責任感が強い。両親と弟の4人家族。両親はよくできた長男(本人)に期待と信頼を寄せていた。

2 病歴・対応経過

  大学卒業後、某社に就職。入社4年目に遠隔地へ転勤となりましたが、癌で療養生活に入った父親の面倒をみなければならなくなったと退社。実家の東京に本社を置く現会社に再就職。父親も病気を持ちながらも働けるようになり、その後は仕事も体調も順調に経過していました。

  30歳の4月、昇進し大阪に転勤。初めての管理職への戸惑いと、転勤直後の大きな仕事上のトラブルとで8月頃から不眠が出現しました。多忙で休日もなく帰省もできない日が続きました。そのころ父親の病気が悪化し、入退院を繰り返し余命いくばくもないという状況が続きました。追い討ちをかけるように、婚約中の彼女から別れを告げられ、急速にうつ状態となり、産業医の紹介で11月心療内科を受診しました。

  受診時、睡眠障害、食欲低下、希死念慮、抑うつ気分、不安感、焦燥感、強い自責後悔の念、注意力・判断力の低下等の症状があり、仕事もほとんどできていない状態でした。うつ病と診断され、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠薬などを投与されると同時に、とりあえず3か月間の休業と実家での療養を指示されました。

  療養中父親が逝去、その事後処理も何とかこなし、休業7~8か月後には復職への意欲も出てきましたが、焦りは禁物と、約2か月間の生活習慣調整のためのリハビリテーションを行いました。その間に、再発予防策の一環として人事と連携、復職は実家のある東京に戻すよう調整し、1~2か月間の仮勤務のあと、東京での職場復帰となりました。その後、経過は順調です。

3 ポイント(1)-家族力は最良のセーフティネット

  家族との結びつきが強ければ強いほど、単身赴任や家族内の変化は発病のリスクを高くします。ストレスがかかった時、セーフティネットとしてのエネルギー供給源である家族力を失うからです。治療上も家族の協力の良し悪しが大きく回復に影響します。

4 ポイント(2)-自殺念慮があれば実家療養治療か入院

  単身赴任など独居での希死念慮が強い場合、療養の場として家族の目の届く実家かあるいは入院がよいでしょう。その時は、実家近くで治療できるよう主治医を紹介してもらいましょう。

5 ポイント(3)-ストレスはストレスを呼ぶ

  遠方への転勤が結果として婚約者を失うことになり、かつ、父親の介護にも協力できず喪失感と自責感で一杯になる一方で、昇進による責任感や時間的余裕のなさが希死念慮へと追い詰めていきました。赴任先での親身な相談者の有無なども病状を左右します。