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[事例4-1] 非正規雇用労働者のメンタルヘルス不調の事例

1 概要

名前: Aさん
年齢: 34歳
性別: 女性
職種: 事務職
業種: 製造業
家族のサポート状況: 同い年の夫(中学校教師)、8歳の長女と3人暮らし。
疾患名: 全般性不安障害

2 経過

 Aさんは2年前から現在の会社に派遣社員として勤務していました。仕事はきついと感じつつもこれまでの自分の経験をベースに対応できる範囲のものであり、同じ部署の派遣社員どうしや正社員との関係もよく、特に問題なく仕事をこなしていました。しかし、1年前に会社の業績不振から大規模なリストラが行われ、正社員、派遣社員ともに人員が削減されました。Aさんは幸いにも会社に残ることができましたが、同じ部署にいた派遣社員は4人から2人に減りました。しかし、こなすべき総仕事量はほとんど減らないため、必然的に一人当たりの業務量が増加しました。とても所定時間内に終えられる仕事量ではなくなりましたが、会社の方針で残業をすることが原則禁止となり、濃密な労働を強いられました。また、新たなリストラ計画が進行しているという噂を耳にして、「次は自分が切られるのではないか」という不安が次第に高まってきました。もう一人の派遣社員や残った正社員も同様の不安を抱えていることが感じ取られ、職場全体の雰囲気も悪くなっていました。

 日々の仕事で疲れがたまり、帰宅しても家事をするのが億劫になり、夫や娘にいらいらしてきつい口調であたってしまうようにもなりました。さらに、気分的な不安だけではなく次第に動悸、肩こり、寝つきの悪さが現われました。会社では努めて元気に振る舞い、調子の悪さを悟られないようにしました。もし会社に知られると、真っ先に次のリストラ対象になるのでは、という不安が大きかったからです。普段とは明らかに違う様子に夫も心配し、時間をかけて話をし、Aさんはメンタルクリニックを受診することになりました。主治医は、このまま働き続けると悪化するおそれが強いのでしばらく休養するよう勧めました。同席して話を聞いた夫も同じ意見でしたが、Aさんは今自分が休んでしまうと職場のほかの人たちに迷惑をかけると考え、当初は抵抗しましたが、最終的には納得して休養することになりました。

 自宅療養して仕事から離れることによって、さらに派遣の身分では休むと収入がなくなってしまうのでは、と休むことに抵抗しました。しかし、Aさんは登録している派遣会社の健康保険組合に加入し保険料を払っているため、傷病手当を受給することができました。薬物療法とカウンセリングを受けながら、治療経過は順調です。

3 ポイント

 派遣社員においては、メンタルヘルス不調者が発生した場合の対応に派遣元と派遣先のどちらが責任を持つかといえば、当然ながら派遣元です。診断書が出た時点で派遣先、派遣元、本人とで面談をもち、休業中のフローを確認しておくとよいでしょう。療養する前と同じ派遣先に戻れるかの保証はできませんが、復職可能となり働く意思があれば派遣先企業をきちんと斡旋することを保証して、社員が安心して療養できるような配慮を行うことが重要です。療養することになった Aさんが回復し、主治医から復職可能との診断書が発行されたら、産業医の意見をもとにして派遣会社の事業主が復職可否の最終判断をします。