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[事例3-3] 多忙な業務により、うつ病となった看護師の事例

1 概要

症例: 30代、女性
疾患名: うつ病
職種: 医療職(看護師)
勤務状況: 即日入院が非常に多いなど大変忙しい科で働いており、残業が非常に多い毎日を送っていました。また休日も自己啓発のための勉強をするなど非常に熱心な看護師でした。
家族歴: 精神科遺伝負因はありません。平成3年に結婚し、現在は夫と2人暮らしです。
既往歴・健康診断結果: 特記事項はありません。
生育・生活歴: 東京に2人同胞中の第2子として生まれました。出生、発育、発達に問題はありません。高校卒業後、看護学校へ進学しました。看護学校卒業後、病院ICUで勤務しますが、人間関係のストレスで退職し、発病6年前に現在の職場へ就職しています。
病前性格: 真面目で、他者の評価を気にします。

2 現病歴及び治療経過

 平成X年4月に新人看護師が職場に就職し、新人看護師の指導員をつとめるようになりました。平成X年10月には指導に加え、看護発表に向けての準備が重なり忙しくなりました。その頃より、「同僚が何を話しているかとても気になる」や「夜中途中で目が覚める」や「疲れやすい(特に朝)」などの症状が出始めました。業務終了後に毎日相談に訪れることを心配した看護師長の紹介で平成X年11月精神科初診となっています。

 気分の落ち込みのほか、不安・焦燥感を認めたため、薬物療法が開始されました。また、職場の上司に対して、症状、経過について説明し、業務量を減らす調整を依頼しました。お薬を増やしていきますが、看護という集中力を要する業務内容に加え、対人関係に気を遣うことが多い性格や、交代勤務により服薬が不規則となっていることなどでなかなか症状はよくなりませんでした。そのため初診の翌年4月より休業としました。

 休業により若干、症状は軽快したものの、夫が仕事へ出かけ、日中一人になると不安・焦燥感などの症状が強くなり外出できない、夫が帰宅すると泣いて不安を訴える、夜間は熟睡できないなど不安定な状態が続いていました。不安感が強い時は予約外で外来を受診することが続きました。初診の翌年5月に、夫、母親にも病院へ来てもらい病状を「必ず症状はとれるので心配しないこと」と説明し、「本人の不安を軽減するような対応をとること」などの協力を依頼しました。以後もお薬による治療と家族の支援を続け、初診の翌年10月頃より「焦った気持が落ち着いてきた」、「家事をする余裕がでてきた」など不安・焦燥感などの軽減を認め、少しずつ活動範囲が広がってきました。翌々年1月頃より症状も落ち着き、生活リズムも整い、日常生活に支障がなくなってきました。上司である看護師長を交え、復職後の業務について話し合いました。本人に対しては、服薬をきちんと行うこと、生活リズムを規則正しくすること、がんばりすぎないことなどを指導し、現在、復職準備中です。

3 考察

 看護師は交代勤務という不規則な勤務形態、人間の生死関わる非常に集中力の要する業務を時間内に終わらせなければならないという時間管理が求められます。また一方で、献身的な姿勢、冷静な判断を求められるなど心身ともに非常にストレス強度の高い職種です。さまざまなストレスが重なり、精神的不調を来たした場合、医療エラーにつながる可能性もあます。海外ではストレスコーピング研修や認知療法的アプローチ、Employee Assistance Program(EAP=従業員支援プログラム)など、さまざまな取組みが行われ、医療職メンタルヘルス対策は重要だと考えられています。

  看護師が精神的不調で投薬治療が必要になった場合、交代勤務や薬による眠気で集中力を低下させないよう、患者の多くは服薬時間に非常に気を遣います。そして次第に服薬が不規則になります。職場上司は服薬が規則的に行われるような勤務スケジュールへの配慮が必要となります。

 また、チームで仕事をするため、医師、同僚看護師に気を遣うあまり不調を隠し、次第に疲弊していく場合もあります。復職に際しては職場上司や医師、同僚の理解を得て円滑な復職支援の体制づくりも重要になってきます。また、メンタルヘルス不調の早期発見のためには相談窓口の周知徹底も重要です。

 最後にうつ病について付け加えておきます。うつ病の症状の中に「激越」とよばれるほど激しい不安・焦燥感を示す状態があります。このような状態の場合、不安・焦燥感のつらさのあまり自殺を考えてしまう人もいます。うつ病で自殺の危険がある場合は、まずは一人にしておかないよう、家族の援助が得られるような環境づくりをしましょう。