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3 ストレスへの対処

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(1)児童生徒との関係-不登校、いじめ、学級荒廃

 児童生徒との上手なコミュニケーションのスキルを得たい、スキルだけでなく個人としての魅力を児童生徒に感じてもらいたい、また感じたいとすべての教師が願っていることでしょう。そのためには、ⅰ.問題行動を注意しても、人格否定的なコミュニケーションをしない、ⅱ.日頃から、児童生徒が声をかけやすい雰囲気を作るために、自分からも機会を見つけて話しかける回数を増やすなど、日常の基本的な心得はいくつもありましょう。

 しかしながら、現在社会問題になっているような陰湿ないじめ、学級崩壊、不登校など、ベテランの教師でさえかつて経験しなかったような事態に、教師のみならず、保護者、そして社会全体が不安を感じ、「どうにか早く解決を!」と焦っている現状もあります。こうしたことから、「教師にはもっとやれることがあるはずだ」と、周囲から一人では解決困難と思われるような課題の解決を迫られたり、緊張と不安の極地で疲弊していく教師が多いのも事実でしょう。次に述べるような、保護者との関係がうまくいっていないときはなおさらでしょう。

 児童生徒の年齢、置かれている社会環境などにより、そのつど児童生徒のいわゆる"発達過程での課題"は異なってきます。そんなとき、いま目の前で動いている、児童生徒を含めた周囲の集団の力、集団力学を一歩離れた目から分析して助言してくれる援助者がなくてはなりません。一人で抱え込まないことの大切さは、まじめな責任感の強い先生には時に難しいことに思えるかもしれませんが、常に忘れてはならないことです。

 学級荒廃にまで至ったときは、学校全体で早急に対処を検討しなくてはならないことは言うまでもありません。しかし、いじめ、不登校、暴力、喫煙、飲酒、万引き、最近ではリストカットなどの自傷行為、薬物使用などの問題は、場合によっては、早急に原因究明を行ったつもりが、余計に本人たちとの心理的距離を広げてしまい、対話がまったく成り立たなくなることもあります。 また、教師にとって、問題を抱えている児童生徒個々人を対象として、発達過程の問題を考慮するだけではとても対処できない場合が多くあることも忘れてはならないでしょう。虐待を受けたことでの児童生徒の傷つきがある場合は、心理、医療、地域福祉など複数の担当者が関係してはじめて、問題の所在が見えてくることがあります。

 また、広い意味での問題行動には発達障害(ADHD=注意欠陥/多動性障害、LD=学習障害、アスペルガー症候群など)と言われるものが深く関係していることも時にあり、精神病の発病が関係している場合も頻度はどうあれ存在します。このような場合はとにかく医療に結びつけること、専門家の診断と、必要であれば治療を受けられるようにしていくことなしには解決の糸口がつかめません。また時には教師自身の抱えてきた心理的な課題が、こうした児童生徒との関わりの中で表面化してくる場合もあります。しかし、この場合にも、とにかくここまで頑張ってきたことに自信を失わず、早めに自分自身のストレスに向き合うことが重要になります。問題行動の原因は複雑に絡み合っていることもあり、どこまで見守るのか、医療などの介入に関し自信をもってすすめたらよいのか、一人では糸口が見つからないものも多いのです。担任が一人で問題を抱えて、疲弊し焦り、さらに保護者の協力や学校全体の協力を得ることができなくなるとストレスの悪循環に陥る恐れがあります。

(2)保護者との関係-クレーム・教師批判

 教員のストレスの中で最近頻繁に話題にのぼるのが、児童生徒の保護者からの要望が質的にも量的にも、教師個人や学校全体の力をもってしても、答え切れない限度を超すことが多い、ということでしょう。従来多かった、保護者とのコミュニケーションの行き違い、というレベルであれば、その対処の基本は、相手の、「子供がかわいい」という気持ちを受け入れ、まずよくその不満を語ってもらい、誤解は説明しますが、「保護者の育て方が悪かったのか・・・」という側面が感じられれば、苦労をねぎらう言葉でまず同じ方角からこの問題を見ているという姿勢を示し、信頼関係を築くことです。

 しかしながら、近年モンスターペアレントと言う呼び方がなされ、、その程度が常に問題になりますが、そういった攻撃性をもとからもっている保護者なのか、保護者をそこまでエスカレートさせないように、冷静になってもらう手はなかったのか、あったとしたら今から何ができるのか、学校の複数の教師が知恵を出し合って意見の一致をもってあたっていくしかありません。スクールカウンセラーに介入援助を依頼できる環境だったとしても、問題の突破口はどこにあり、キーパーソンが誰であるかはケースごとに異なるという点を意識して協力体制を作ります。

 ただし実際に、いかなる場合でも許されるものではない暴力行為などは、学校全体の問題として毅然とした態度で臨むべきでしょう。いずれにしても、一人で抱え込み対処をしない、ということがここでも大切でしょう。

(3)同僚との関係-相互のサポート体制、組織の支援システムの充実

 どんな人でも、一人では乗り越えられないストレスはあります。教師は児童生徒の学習の成果をあげることのみでなく、日々その集団としての協力のあり方を教え、また、人間関係に傷ついた児童生徒には、まず居場所を作ることを考えることが多いでしょう。

 それは、とりもなおさず、教師自身が、互いにきついときは助け合い、人間関係に傷ついても、人間関係の中で癒されて、といった小さな再出発を日々重ねていけるような組織を必要とするのと同じです。現実には、意見の相違や、お互いの多忙の中で教師同士がちょっとした言葉の行き違いに傷つき、協力がうまくいかない現状も少なからず見られます。

 教師のストレスは、対児童生徒・対保護者と並んで、職場の人間関係がこじれてしまったことが大きな要因として挙げられてきているのも事実です。また他の職種とも共通しますが、異動・転勤による職場の雰囲気・価値観に適応しなければならない時期は、精神的に高ストレス状態にあるということを、互いに意識することも必要でしょう。

 このようなことから、職場で精神的に孤立してしまうことは、うつ病発症のきっかけになりかねません。ストレス社会にあっては、職員室をこそ、安心できる関係性をいくつも備えた心の居場所として、皆で意識して日頃から作っていくことが重要でしょう。

(4)心身のセルフケア-長時間労働

 長時間労働の問題点は、ⅰ.余裕・余暇などの私生活の時間が短くなるという点と、ⅱ.ストレスを解消するだけの睡眠時間が確保できなくなる、という2点があげられます。相当なストレスの蓄積が仮にあっても、一週間単位で解消する時間を持つことができ、また仲間の協力で仕事にやりがいを感じることができるようになれば、問題はずっと少なくなります。

 また、実際に長時間労働者の健康度が低いのは他の業種と同じですが、教師の仕事には、単純に労働時間だけでは測れない部分があります。自分の感情でもって相手を理解し、受け止めようと努め、保護者を含めてさまざまな感情に囲まれて働くという職務特性があります。このような感情労働の要素が強くなる問題が特に多くなると、今日の仕事はここまでという線引きが難しくなり、必ずしも時間が長くなくとも、その蜜濃度の濃さから、「燃え尽き」(燃え尽き症候群:一定の目的を持って誠心誠意がんばってきたが、期待した達成感や報酬がほとんど得られなかった結果、まず体が疲れ果てたと感じ、そうこうするうちに情緒的な問題に対してもわずらわしさが先にたち、何に対しても燃え尽きたように意欲が乏しくなり、虚脱感が極度に達する)に注意しなくてはなりません。

 特に、到達点(ゴール)が際限ないように思えるときがあります。どの業種でも、努力の結果としてのゴールは個人で線引きするしかない場面があります。営業成績や実験成功など、とりあえずの目標が目に見えやすい場合に比べて、私生活まで際限なく仕事のことに関わり、成果の実感という報酬がない状態が続けば、疲弊しイライラも隠せなくなってきます。それが児童生徒に影響すると、問題行動を起こす児童生徒が増える、という悪循環になりかねません。

 いずれにしろ、社会の変化、保護者・児童生徒の変化、教育体制の変化に完璧に答えようとしても、すべてを同時にこなすことは不可能ですから、焦らず一歩ずつ行くしかないと思えれば、燃え尽きてしまうことは避けられるのではないでしょうか。さらに、こういった状況で頭痛、動悸、下痢、吐き気などの身体症状が出たときは、身体疾患であるかもしれませんが、ストレス関連疾患も念頭において、早めに内科・精神科・心療内科・整形外科などの受診をし、どう対処すべきかを知るだけでも、不安という時間を無駄に過ごすことは避けられると思います。