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2 精神障害の基礎知識とその正しい理解

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(1)精神障害とは?

 精神障害とは、何らかの脳の器質的変化あるいは機能的障害が起こり、さまざまな精神症状、身体症状、行動の変化が見られる状態です。したがって、精神障害は風邪をひいて熱が出たり、アレルギーで湿疹が出るのと同じで、脳内で生物学的な変化が起こって、一連の症状が引き起こされているものですので、けっして特別視するものではありません。しかし、症状の出現に患者さん自身でも気づかないことがあったり、傍らから見た目では分かりにくいため、状態についての周囲の理解を得るのが難しいこともあります。

 職場でみられる精神障害の多くは、いわゆる「うつ」や「不安」です。症状は同じように見えても、その背景にある病気の状態はさまざまで、一括りにすることはできません。大切なことは、精神障害は「気持ちの持ちよう」といった精神論的な状態ではなく、「脳の病気」として生じている状態である、と理解することです。具体的な例として、うつ病について、その病態や症状を以下にまとめます。

(2)うつ病

ア うつ病とは?

 うつ病は、100人いれば2~3人はうつ病の症状がみられ、一生のうちでは7~8人に1人はうつ病にかかる、という統計があるほど頻度の高い病気で、「こころの風邪」とも言われています。うつ病の時には、神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の放出量が不足するなどして、情報伝達がうまく行われていないことが分かっています(図1)。

図1 神経細胞間の情報伝達のしくみ
図1 神経細胞間の情報伝達のしくみ
持田製薬株式会社「うつばんネット」より提供

イ うつ病の症状

 うつ病の症状は、気分の落ち込みや意欲の低下にとどまらず、脳の機能全体が落ちることによる集中力・記憶力・判断力の低下や、さまざまな身体症状として現われます(図2)。

図2 うつ病の症状
図2 うつ病の症状

 このような症状が2週間以上、毎日ずっと続く場合は、精神科・心療内科の専門医を受診することが望ましい状態です。また、これらの症状は、特に朝強くみられやすいため、周囲の人から見て分かりやすい例として、遅刻が増える、週明けの欠勤が多くなる、といった勤怠への影響が出ることがあります。また、朝は症状が強くても午後になると回復することも多いため、残業をして仕事をこなそうとする変化も生じます。

 本人も初期には自覚がなく、「何か調子がおかしいけれど身体の病気だろうか」、「自分がもっとしっかりがんばらないと」などと思っていることも多く、周囲の方が変化に先に気づく場合も少なくありません。

ウ 個人情報保護

 もし、周囲の方に精神障害がみられることが分かった場合、基本的に病名については、個人情報保護の観点から、むやみに周囲に広めることのないようにしてください。ただし、業務上配慮を要する場合や、ある程度状況を伝える必要がある場合は、その具体的な配慮事項や、配慮・休養を要する期間などについての情報は、必要な方に適切に伝えることで混乱が生じにくく、当事者にとっても安心して療養できる環境作りにつながります。