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領域1 キャリア形成・人材育成

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1 「職場の快適さ」と「キャリア形成・人材育成」の関係

(1)概説

企業における教育には、自社の業務を遂行する上で必要となる知識やスキル、マインド等を身につけさせ、中長期的に組織に貢献する個人を育成すること、並びに、企業の永続的な成長に向けて組織としての力を強化する目的がある。基本的に、個人の成長と組織の成長は相互に関連しており、成長している組織で働く人は、モチベーションが高く、人材としての成長が見られるケースが多い。この場合、自らの成長実感や効力感も強く、快適性も高いと思われる。

近年は、個人と組織の関係が、「相互依存」から「自立対等」へ変化しており、会社は従業員の雇用を保証しない代わりに、「エンプロイヤビリティ=雇われ続ける力≒自立する力」を身につけさせる努力を行い、従業員はキャリアの自立に向けて仕事を通じて成長できる組織を求める傾向が強くなっている。この点から言えば、キャリアの自立を支援する明確な育成方針、育成制度や施策の整備、その着実な運用などに基づいた「育てる風土」があることが、この領域における快適さに影響を与える要素と言えるだろう。

(2)検討における重要視点

ア 企業ビジョンや理念に基づく人材育成
人材育成に向けては、その組織において、求める人材がどのような要件を備えているべきかが明確になっていることが必要だが、その前提となるのは、そもそも会社がどのような姿を目指しているかというビジョンや理念である。求める人材像は、目指す会社像と別個のものではない。よって、まずは目指す会社の姿をクリアにし、その実現に向けての人材像の明確化が必要となるだろう。

イ 投資としての人材育成
教育はコストという発想を変え、リターンのある投資と位置づけ、売上や利益の一定額を予算化する対応が望まれる。育成として、即効的なスキル・知識教育もあれば、ある程度の時間をかけて、効果を得ることを前提とした教育もある。よって、短期と中長期の両方の視点に基づく教育体系を整備し、個々のキャリアパスを考慮した計画的な育成が行われることが望ましい。

ウ 個人が目指すキャリアに向けての主体的な選択
自立した人材を育てる観点からは、各個人のキャリアにおける主体的意思をできるだけ尊重する人事上の仕組みや制度があることが求められる。組織の意向・要請と個人の意思や希望は、必ずしも一致するものではないが、これをできるだけ、近づけるような人事対応を行えるかどうかが、働きがいや快適さに大きな影響を与えるものと思われる。

エ キャリアモデルの育成
組織におけるキャリア形成システムは、制度としては即製可能だが、実態面は中長期にわたる対応の積み重ねによって築かれていくものであり、すぐには確立できない。よって、まずは、自社のキャリア形成のモデルとなる人材を、少数でも意識的に作ることから始めるとよいだろう。仮に、キャリア形成が制度化されていない組織であっても、実例としてキャリアモデルとなるような存在を作り、実例を積み重ねていくことで、その組織におけるキャリアパスが「見える化」されることになる。モデルとなるキャリアパスが見えていることは、従業員がその組織で成長する可能性を感じられることに繋がるものと思われる。

オ 成果・貢献につながることを前提とした育成
企業における育成は、その組織が目指す成果をあげられる人材に育てることを第一の目的としている。個々の従業員にとっても、成果をあげることなしに成長実感を得ることは難しいだろう。やはり、組織における人材育成は、業務成果の産出や業績への貢献とのつながりを抜きにして、考えられるものではなく、あくまで、これを前提にして制度や施策などを構築すべきであろう。

2施策、対応策事例

経営トップが自ら講師となって企業理念や自社が大切にする価値、行動規範などの理解、浸透を図る研修を実施したり、役員や管理職がそれぞれにテーマを設定して、寺子屋的教育を実施する事例。

全従業員までは難しくとも、キャリアモデルとしたい幹部候補人材について、中長期の育成計画を作成し、それに基づく人事配置、人事ローテーション、仕事の割り振り、教育を実施し、育成する取り組み。

組織単位で、自組織にあった人材育成や研修を企画、推進するキャリアサポーターを設置。これを中心に各現場に即した手作りの教育を実施する事例。

同じ部署の上下関係ではなく、部署を越えたナナメの関係でのメンター制度やブラザー・シスター制度を実施し、新人を育成する事例。

社内で教育訓練体制を構築することが難しい状況において、社外での自己啓発やキャリア形成に向けた教育の受講を支援する資金援助制度を実施する事例。業務に有効な資格取得に対する褒賞制度を実施する事例も多い。

[出典元]平成22年度職場の心理的・制度的側面の改善方法に関する調査研究委員会報告書(厚生労働省・中央労働災害防止協会)