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[事例3-6]営業マンのうつ病等の事例

1 概 要

年齢・性別:57歳、男性
業種:卸売販売業
職種・職位:営業職、元課長
疾患名:うつ病
主訴:睡眠不足、リストラへの不安、テクノストレス、仕事の能率が上がらない
既往歴・家族歴・生活歴:特記すべきことなし

2 症状・勤務状況の経過

  会社は大手製造メーカー関連の地域販売会社で、バブル崩壊後の不景気の最中に生き残りをかけて、近隣県の兄弟会社と順次合併を繰り返し、最終的に関西圏を代表する販売会社となりました。この過程で、社内の組織変更とリストラが進行し、仕事のできない者は辞めさせられるという不安が社内に浸透していました。会社では組織改革と合わせて業務効率化の一環として文書の完全デジタル化を目指し、業務日報もE-mailで送るよう指示していました。

  本人は、当初は県下のとある地域を任されていた営業課長でしたが、合併を繰り返す間により大きな営業組織に編入され、課長から次席に降格させられました。元々極めて真面目な方で、始業後は前日に得意先から受けた仕事の見積もりやチェック表を会社でつくり、午前11時ごろから取引先に行って新たに仕事をもらってきます。忙しくて昼はパンやおにぎりを食べながら車を運転している毎日です。夕方に戻って日報を書くなどの仕事を片づけるようにしていましたが、午後6時頃から再び近くの得意先を午後8時頃までまわるという毎日でした。中年以降に触り始めたためか、パソコン作業の能率が上がらず、夜10時に帰宅して自宅のパソコンで仕事をしているとのことでした。平均睡眠時間は3~4時間で、それでも仕事が片づかなくて土日も出勤したり、レポートの作成のために徹夜することも少なくありませんでした。

  嘱託産業医の月1回の会社訪問の際に面談を希望され、「自分が会社には不可欠だと上司に思ってもらわないと、いつ飛ばされるか分からない」、「パソコン作業になじめず、ストレスが多い」、「 外に出ている時は気分良く仕事をしているが、会社に戻ると雑念が入って集中できず、3倍くらい時間がかかってしまう」、「睡眠不足になっている」など、涙ぐみながらに話していました。

3 対 処

(1)専門医への紹介
  リストラへの不安とテクノストレスから、結果として長時間労働を余儀なくされ、それに伴う「うつ病」の可能性があると考え、専門医の受診を勧めました。受診先でうつ病と診断され、抗うつ剤を処方されました。

(2)定期的なフォロー
  毎月の訪問時に定期的に面談しましたが、「医者からは仕事を休むように言われたが、 休んだら帰ってきたときにイスがない」、「子供もまだ独立していない」など、リストラへの不安から休養できない事情を話されました。「雑念が入って何から手を付けたらいいか分からない」との話もあり、「うつ病」の症状としての判断力の低下を疑いました。「よほど大事な仕事があるならそれを優先し、そうでなければ端から順番に片づけていったらどうか」と提案しました。 幸い、その後も会社を休むほどの深刻な状況にはなっていませんが、定期的なフォローが必須なケースでした。

4 職場の課題

  会社のトップは、「メンタルヘルスは重要な課題」と認識していました。しかし、総務・人事部では、「会社が合併とリストラを繰り返している状況ではメンタルヘルス不調が起こっても不思議ではない」と積極的な対策を打たずにいました。上司である課長も仕事優先で部下を見ており、多くの信号を発しているのになかなか気づきませんでした。リストラをしないと会社が存続できないという重い現実の前に、嘱託産業医としても有効なメンタルヘルス対策を提案できなかったのが悔やまれる事例でした。