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[事例3-7]教諭のうつ病の事例

1 概 要

年齢・性別:36歳、女性
職業(業種):地方公務員
職種・担当:小学校教諭、学級担任
主訴:学級経営がうまくいかない、食欲不振、不眠
既往歴:特になし

2 経 過

  4月から担任となった小学校5年生のクラスに、授業中に外に出て行ってしまう、注意するといっそう強く反抗するなどの子どもが4名いました。クラスの雰囲気が荒れたように思われ、マスコミ報道の「学級崩壊」の文字が頭から離れなくなりました。

  さらに、ある保護者から、わが子がその子たちからいじめられているという訴えがありました。誠意をもって対応したつもりなのに、一方的に責められ、担任として自分が信頼されていないと感じました。

  加えて、児童から集めた記念写真代の入った封筒が、机の引き出しから紛失するという出来事があり、自分があまりにも無責任で情けないとの思いでいっぱいになりました。担任を降りたいと思ったのは10年余りの教員生活で初めてでした。

  5月半ばからは食欲もなく、よく眠れなくなりました。ためらいながらもメンタルクリニックを受診したところ、すぐに休みをとるよう勧められ、6月半ばから自宅療養に入りました。9月からはクリニックの復職プログラムにも通い始め、3学期からの復帰の可能性も検討されましたが、結局、翌年度4月から、別の小学校へ異動しての復職となりました。当面は担任をはずれ、少人数制(特定科目で1つの学級を学力によって2班に分けて指導するシステム)の担当教員として復職を果たしました。

3 解 説

  本人のまじめな性格に業務上のストレスが重なって生じた、昔からよく知られたタイプのうつ病の事例で、特に教員に多いというものではありません。しかし、本人の休職・復職をとりまく環境には、教員ならではと言えるものが、この事例にも見られます。

(1)休業規定などの就業規則
  公立学校の教員であれば公務員の規定が適用されますので、一般的には休業期間や休業時の保障などが手厚く、じっくり腰をすえた療養ができます。復職の時期は原則いつでもよいのですが、学校では年度が重要な区切りとなっており、ことに他校への異動を伴う場合には、4月新年度の復職となる場合がほとんどです。

(2)職場における周囲からのサポート体制
  担任などの仕事は、業務柄、ほかの同僚や上司などが肩代わりしにくく、クラス運営の負荷は担当教員のみにかかりがちです。担任自らが早めに先輩などに相談できるとよいのですが、他校からの異動直後や、この事例のように既に新人でない場合は、自主的な相談が遅れがちです。学年主任などを中心に、ふだんからの声かけを含め、気軽に相談しやすい体制をつくることが大切です。
  ひとたび休業に至った場合、多くの自治体では代わりの教員が臨時雇用されるシステムがあり、担任業務も臨時教員が引き継ぐので、業務の穴を気にせずに療養できます。ただし、中途で臨時教員に受け渡した担任業務を、半年前後のブランクを経て、再び年度途中に復職者が引き継ぐのは、児童・生徒に与える影響も大きく、周囲のサポートを含めた慎重な対応が必要です。

(3)職場復帰後の業務負担軽減
  行事担当や会計などの校務分担は軽減可能ですが、担任になると、その業務の軽減は困難です。少人数制の担当、複数教員制 (複数教員が同じ教室で指導)の副担当など担任以外に配置できればよいのですが、小規模学校では人員の余裕がなく、担任をはずせない場合もあります。この事例も、そのような事情もあって、復職と同時の他校への異動となりました。

(4)職場復帰にあたって、現職場に戻るか他校に異動するか
  他の職業同様、できれば人間関係などのサポートネットワークが確立している現職場への復帰が望まれますが、この事例のように現校で適切な軽減業務配置が困難な場合のほか、同僚、さらに子どもの保護者との人間関係にトラブルが生じている場合にも、異動が勧められます。保護者との関係に特段の問題がない場合でも、異動せざるを得ないこともあります。一度メンタルヘルス不調で休業した担任教師は、保護者間で「ハズレ」という風評が広まり、現校勤務を続けにくくなる場合もあるのです。わが子の担任にまた長期間休まれたらかなわないという親の気持ちもわかります。他の職種にもまして、復職の成功と再発防止とが強く望まれているのが教員です。

(5)おわりに
  教員の復職成功や再発防止に特別な方策はありません。ふだんからの周囲のサポート、復帰後の負担軽減、さらには復帰前にこの事例のような復職プログラムの利用、学校の事情が許せば、いわゆる「試し出勤」の導入などが考えられます。いずれにせよ、本人や管理職が産業医・保健師などに気軽にご相談いただければと思います。