事業者・上司・同僚の方へ

支援する方へ

コンテンツ一覧

[事例4-2] うつ病罹患中の会社員が転職活動をする是非を検討する事例

1 概要

 IT企業で営業部門のプロジェクトリーダーに抜擢された35歳の男性。任された喜びもあり張り切っていたものの、幹部からの厳しい業績フォローに対応するため、かなり多忙でした。2年ほど前に結婚し、さらに頑張ります。しかし思ったほど業績が上がらず焦る日々を送っているうちに不眠が続き、そのうちうつ状態となりました。妻も心配し精神科を受診し、抗うつ剤を内服しながら勤務を続けていました。業績は相変わらずで、リーダーとしてうまく立ち振る舞えない、うつ病も改善していくように感じない、この仕事を続けていても良いことはないと考え、転職を考えるようになりました。具体的に転職活動を開始するにあたり、さまざまな情報を集めてみるが、自分が何をしたいのか良くわからない、また本当に転職してやっていけるのか、考えるほど不安になっていきました。まだ妻や主治医には相談しきれていません。

2 ポイント

 転職がその人の人生において大きな発展につながる分岐点となる場合も確かにあります。しかし、一般的にうつ病の状態が悪い時期には「人生の大決断をしない」ということも忘れてはいけません。「考えがまとまらない」、「どうしたらいいか考えが浮かばない」などという思考力や決断力が低下し、心理的な視野狭窄(しやきょうさく)が起きている状態で導く結論は、大きなリスクを含んでいることが多いからです。「大決断」を実行し、後悔し「何をやってもダメだ」という自責の念から、自殺のリスクが高まる場合もあります。

 転職の決断には、「今の会社の長所、短所」、「辞めないためにまだやれることはないか」、「なぜ辞めたいのだろうか」、「条件面はどうか」、「自分は何を求めているのか(自立性、創造性、安定性、職能的やりがい)」など、多方面から総合的に思考することが可能である必要があります。

 また、転職にはエネルギーが必要です。それは新入社員としてスタートした時にも似て、何かしら前向きのエネルギーというものが必要となります。新しい場、新しい仕事、新しい人間関係と環境が大きく変化し、その適応に要するエネルギーは相当なものです。

 そのためにも、転職などを考える際には、心理的視野狭窄により結論を出しているかもしれない自分の考えについて、主治医や家族にもきちんと相談し、意見によく耳を傾けることが大切です。