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[事例6-2] 配偶者の無理な要望による職場復帰を思いとどまらせた大うつ病の事例

1 本人の概要

対象者: 年齢57歳、男性、電気機械器具製造業、製造補助
診断名: うつ(大うつ病)
既往歴: 7年前に糖尿病性網膜症で左眼失明、
20年前に自殺未遂(服薬自殺未遂)歴、
3年前にアルコール性肝障害
家族: 妻(専業主婦)・長男(小学5年生)
症状: 不眠、出社困難、意欲低下、倦怠感、めまい

2 経過

 以前からアルコール依存症で、3年前に専門医院で治療歴がある方です。当該医院でアルコール性肝障害の診断の元、断酒治療は成功するものの、うつ状態がひどくなり精神科を紹介され、大うつ病の診断で休職1年を経過しています。半年前にリストカットで自傷する自殺未遂の既往がありましたが、現在10種類の向精神病薬で、何とか日常生活ができるまでに回復し、精神科主治医から復職可の診断書が人事経由で提出されました。

 ご本人と産業医が面談をしたところ、左眼失明の後遺障害や乗り物酔いの体質から、公共交通機関での通勤(片道90分)に非常に不安感を抱いておられました。また、製造補助業務に適応できるかについても不安だとのことでした。ご本人との面談後に職場上司と人事も交えて健康会議を開いたところ、自分は実はまだ職場復帰するまで回復しておらず、今回の面談のために会社に来ることがやっとの状態にて、来社だけでも心身とも非常に疲れてしまい、仕事のことなど考えられないというのが本音のようでした。不眠もひどく、早朝に起床ができておらず、午前中の倦怠感や昼間の活動もほとんどできていない状況でした。さらに問診すると、休職で給与が減っているので、子供のためにも復職して元の給与ベースに戻って欲しいと半ば強制的に奥様から復職の意向が出ており、主治医もこの意思を受けて復職可能との診断書を提出した旨の回答でした。

 自暴自棄になり自殺未遂を起こした半年前よりは家族(奥様)の理解は良くなったものの、抜本的には変わっておらず、自宅で休養する雰囲気ではないとのことでした。会社や産業医はご本人の職場復帰を妨げるものではないが、無理な職場復帰による再発でかえって自信を喪失し健康障害を助長するようであれば、その防止のために主治医と調整する用意があることを伝えました。主治医へは状況を説明するお手紙(情報提供)を本人から手渡してもらい、さらに日を変えて奥様に来社いただき、産業医と人事・職制から、本人と家族(奥様)にとっての最善策を模索すべく話し合いを持ちました。

 不安定極まりない復職であるとは、奥様も内心理解されていましたが、子供の将来を思い、無理に復職を勧めたそうです。職場復帰しても継続できないと、思うような給与アップにつながらないこと、お金のことより本人の心身の健康障害の防止が重要であること、休職を継続しても給与の85%は、あと2年間は保障されること、年齢が55歳以上にて、その後に仮に退職されたとしても、退職金は満額保障される制度に乗れることを人事担当者から説明し理解をいただき、主治医の再休職の診断も出て、無理な復職に向けての流れが阻止できました。産業医からは、もう少し様子をみて、症状安定と生活リズムが整い、乗り物に乗る練習が軌道に乗ることや自分にもう少し自信が出てくれば、再度復職に向けた調整を行いましょうと伝えました。リワーク支援を利用することも一助となるので、その詳細も紹介しました。以上のように家族(配偶者)は、本人の健康よりも金銭を優先する短絡思考に落ち入りやすいこともあるので、膝を交えて相談することも重要であると感じた事例です。