第13回 山本 晴義さん
横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長
メンタルヘルス・ポータルサイト委員会委員
ストレス社会と言われて久しい世の中です。幼稚園児ですらストレスという言葉を使っているのですから、ストレスと上手につきあうことができれば、この時代を生き抜くことが可能になると言っても過言ではありません。
横浜労災病院の勤労者メンタルヘルスセンター長として、多くのストレスを溜めた患者さんたちの話しを聞いている立場からアドバイスをするならば、ストレス対策の基本は、ストレスをゼロにしようと頑張らないことだと思います。ストレスは誰もが感じるものであり、ある程度のストレスを抱えることは自然なことでしょう。しかし、長く強く続くストレスは万病の元ですから気をつけなければなりません。そこで、その日のストレスをその日に解消する"ストレス一日決算主義"の生き方をお勧めします。
ストレスは溜めてしまうと弊害を招くため、溜めないことがポイントです。時には、仕事を先送りすることがあっても仕方がありませんが、ストレス解消は先送りしてはいけません。明日とか来週程度の先送りならまだ取り返しもつきますが、来年や定年後などと持ち越すのが先になってしまうと、究極的にはあの世に行ったらゆっくりしようなどということになりかねません。そして、この世の辛さを逃れるために,死にたくなってしまうことにつながりかねません。そうならないためにも、日頃からさまざまなストレス解消をみつけ、実行することが必要です。
さらに、普段からストレスを溜めないライフスタイルを築くことも大切です。ストレスを溜めないライフスタイルの基本は「睡眠、食事、仕事、運動、休養」の5要素を1日の中にバランスよく取り入れることです。我々のウイークデイの生活は、得てして仕事だけに偏りやすいのですが、1日15分でも運動をしたり、仲間と楽しい食事をするように心がけて生活の偏りを減らしていきましょう。
こうしたことに加えて、心の健康に関する情報や知識を身につけることもストレスと上手につきあう有益な方法です。そのためには、まさにこの"こころの耳"を活用してください。
たとえば、職場のメンタルヘルス対策は、一次予防(積極的な健康の保持増進の仕方やその知識)、二次予防(心の病の早期発見、早期対処)、三次予防(心の病の再発、再燃の防止)から成り立っていますが、その全てについて欲しい情報がカバ-できるのが"こころの耳"です。一次予防については、どなたにでもわかりやすいように、ストレス軽減ノウハウやうつ病についての知識が紹介されています。
二次予防については、悩みを抱えて誰かに相談したいなと思ったときに、気軽に相談できる専門機関や医療機関などが紹介されています。気軽な相談ツールとしては、電話相談やメール相談などがあげられますが、私が行っている横浜労災病院の「勤労者 心のメール相談」も紹介されています。このメール相談では、世界中の働く方から無料で相談を受け付けており、私が全て原則24時間以内に返信しています。すでに約4万件のメール相談に回答していますが,これも「1日決算主義」で対応しています。メールのやりとりで診断や治療をすることはできませんが、メールをくださった方の相談を聴き、医療機関へ橋渡しをすることを目指しています。自己判断をしたり、一人で悩むよりも、適切な治療を受けることが心の病の早期対処につながります。
さらに、三次予防としては職場復帰についての具体策などが紹介されています。これは一般の方よりも人事担当者や専門の方向きかもしれません。このように"こころの耳"はいずれの方の要望にも沿うサイトです。長い間、働く人のメンタルヘルスに関わり、約6千万人の労働者の皆さんが元気に働きがいを持って働いてほしいと願っている身としては、こうした内容の充実したサイトが多くの方の目に触れるようになったことを嬉しく思います。このサイトを利用して、1人でも多くの方が、今以上に人間らしく充実した一日決算の日々を送ってくださることを念じてやみません。