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第9回 教育研修の大切さとこれからのメンタルヘルス推進室

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セルフケア研修は組織を支える!

 ストレスチェックの実施時には、いろいろと課題もありましたが、それを通して従業員の間では多少なりとも自分や職場の「メンタルヘルス」について何が考えられているか少し垣間見る機会になったようです。そのような中で、不調者がいる部門の部門長から、「やはり、メンタルヘルスケア教育研修は全社員に受けておいてほしい」、という声を頂きました。「やはり」と言われたのです。これって、「今まで軽視してきてしまったけど今は必要だと言う結論に至った」という意味だと考えられませんか?そして、これはきっと本音だったのだと思います。管理監督者研修を受けた従業員は、ラインによるケアを意識して日々業務に従事しています。

 ですので、自分の部門内に不調者がでてきた時になどによく思うそうです。「この従業員はセルフケア研修を受けたことがあったのか?」と。また、ラインによるケアの意識が強くなった管理監督者たちからは、個々の従業員がきちんとセルフケアの知識を持てるような機会が必要である、との声が挙がるようになりました。今まで管理監督者の間では、「メンタルヘルス」といえば仕事の合間にテーマにすることさえ、はばかられてきたような話題です。

 それがいつしか「セルフケアくらい学んでおいてほしい」という認識に変化したのです。部門長クラスからもそのようなニーズが増え、このタイミングを逃さぬよう、さっそく上司に報告しました。そして、2か月以内に全員を対象者としてセルフケア研修をするように、との指示が経営者から出されたのです。

みんなでセルフケア

 「メンタルヘルス推進室」発足後、管理監督者対象のラインによるケアに関する研修については実施済、ということもあり今回は、現場のニーズから、セルフケア研修を実施することとなりました。研修を管理している人事部門と相談し、連携することで幅広い部門が集まる機会にあわせてセルフケア研修を実施する運びとなりました。

 ということで、さっそく準備ですがいつもと同様、「産業保健総合支援センター」のメンタルヘルス対策促進員に相談し、アドバイスをもらうことにしました。参考になるセルフケア研修の資料を見せてもらうなど、丁寧な指導を受けることができるので頼りになります。
そして実際の作りこみの段階では、インターネットでイメージ作りのための情報収集。「こころの耳」にセルフケアのeラーニング「e-ラーニングで学ぶ「15分でわかるセルフケア」」があるのをご存知ですか?ネタの宝庫でお勧めですよ。

 今回のセルフケア研修で、わたくし東ちはるは、こころの耳のeラーニングを参考にしながら、自社の状況と合わせて、以下のような内容で研修を構成しました。

  1. メンタルヘルスケアが必要とされる社会背景をデータなどでくわしく紹介する
  2. ストレスについて職業性ストレス簡易調査票を使って理解を深める
  3. メンタルヘルスの4つのケアを理解して各人の取り組みを考える
  4. 相談事例やデータを紹介してこころの健康問題が深刻化することのデメリットを知る
  5. 自分ができるメンタルヘルスケアの取り組みについて話し合う
  6. 相談機関を把握できるよう社内外の相談機関を紹介する

グループワークを通じて話し合い、アンケートも忘れずに

 時間が取れれば1日コースでじっくり考えて、話し合う体験をしていただける研修が良いのではないかと思うのですが、3時間や場合によってはお試し的に2時間だけなんてこともあるかもしれませんよね。少しでも受講者が互いにディスカッションできる機会としてグループワークの時間を確保しておくことがとても重要だと思いました。1時間しか実施時間がない研修もあり、私はその中ではグループワークを省いてしゃべり倒してしまったのです。幸いアンケートを常々用意していたので、そこにビシッと一言「講師からだけではなくて、他の従業員とディスカッションすることを期待していた」。ゴメンナサイ〜〜!!といっても後の祭りで、反省をさせていただくとても良い経験となりました。

 メンタルヘルスのテーマとなると、研修の枠としては外部講師であれば予算が取りにくい、などの問題はあると思います。また、どうしても予算だけではなくて時間面も削減される傾向にあると思います。ですが、「メンタルヘルス」や「互いのセルフケア」に関する考えを自由に話せる場というのが、研修でもあるという側面を私のように失念されないことを祈っております。資料は配布できるものですし、あとは研修でディスカッションしたように日常の中にそのような場面が増えてくることが何よりのねらいでもあり効果ではないでしょうか。

終わりに

 何かすれば別の何かにぶつかる。そのようなことの繰り返しで、メンタルヘルス推進室の奮闘は今後も続くことでしょう。興味をもってアクセスして頂いた皆様には、この場をお借りして感謝申し上げます。

 こちらにアクセスされた方は、色々な問題意識をもって来られた方が多いのではないでしょうか。色々な方々のご支援のおかげで、東ちはるは、取り組みを続けていく中で少しずつ従業員の変化を発見することができています。また、担当者としての自分が失敗をしていることに気づかされたり、やってほしいと思われていることができていなかったり、考えつかなかったことが必要とされていたり日々学ぶことばかりです。

 昨今は、日本だけではなく世界中が厳しい環境下にあり、個人にふりかかってくるストレッサーはそこらじゅうに溢れていると思います。日本の自殺者数は未だ3万人を超え続けている中、企業の中の担当者の役割はこれまで以上に重要なのだと感じています。取り組みの成果が見えにくい分野ではありますが、誰もが取り組む必要があるテーマでもあり、その取り組みをサポートできるように今後も奮闘して参ります。皆さんも一緒にメンタルヘルスの取り組みを続けていきましょう。

終わり。

東 ちはる(あずま ちはる)
産業カウンセラー・心理相談員
新たに設置した「メンタルヘルス推進室」の担当者となり、「事業場内メンタルヘルス推進担当者」として活動することに。
社内のメンタルヘルス対策の実現に向けて、そこには孤軍奮闘の日々が待っていました。
何も分からない手さぐりの状態から、『出来ることから一つずつ』をモットーに現在進行形で取り組んでいきます。※創作ストーリーのため、架空の人物です。

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