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第2回:株式会社構造計画研究所(東京都中野区)

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株式会社構造計画研究所
(東京都中野区)

 株式会社構造計画研究所は1959年に設立され、工学的な知識を基盤としたコンサルティングやシステムソリューションを提供している。システム開発、構造設計、専門コンサルティング等の技術者が多い。
 社員数は、576名(2016年現在)。本社は東京都中野区で約450名、次に大きな研究所が熊本県菊池郡に約60名。その他、国内は大阪、名古屋、福岡に支社、上海、シンガポールに事務所がある。メンタルヘルス担当者は、本社が2名、熊本が1名となっている。
 職場のメンタルヘルス対策全般、および職場復帰支援の取り組みに関しては、2013年11月掲載の「職場復帰支援の取り組み事例(第10回)」を参照願いたい。
 今回は、その後、義務化された労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度への取り組みについて、前回もお話を伺った本所地区でメンタルヘルス担当をしている、人事総務部人事総務室室長の酒向雄介さん、総務チームリーダーの小島有香子さんお二人にお話を伺った。

制度内容と共に会社としてのメンタルヘルス対策への取組を経営者から事前に説明する

ストレスチェック制度取り組みにあたっての準備と実施の流れ、状況についてお二人からお話を伺った。

「ストレスチェックに関して、義務化以前は契約している外部EAP機関のサービスを社員に提供していました。提供の形態はサイトの紹介程度で月の利用人数は5名程度でした。法令に則り会社主導で実施したのは、今年度(2016年度)が初めてです。」

「制度がまだ検討段階から様々な手段で情報収集をし、2015年10月頃から本格的に準備を始めました。開始にあたり、契約しているメンタルヘルスに造詣が深い社会保険労務士、外部EAP機関からアドバイスを受け法令に則った実施計画を策定しました。計画にあたっては“ストレスチェックプロジェクト”として、社内プロジェクトを立ち上げ、プロジェクト管理ソフトや当社独自の“実行計画書システム”等のツールを利用しながら、プロジェクトメンバーでディスカッションを重ね、実施の目的意識を明確にし、計画にあたりました。」

「11月の安全衛生委員会で実施計画を説明し、課題やリスクについて審議しました。初めての法令化によるストレスチェック実施のため、未知のリスクも存在することから、現任の産業医に加え、実施者として経験豊富な“メンタルヘルス担当の産業医”を新たに選任しました。実施事務従事者は、私たち人事総務部の中から5名選任しました。」

「ストレスチェックのシステムは、何社か検討した結果、現在契約している外部EAP機関のシステムを利用することにしました。検討段階において、高ストレス者の産業医面接の希望者は10%と予想していました。そこで3つの仮説を立てました。『①産業医面接は希望しない者が多い』、『②高ストレス者と診断されなくても、悩みやストレスを抱えている可能性がある者もいる』、『③ストレス状況は日々変わる、継続的な支援が必要』。以上より産業医面接を希望しない社員をいかに支援するかに着目しました。」

「継続的に社員を支援するためには、普段自分には縁がないと思って、外部EAP機関の存在を忘れている社員に、知ってもらい、困ったときにいつでも利用し、最適なパフォーマンスを維持してもらうために、様々な連携が可能な契約している外部EAP機関のシステムを利用することにしました。“衛生管理規程”の改定も行い、12月の安全衛生委員会にて承認を受け、担当役員へ説明、役員会で承認を受けました。」

「続いて受検率の目標を立てました。受検率を上げるためには、安心して受検してもらえるよう“ストレスチェック制度の理解”が必要となります。さらに年に1度のストレスチェックは社員にとって職場のメンタルヘルスについて考えるよい機会となります。意義を理解した上で受検しなければ一過性のもので終わってしまいます。『①ストレスチェックはメンタルヘルス不調者のあぶり出しではないこと』、『②メンタルヘルス不調の未然防止には“職場の環境改善”と“社員自身のストレスマネージメント能力の向上”が必要ということ』。この2点を押さえて、受検率アップと共に正しい知識を学び、受検後も職場で役立ててもらえるように、管理職向けと受検対象者(社員の他、アルバイト、海外勤務者などを含む)向けに2種類の研修を企画しました。」

「2016年1月に、まず管理監督者向けに“ストレスチェック導入について”説明会を実施しました。前半は、人事総務部門の担当役員であり安全衛生院長でもある安藤執行役員から、“メンタルヘルスマネジメントセミナー ラインケアとしての管理職の役割”と題し、“事業者による方針表明”と合わせ、『マネージャーとして対応が求められている』ことと『その方法について正しく理解し、良い組織づくりを促進して欲しい』とのメッセージを伝えました。後半は、当社が契約している社会保労務士から、法律面から“管理職として知っておきたいメンタルヘルスマネジメント講座”と題し、“ストレスチェック制度の概要”、“ハラスメントとその対応”、“管理者のセルフケア”に関する研修を行いました。これまで、ラインケア研修は、階級昇進時など不定期での実施だったのですが、ストレスチェック制度の開始をきっかけに、教育研修部門と連携し、管理監督者全体に対して実施することができました。参加者からも積極的に質問が出るなど好評でした。この研修を通じ、部下へのストレスチェック受検勧奨への協力要請をしています。」

「受検にあたっては、社員にも事前に制度のことを理解してもらうことが必要です。そのため、2月からは、受検対象者向けに、ストレスチェック制度の説明会を行いました。同様に執行役員の安藤から“ストレスチェック制度の概要と実施体制”について、健康管理やメンタルヘルスに対する取り組みを紹介し、『法令だからストレスチェックを実施します』という話だけではなく、『社員が働きやすい職場を作っていきたい』という思いを込めて、ストレスチェックを実施する意味を説きました。」

「そのあとは、委託先の外部EAP機関のカウンセラーより“ストレスチェックの活用”と称し、ストレスチェックのみならず、メンタルヘルスケアについて研修をしていただきました。日常、困ったときの相談窓口として外部EAP機関があり、会社側に知られることはないことをまず伝えました。メンタルヘルスに関する相談に限らず、キャリアやマネジメントの相談もできることを説明しました。外部EAP機関のカウンセラーから、直接社員と接してもらう機会をつくることで、受検対象者が安心してストレスチェックを受検できる環境を構築しました。」

「さらに、新しいメンタルヘルス担当の産業医からも、ストレスチェック制度の概要と産業医としての関わり方を5分くらいで簡潔にわかりやすく説明しました。実際に面接することになるので、事前に相談窓口の顔を知ってもらう意味でも良かったです。研修を通じ、当社の社員の健康を支えるメンタルヘルス体制のキーパーソンである“メンタルヘルス担当の産業医”、“外部EAP機関のカウンセラー”、“安全衛生委員会の委員長”、“総務担当者”が、社員と直接対面したことで、相談窓口の選択肢は多くあることを伝えることができたと思います。個人的な悩みを知らない相手に相談するよりは、実際に顔を見て、声を聞いた相手の方が安心して相談できると考え、そのようにしました。」

「説明会を終え、3月にストレスチェックを実施しました。3月は当社にとって繁忙期ですしかし、あえて実施しました。忙しい時期だからこそ“ストレス負荷がかかるその時の状態”を社員が自覚し、ケアしてもらいたいという思いがあるからです。繁忙期にはミスをしがちです。疲れにより、パフォーマンスが低下しさらにミスが増えてきます。ミスが増えれば余計に負担がかかるという状態になってしまうからです。繁忙期での実施を理解してもらうのは大変でしたが、説明会で5~10分位という短時間で実施できる簡単なチェックだということや、実施可能期間も2週間取りましたので、多くの方に受けてもらうことができました。受検対象者の受検率は約92%でした。」

「4月には個人結果がまとまりました。全対象者において高ストレス者の割合は約10%でした。高ストレス者の中で、さらに法に基づく医師による面接指導を申し込んだ方は、約10%でした。受けた方には法定制度に沿って対応いたしました。」

「医師による面接指導を実際に受ける方は、事前の想定では1人か2人くらいと思っていたので、今回、面接希望者が多くて意外でした。事前の説明会で、メンタルヘルス担当の産業医が、直接話をしたことによる安心感があったのではないかと思います。実際、面接指導を受けた方に先生の印象を聴くと、話をよく聴いてくれて、助言も的確でとても良かったと言っていました。面接希望者それぞれに合わせ、アプローチを変え、対応していただいたようです。メンタルヘルス担当の産業医から報告書を提出していただき、改善が必要な方に対して、配慮の必要性を指摘された事項は、会社側で対応しました。」

ストレスチェック指針に基づき、“衛生委員会等において調査審議すべき事項”の11項目を検討し、実施計画を策定。その後、執行役員からの方針表明を受けて、メンタルヘルス担当の産業医や、外部EAP機関のカウンセラーから制度のポイントを管理監督者や社員に丁寧に伝えることで、社員も安心して受検することにつながる。

集団分析結果をもとに管理監督者に対するケアを兼ねて経営者が面談する

ストレスチェック実施後の集団分析結果についてお二人からお話を伺った。

「5月、6月にかけては、集団分析結果を検討しました。まず、人事総務部と人事企画部にて合同の検討会を開催しました。検討内容は“高ストレス組織に対するフォロー実施方法を考える”と“ベストプラクティス組織から学ぶ方法を考える”です。検討会は2回開催し、その後、取締役会で報告しました。」

「“仕事のストレス判定図”において、健康リスク値が120を超える部門は無く、標準から大きく離れている部門もありませんでした。部門ごとに比べると、上司や同僚からの支援が低く、コミュニケーションが不足している部門はいくつか見受けられました。それらの部門に対しては、執行役員の安藤が管理監督者と面談するという対策をとることにしました。指導という観点からではなく、管理監督者もマネジメントに困っているはず。だから、管理監督者と共に改善策を考える。ラインに対するケアですね。」

「また、当社はデータ分析を得意としているので、さらに分析をしてみると、“3ヶ月間の労働時間の長さ”と“高ストレス者の比率”との間に比較的強い相関がありました。月の時間外労働時間が45時間まではあまり高ストレス者の相関は無いのですが、45時間を超えて働いていると、多くが高ストレス者に該当していました。当社では、メンタルヘルスの問題と労働時間はあまり関係ないと考える者が多く『元気なのに、なぜ長く働いてはダメなの?』という雰囲気がありましたが、今回、長く働くと高ストレスであることを表すデータを示せたことは画期的でした。」

「長時間労働者に対する医師による面接指導は、これまでも人事総務部より対象者に対して呼びかけはしているのですが、実際の面接指導に対してはなかなか来てもらえていないという現状があります。しかし、今後は、メンタルヘルス担当の産業医を加えたので、 積極的に声掛けをしていこうと考えています。」

「集団分析結果後の職場環境改善活動に関しては、既存のストレスチェックの項目だけでは、ネガティブな部分に着目しがちだと思っています。働き方に関して、職場の活性化、ワークエンゲージメント、はたらきがい・やりがいといったポジティブメンタルヘルスの視点からの評価も行いたいと考えています。その上で、うまくいっている・活性化している職場を分析するという枠組みの中で、集団分析、および職場環境改善活動ができればと思います。そういう意味で、今回の結果に満足するのではなく、今後定点分析も行っていきたいと思います。」

結果の取り扱いについては、集団分析結果にも留意する必要がある。分析結果をもとに管理監督者に対するケアを兼ねて経営者が面談することで、状況を把握でき、会社側として必要な対処を行うことができる。職場環境改善活動に関して、うまくいっている職場を分析する姿勢も大切である。

【ポイント】

  • ①事前にストレスチェック制度の内容と共に会社としてのメンタルヘルス対策への取り組みや思いを経営者が説明する。
  • ②事前に説明会などで面接指導を行う医師(産業医)から自己紹介し、役割を周知しておくと、社員が安心して受検できる。
  • ③集団分析結果の取扱い方法は、結果によって特定の部門だけが追及されないように、慎重な対応を検討する必要がある。

【実施日程】

  • 2016年10月:“衛生委員会等において調査審議すべき事項”の11項目を中心に実施内容、日程、安全衛生委員会での説明資料を作成
  • 11月~12月:安全衛生委員会で説明、審議、承認
  • 2017年1月:事業者による方針表明、全管理監督者向けに説明会を実施
  • 2月:全社員向けに説明会を実施
  • 3月:ストレスチェックを実施
  • 4月:高ストレス者への医師による面接指導を実施
  • 5月~6月:集団分析結果の検討、取締役会での報告、高ストレス職場へのフォローアップ
  • 6月:フィードバック会議、労働基準監督署へ報告書提出