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第1回:ロート製薬株式会社(大阪府大阪市)

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ロート製薬株式会社
(大阪府大阪市)

 ロート製薬株式会社は、1899年創業。胃腸薬、目薬、外皮用薬などのスキンケア関連品の製薬メーカーであり、2000年以降はビューティー関連商品など幅広い商品開発も行っている。
 従業員数は約1500名。連結対象のグループ全体を含めると約6600名である。本社、支社、工場などの大きな拠点は、東京・大阪・京都・三重に5か所ある。札幌から福岡まで5つの営業支店と関係会社もいくつかあります。
 今回は、人事総務部健康経営推進グループリーダーの坂手秀章さん、健康管理室看護師の大倉早智さんにお話を伺った。

定期健康診断結果を基に、健康管理室による全員面談を毎年行う

最初に、全員面談や研修など、職場のメンタルヘルス対策の取り組み全体について、お二人からお話を伺った。

坂手さん
「健康管理室の主な活動に、“全員面談”があります。定期健康診断の結果を基に、健康管理室の産業医や看護職が直接会って、全社員と個別に約30分間、健康面談をしています。特定保健指導の対象者や肥満の方、メンタルヘルス面で悩みがある方といったように杓子定規で対象者を選別するのではなく、全員と面談しています。」

大倉さん
「最初は私も社員も慣れない状況でした。まずは、面談を通じて相談窓口である私自身を知って頂き、話を聴かせて頂いて、『健康管理室に来たらこういう感じで話をしていいんだ』と感じていただけるよう、信頼関係を作るところから始めました。また、全国の各拠点にも直接行って話をする機会をつくり、全員面談を徹底して行いました。」

「全員面談はその場の面談1回で終わることがほとんどです。面談の最後には必ず、『今回はこれで終わりですが、何かあったらいつでも相談に来てください』と伝えています。そのためか、中には自ら相談をしに健康管理室のドアを叩いてくれる社員もいます。また、健康診断結果からさらに事後フォローが必要な場合や、面談内容から気になる場合は、もう一度、時間をあけて、その後の状況を確認することもあります。毎年毎年、私と面談することで、社員も話をすることに慣れてきたようで、話す内容が少しずつ深く広くなり、私からもうまく関わりが持てて支援できるようになったと実感しています。全員面談を、毎年実施することで、社員一人一人との距離感や結びつきがしっかり持てるようになったと感じます。」

「当社では各拠点で毎週朝礼を行っています。朝礼にて定期的に、健康管理室から相談の意義と活用方法などを周知しています。大阪と三重に、それぞれ常勤の看護職が1名ずつ、東京には非常勤の看護職が1名います。当社と同じ企業規模の他社と比べると、産業医や看護職の人数は少ないかもしれません。ただ、その中で工夫しながら全員面談を実施しています。」

坂手さん
「私自身も相談利用しており、健康管理室はポジティブな場所という感覚で、積極的に傾聴してくれている感じがしています。また、人事総務部門とは独立していますので守秘義務が遵守されているので安心してなんでも聴いてもらっています。」

大倉さん
「メンタルヘルス研修は、私たち看護職による勉強会のような形式と、産業医による講演形式を行っています。また、産業医からの提言もあり、人事総務部門にはたらきかけて、ラインによるケアの一環として、マネジメント研修を行っています。特に工場の勤務者は、かなり若くして管理職になることもあり、過酷な状況の中、ラインによるケアの内容を知らない方も多くいました。実際に研修で、部下の心のケアや積極的傾聴について学んだ管理職は、日頃の業務の中でかなり迷っていた部分が、だいぶクリアになったとのことでした。まず、三重県の工場から始めたのですが、今後は全社展開していこうと考えています。」

坂手さん
「健康管理室と人事総務部門とは、半年に一度、全国の拠点から一堂に会し合同会議を行っています。また何かあれば直接話し、その都度、確認し合い連携しています。合同会議では、半日かけて健康管理室の考え方や提案をしたり、人事総務部門が進める今後の健康施策を説明したりするなど、意見交換しています。」

定期健康診断結果を基に、健康管理室による全員面談を毎年行うことで、社員との間で定期的に相談する仕組みができている。また、全国の拠点の健康管理室と人事総務部門が合同会議を行うことで、互いに連携して健康施策に対してそれぞれの役割を認識し、取り組むことができる。

ストレスチェック実施前に丁寧に説明することで、安心して受検することができる

次に、ストレスチェック制度取り組みにあたっての準備と実施の流れ、状況について坂手さんからお話を伺った。

「産業医からの提言もあり、ストレスチェック制度が法制化される前から、少しずつ準備は進めておりました。法制化される前に過去に二度、“組織ストレス診断”といった職場の活力度を測る調査を、当社の経営企画部門が中心となって、実施した経緯もあり、社員にとっては、自分のストレス状況や職場の雰囲気に関してアンケートに答えることは違和感無かったと思います。法に基づくストレスチェック制度とは異なり、個人へのフィードバックよりも職場や組織単位でのマネジメントの状況報告として活用していました。」

「本格的な準備を始めたのは、ストレスチェック指針公示後の2015年6月からです。健康管理室と人事総務部門とで合同会議を開き、全体としての進め方、安全衛生委員会の実施スケジュールなどアウトラインをまず決めました。」

「その上で、指針に示されている“衛生委員会等で調査審議すべきストレスチェック実施に関する11項目”や、タイムスケジュールをピックアップし一覧表にまとめました。この一覧表をさらに拠点ごとに落とし込んだシートを作成しました。各拠点シートで、進んでいないものは検討事項として色分けし、産業医の意見を聴いた上で決定するなど、1つ1つ実行していきました。かなり細かい作業でしたが、12月まで約半年間かかりました。翌年の1月から4月にかけて産業医からの最終合意、安全衛生委員会での最終審議、各職場での実施前説明等を行いました。」

「4月の安全衛生委員会での説明後、各拠点で全社員に、人事総務部門の実施事務従事者が事前説明を行いました。ストレスチェック指針に沿って、背景や調査票について、一次予防が目的であることなどを丁寧に説明しました。社員の不安を払いながら、『受検は義務ではないけれども、ご自身のチェックと、より良い職場環境作りのために前向きに受けてほしい』と説明しました。個人情報保護の観点から、誰が関与し個人結果を確認できるかを実施体制としてしっかり“見える化”することで、安心して受検できることを担保した上で、ストレスチェックに臨んでもらいました。」

「大きな拠点は、月1回実施している社員の“誕生会”や、朝礼時に15分ほどとって説明した上で、『今日は終日こちらにいますので、質問があればいつでも相談に来てください』という形をとり、ストレスチェック制度に関する疑問や不安に対応をいたしました。また、詳細な内容や流れ、最新情報に関しては、当社のイントラネット上や工場内にポスターで掲示しているので、そちらで確認するように伝えました。」

「小さな営業所などは、私(坂手さん)が直接行って説明しました。20名前後と少ないので、昼休憩後など1時間ほど時間をとってもらい、できるだけ全員参加の上で、意見交換会と合わせて行いました。ストレスチェック制度の説明と合わせて、普段感じていることを話す機会を設けました。『自分は健康だと思いますか?』と、健康に関心を持ってもらう質問から話を始めました。『健康です』と言う方が多いのですが、よくよく話を進めていくと、『最近寝つきが悪い』や、『コンビニエンスストアでジャンクフードばかり買って食べてしまう』と話すので、『何で食べてしまうのだろうね』と問いかけながら、話を進めていきました。皆さん、自分のストレスのことなどもざっくばらんに話され、説明会は盛り上がりました。会を行った小さな営業所の方が受検率は高かったです。私にとっては、この説明会の機会は各拠点の現状を知ることができ、非常に貴重でした。」

「ストレスチェックのシステムは当社の子会社が開発したものを使用しました。基本的にはイントラネット上のWEB形式での受検ですが、工場など社員ごとにパソコンを配置していない場合は、紙形式で受検してもらい、健康管理室の前にポストを設置して、そこに入れてもらうようにしました。」

「実施は、4~5月にかけて約1ヶ月間行いました。小さな営業所などは、直接説明をしたその日に可能な限り受検してもらうようリクエストしました。全社員の受検率は91.6%でしたので、高い方だと思います。年齢の高い管理職や、店舗の美容部員や物流関連など外勤者は、受検率が低かったです。管理職に関しては、事前説明の際に、職場環境に関する話もしたので、自分自身がストレスの原因だと思われることを避けるために、自分では受けなかったのではないかと推測しています。また、外勤者は、直接説明会に参加できなかった者も多く、やはりストレスチェック制度のことを周知しきれなかった部分があるのではないかと分析しています。次年度は、管理監督者も含め、全社員に対し、自分自身のストレスをチェックするための制度でもあるということをもう少し丁寧に説明したいと思います。」

「高ストレス者の判定基準は、産業医のアドバイスに基づき、厚生労働省のマニュアルで示されている“素点換算表評価方式”の判定基準で行いました。高ストレス者に対しては、結果を丁寧に伝えると共に、産業医の意見をもとに作成した面接勧奨文でも、医師による面接指導実施の意義と内容を記述しました。また、医師による面接指導に関しては、法令に基づき、結果は会社へ報告する義務があることを、勧奨文に明記すると共に、本人から申し込みがあった後も、念を入れて意思確認をしました。」

「当社には、先述した全員面談の仕組みがありますので、法に基づく医師による面接指導を希望しない社員には、産業医と看護職による既存の全員面談時に心身の状態を確認することにしました。当社では例年4月に健康診断を行い、6月から全員面談を実施していますので、高ストレス者に対しては、できるだけ早めに面談するようにしました。」

「全社員において、高ストレス者の割合は約12%でした。高ストレス者の中で、さらに法に基づく医師による面接指導を申し込んだ方は、最初約2割でした。その後、医師による面接指導の説明を詳細に行うと、『やはり受けない』という方もいて、最終的に医師による面接指導を実際に受けた方は、高ストレス者のうち約11%でした。受けた方には法定制度に沿って対応いたしました。」

「今回のストレスチェック制度は、当社が従来行ってきたメンタルヘルス対策と融合することで、うまく実施できたと実感しています。健康管理室として、これまで全員面談や日頃の相談対応を通じて、すでに健康面で指導を行っている方や、メンタルヘルス面でフォローしている方、過去にフォローを受けた方などは把握しています。一方で、今回高ストレス者として判定されたことで、健康管理室では把握しきれなかった方々を知ることにもなりました。早期発見や問題が起こる前の事前アプローチができるツールの1つとして機能していると、私たちは結論づけています。」

最後に、集団分析と職場環境改善活動について、坂手さんからお話を伺った。

「当社では集団分析も実施しています。ただ、分析結果の活用についてはその後の職場環境改善活動と合わせて、初年度はまだ様子を見るといった状況です。産業医の方々ともいろいろと検討していますが、部門を見る場合、当社は部署異動や組織変更が多いので、2年3年と経過変化を見ていかないと、そこの職場の人に起因するものなのか、仕事内容に起因することなのかが分からないといったことがあります。これまでのノウハウが乏しいため、例えば、集団分析結果が、ただの悪者探しと勘違いされないかという不安もあり、慎重に行っております。結果のフィードバックは各職場で検討することまでは行っていません。経営層への全体会議時に報告しています。経営層への報告の際も、部署や個人が特定されないように情報を加工しています。実際の取り組みは、人事総務部としての方向性や対応策をしっかりと“見える化”する仕組みが整ってからでないと難しいと思っています。よって、この3年間は、健康管理室による個人へのケアを中心に網羅していこうと考えています。」

「経営層へは、実施後すぐの7月に、集団分析結果の簡易版を報告いたしました。その後10月に詳細版の報告をいたしました。ストレスチェック制度は、法定制度に基づき粛々と実施するものであるため、毎回新しい事実や新しい予防措置が見つかるようなものではないことを、まず伝えました。その上で、実施によって一定の価値はあったので、これをきっかけに改めて既存のメンタルヘルス対策にエネルギーを割くべきだと説明しました。説明後、経営層からは、今後、体系的に行う仕組みや職場環境分析の充実も図っていき、ここに費用をかけて、エネルギーを割いていくために、この3年間に何を行うか早急に提案してほしいと言われました。当社の会長はメンタルヘルス対策に関して、以前から興味関心を持っており、私も日頃から話す機会が多いです。ただ、他の経営幹部からこのような提案をされたことは初めてでしたので、とても新鮮でした。この意見により、有給取得率や、残業の状況、働き方全般などについていろいろな話題に広がりました。社員の健康管理に関してどうしていくか、いろいろなアイデアを経営層と直接意見交換ができたことは、私にとっても貴重な経験でした。」

「集団分析結果が一人歩きしてしまうと、『だって、あの人がいる部署でしょ』という、うがった見方でその方にレッテルを貼るだけになってしまう可能性があります。その方を異動させるしかないと結論づけて、原因追及が終わったと思ってしまいかねません。それでは、結果的にその職場の仕組みづくりや、会社として実施すべき予防体制にはつながっていませんし、何もプラスにはなりません。集団分析結果を基に、会社の現状を捉え、組織力や人材マネジメントの力にしていかないと意味がないです。2年目3年目は、職場環境や職場の雰囲気についても去年と比べてどう変化したかを意識してもらうことも必要と考えています。」

「職場環境改善活動自体は、ストレスチェック制度を実施する前から行っています。ここグランフロント大阪オフィス大きな1フロアを約200名の社員が広々と使っています。オープンな場所づくりやカフェテリアスペースの設置といった仕組みです。会議室は、多少個室もありますが、基本的には壁が無く、オープンな会議室スペースで話をしています。上長の席にもふらっと話に行ける感じにしており、当社の会長もよくカフェテリア席で見かけます。オフィス環境作りから、オープンな企業風土を作ることは、広義でのメンタルヘルス対策であり欠かせない要素だと思い、かなりこだわってます。」

「また、“カジュアルフライデー”として、毎週金曜は私服可としています。ですので、本日はスーツではないです。また、夏場3か月間のクールビス期間も“カジュアルサマータイム”とし、私服可であると共に、朝を早めてワークシフトを変えるなどの働き方改革も行っています。」

「企業風土の醸成という点では、社員間では皆、肩書きではなく、“さん”付けで呼ぶこととしています。当社の会長は山田ですが、下の名前で“邦雄さん”と皆、呼んでいます。また、呼びかけしやすいように、各自ネームプレートに、“ロートネーム”を表示しています。私(坂手さん)の場合、“さか“と名付けていますので、周囲から“さかくん、さかさん”と呼ばれています。」

「その他、当社では全社参加のイベントやウォーキングイベント、食事のイベントなどを多く行っています。健康を目的にするというよりもイベントに参加することや楽しむことを目的にするといった切り口で社員に関心を持ってもらうことが、解決の第一歩だと思います。行動を起こすことで、自分自身で何か変化を実感し、それが継続力を後押し、健康へ近づき、いい仕事を生み出すというスパイラルアップ(正の連鎖)につながるという思いでいます。」

「従来からこうした施策により、働きやすい職場づくりを心がけてきましたが、今後は、ストレスチェックの結果を活用した職場環境改善につなげたいと考えています。」

ストレスチェック指針に基づき、安全衛生委員会で審議したり、産業医の意見を聴いたりした上で、内部規程を策定した。その内容を、実施前に、全社員に対して丁寧に説明し、質疑応答や意見交換会をすることで、社員は安心して受検することができると思われる。また、職場環境改善活動は、会社側がイベントやオープンスペースづくりなどの様々な仕掛けをいくつも織り交ぜることで、社員の間にも広がっていくものと思われる。

【ポイント】

  • ①定期健康診断結果を基に、健康管理室による全員面談を毎年行うことで、相談対応を習慣化することができる。
  • ②ストレスチェック制度の内容を、実施前に、全社員に対して丁寧に説明することで、社員は安心して受検することができ、結果として高い受検率となる。
  • ③職場環境改善活動は、経営幹部がその必要性を理解することが重要であり、会社側が設備、食やリラクセーションの環境づくり、イベントなど様々な仕掛けを織り交ぜることで、効果が期待できる。