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[事例1-22] 販売会社でクレーム処理の多い職場でのメンタルヘルス不調の事例

 症例:女性・27歳

 企業は消費者とのコミュニケーション、あるい「企業の顔や窓口」として広報部のほかに、クレーム処理部門を設けています。大切な仕事である。なぜならクレーム処理から、製品の欠陥がわかり、商品の改善や次なる商品企画に役立つのです。あるいは、速やかな対応により、欠陥商品が広まっていくのを防げるからです。これを怠り社会問題となり、企業イメージの大幅なダウンや経営責任までに発展したケースが、新聞に大きく掲載されたことが思い出されると思います。企業におけるリスク・マネジメントの最前線とも言えます。しかし理解不足の企業があり、苦情処理をおざなりに行う会社では担当者のストレスは大きいのです。また担当者にとっては電話が多く、かつ消費者の顔・表情が見えないから、対応が難しい面が多いのです。それによるストレスが大きいことへの理解がポイントになります。

概要

 専門学校卒業後、現在の中堅販売会社に就職しました。生活史では、旅行やクラブ活動などに積極的に動くタイプでなく、受け身の生活が多かったのです。独身で両親と同居し、妹は昨年、結婚しました。性格は几帳面で責任感の強いタイプ。趣味はロックバンド演奏をライブで聞くことです。総務部総務課勤務を経て、2年前から現在の「お客様サービス部・A製品担当課」に配置転換となりました。サービス部と言っても内容のほとんどは製品への苦情処理であったので、不本意な人事だったようです。

 消費者は苦情を言うときには、不満や怒りがあります。言い方がきつくなるのは、必然でしょう。本人は「お客さんに、感情的に言いたいことを言われる。顔が見えないので、言いやすいみたい。正当な反論をしたら、課長に苦情が行った」。そして「反論は、あまりしないほうが良い」と、課長から注意されました。本人は「私たちが、お客様にできることは限られているのに」、「先方は組織への知識が乏しい。多くの部署があり連絡が大変なのだが。同じ会社なので、すぐに対応をしてくれると思っている」と、怒り気味に話すのです。「朝から夕方まで、ひっきりなしにかかってくる電話に対応しなければならないのです。電話なので、相手の顔も見えなければ、性格や感情の動きがつかめない。言われっぱなしで‥‥空しい。仕事にやりがいが感じられない。転職希望だが、判断としては妥当かどうか。でも給与は比較的良いのですよ」と切々と訴えて、ストレス相談室に訪れました。

図1 クレーム処理担当者の過剰ストレス状態の仕組み

原因と対応

 図1にどうして過剰なストレス状態になったのか、その仕組みを示しました。クレーム処理担当者のストレスは大きいです。一般的に言えば、「仕事だから、当然だろう」となるが、担当者にしてみれば「私がしたミスや失敗でないのに。なぜ、私が叱られなければならないのか」と言いたいのが、心情です。このケースでは胸にたまっていた不満や感情などを、吐きださせることが中心でした。少し、スッキリした後、「かといって、転社は難しい。ただ企業の人に、このシンドサを理解してほしい。上司の理解とサポートが大切です。うちは上司の理解がないから」と、述べました。「ストレスの強い仕事だから、気分転換が大切です。その時間を十分に確保してください。自分をいたわることにもなります。休日の充実を」と、助言されました。

 「お給料も悪くないので、これからはクレームが多いとき、シンドサを感じたら、自分にご褒美をあげるようにします。フアッションや旅行などで。また、友人との豪華なグルメでリッチな気分になります」と、話されました。

 クレーム処理担当者のストレスをまとめれば、1. 電話対応がほとんどであり、相手の真意、問題点が把握しにくい、2. 自分がおこしたストレスではないのに、私が責められることへの不満、3. クレーム処理のための部門間における連絡のまずさ、4. 忙しい、5. 職場のサポートの少なさです。このような担当者が被る構造的ストレスへの対応が、企業に要求されます。

指針からの対応

  1. 1 セルフケア

     以下の3点に要約できます。

    (1) 「苦情を聞くのは仕事である。自分のミスで言われるのではない。たまたま、この仕事の担当に当たっただけである」という、割りきりです。電話対応でイライラが増したときは、「疲れている、ストレスがたまっている」と判断し、ストレス解消に努める必要があります。

    (2) ストレスが強い仕事だと、自覚すること。だから人一倍、ストレス解消に心がけることです。「自分を誉めてあげる、ご褒美をあげる」という発想で、「紅葉狩を休日に楽しもう」や「わずらわしい人間関係を離れて、海外の自然の景色にひたる」、「好きなことをする時間を多く持つ」などです。

    (3) 苦情処理、クレーム対応が結局、製品の改善、新しいニーズの発見につながるという、自覚と自負を持つのです。企業に、ぜひとも必要な領域であるというプライドを持つことです。

     ストレス過剰警報である心身の不調が現れたら、それに気づき、ストレス・コントロールを上手くしてください。

  2. 2 ラインケア

     クレーム処理担当者のストレスは強く、かつ重要な仕事であるという、社内的なコンセンサスが、ぜひとも必要です。次に、精神的疲労が強い仕事であるから、「電話応対40分で、20分休息」というように余力や余裕を持って対応できる、勤務体制が必要です。また、サポートのために的確なアドバイスができる人を、グループごとに1名付ける体制の整備が望まれます。

  3. 3 産業保健スタッフによるケア

     クレーム処理担当者のストレス軽減に、かつユーザーの要望の的確な把握のために、リスナー技法(積極的傾聴法)取得により、聞き上手になっていただく。実習にはロール・プレイ(ユーザー役とクレーム処理担当者役にわけ実技を行う。両者の立場を体験する)で、両者の立場を経験することを通して、顧客の立場が理解しやすくなります。また、「聞きかたのコツや感情の受け止め方」のヒントになるでしょう。結局はユーザーの気持ちの理解であり、問題点の明確化である。「消費者のカタルシスになれば良い」という、割りきり方がいるのではないでしょうか。

     職場のサポート体制が、ぜひとも必要です。ストレスが強い職種だから、サポートが大切であるという、上司の理解がポイントになります。

  4. 4 事業場外資源の活用によるケア

     産業医や産業看護職などは外部医療機関(1.地理的条件や時間的条件:女性は子育ての関係で、この条件は大きい。2.専門性:うつ病に強い、女性のケースに強いなど)のポイントを日常から把握し、情報として社員に伝えることは有益です。