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過労死等予防対策関係

ア行

医師による勧告・指導

過重労働対策においては、医師は、長時間労働をしている作業者と面接して得たデータから、脳・心臓疾患(脳出血などの脳血管疾患及び心筋梗塞などの虚血性心疾患等)やメンタルヘルス不調の判定と評価を行います。「診断区分」、「就業区分」、「指導区分」の3判定区分を決め、「生活指導」、「就業指導」、「医療機関受診」等の指導の必要性を判断します。事業者に対しては、作業者の労働時間の短縮、職場状況や作業の変更などの具体的意見を勧告します。事業者は医師の意見に沿った改善に努めなければなりません。

医師による面接指導

長時間労働によって脳・心臓疾患(脳出血などの脳血管疾患及び心筋梗塞などの虚血性心疾患等)やメンタルヘルス不調等、“心とからだ”への健康影響が懸念されていますので、事業者は、労働安全衛生法に定めるところによって長時間労働をしている作業者に対して、医師による面接指導を行います。医師は、面接指導を受けた作業者本人に対して、健康上・生活上の指導や医療機関への受診指導を行うとともに、事業者に対して面接指導後の措置に関する意見を述べます。

衛生委員会

業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場では、事業者は衛生委員会を設置し、毎月一1回以上開催をしなければなりません(安衛法第18条)。委員は、1)事業を統括管理する者(総括安全衛生管理者)、2)衛生管理者、3)産業医、4)労働者で衛生に関し経験を有する者、で構成され、委員の半数は労働組合又は労働者の過半数代表者の推薦であることが必要です。議題は、経営に関する以外のことで職場の安全衛生が中心。議事の労働者への周知及び3年間の保存の義務があります。

衛生管理者

業種を問わず常時50人以上の労働者を使用する事業場では、衛生管理者を選任しなければなりません(労働基準監督署への選任報告が必要)。有害業務のある製造業等では「第一種衛生管理者免許」が必要ですが、有害業務のない業種では「第二種衛生管理者免許」でかまいません。衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備や作業方法、衛生状態に問題があるときは直ちに必要な措置を講じなければなりません。

衛生推進者

小規模事業場(常時使用する労働者の数が10人以上50人未満である事業場)では、安全管理者又は衛生管理者の選任が義務付けられていないことから、職場の安全衛生活動を行わせるために、安全衛生推進者(安全管理者の選任を要する業種以外の業種の事業場にあっては衛生推進者)を選任し、その者に安全衛生業務を担当させなければなりません。衛生推進者にあっては、衛生に係る業務に限っての担当となります。

カ行

快適な職場環境の形成

労働安全衛生法第71条の2に、事業者は快適な職場環境を形成するように努めなければならないとされており、その具体的内容としては「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」が公表されています。この指針は、仕事による疲労やストレスを感じることの少ない、働きやすい職場づくりを目的としており、その目標や講ずべき措置、考慮すべき事項等が示されています。

過重業務

医学経験則に照らして、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷を「過重負荷」というものとされており(過労死等の認定基準)、このような負荷のある仕事を「過重業務」といいます。なお、ここでいう自然経過とは、加齢、一般生活等において生体が受ける通常の要因による血管病変等の形成、進行及び増悪の経過をいいます。

過重労働対策

長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因であり、医学的にも、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという知見もあることから、「過重労働による健康障害防止のための総合対策について(平成18年3月17日付け基発第0317008号)」が示され、事業者は、時間外・休日労働時間の削減に努めるとともに、当該労働者への面接指導の実施、衛生委員会における調査審議、メンタルヘルス不調者への対応等を講ずるよう求められています。

管理区分(診断区分、就業区分、指導区分)

健康診断や面接指導において、心身の現在の負担状況を評価して健康管理を実施する上での区分をいい、診断区分・就業区分・指導区分の3区分の決定を行います。診断区分では医学的判断に基づいて、異常なし・要観察・要医療に分けます。就業区分では労働者の体調に見合う就業条件の判断を行い、通常勤務・就業制限・要休業に分けます。指導区分では指導不要・要保健指導・要医療指導の3段階に分けて必要な指導を行います。

基礎疾患

脳・心臓疾患(脳出血などの脳血管疾患及び心筋梗塞などの虚血性心疾患等)の背景となる動脈硬化を引き起こす病気のことで、高血圧や脂質異常症(高脂血症)、糖尿病、肥満などを指します。高血圧、脂質異常症、糖尿病があるとそれぞれ単独でも動脈硬化が進みますが、併発する場合には動脈硬化が一層進みやすく、脳・心臓疾患のリスクが相乗的に高まります。これらの疾患の重なりは内臓脂肪蓄積で起りやすく、これがメタボリックシンドロームの概念につながっています。

狭心症

冠動脈の動脈硬化を背景に、心筋への酸素の需給バランスがくずれて酸素不足となり発症する病気です。前胸部の圧迫感や絞めつけられる感じが主な症状です。運動や力仕事時、強いストレス時などに起る労作性狭心症の他、睡眠中などに起る安静時狭心症などがあります。
過去3週間に発作の頻度が増してきている場合は不安定狭心症と呼ばれ、心筋梗塞に移行しやすい危険な状態です。早急に精密検査を受け,適切な治療を受けましょう。

虚血性心疾患

心臓への血液の流れが悪くなり、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養の供給が不十分となり起こる心臓病です。虚血が高度で心筋の壊死を伴う心筋梗塞と虚血が一過性で心筋壊死を伴わない狭心症とに分類されますが、虚血の起き方や程度により様々の病態があります。虚血性心疾患の多くは冠動脈の動脈硬化によって起きますが、精神的ストレスによる冠血管の収縮や血栓の発生による冠血流の減少が関わる場合があることが知られています。

業務上災害

業務に起因する負傷・疾病・障害・死亡を意味します。業務上災害と認められるためには、「業務起因性」が認められなければなりません。業務上災害は、労働基準法上の災害補償ないし労災保険法上の保険給付の対象となります。

業務上疾病のリスト

労災補償の対象となる疾病を業務上疾病といい、労働基準法施行規則別表第1の2とこれに基づく2つの告示によりリストが示されています。平成22年5月7日の同規則改正により、過労死等や精神障害がリストに具体的に明示されました。なお、日本も批准しているILO第121号条約「業務災害の場合における給付に関する条約」により法令でこのようなリストを定めること、又はこれに替わる措置が求められています。

業務による精神的負担

厚生労働省から発表された「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平成21年4月6日一部改正)において、業務上外の判断を迅速・適正に行うために業務による精神負担(心理的負荷の強度)が職場における具体的な出来事毎に基準化されました。具体的な出来事とは、事故や災害の体験、仕事の失敗・過重な責任の発生等、仕事の量・質の変化等が挙げらています。

健康診断

事業場で行われる健康診断はさまざまな種類がありますが、通常は一般定期健康診断を指します。事業者が常時使用する全ての労働者に対して1年以内ごとに1回行わなければならないもので、健診項目の多くは循環器系の基礎疾患の有無を評価するものです。

高血圧

血管内の血液の圧力である血圧が、正常範囲を越えて高く保たれている状態です。一般的には収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上が高血圧とされますが、日本高血圧学会より詳細な診断・治療基準のガイドラインが発表されています。高血圧は脳血管障害や虚血性心疾患の大きなリスクファクターです。また、高血圧の中で90%以上を占める本態性高血圧の原因は単一ではなく、遺伝的素因や食事・ストレスなどの生活習慣・環境が関わっていると考えられています。治療としては、種々の降圧剤による薬物療法とともに食事療法(体重のコントロール、塩分制限)、アルコール量の制限、運動療法、ストレスの解消など非薬物療法も重要です。

拘束時間

労働基準法において「労働時間」とは、休憩時間を除いた、「実労働時間」をいいます(同法第32条)。この「実労働時間」と「休憩時間」が、使用者の拘束のもとに置かれている時間となり、これを「拘束時間」といいます。同法において「拘束時間」は、特に定めはありませんが、過重労働の判断要素として考慮され得ます。中でも自動車運送業においては、長時間労働となりやすいことから、特に規制が告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」によってなされています。

構造化面接

質問の内容、順序、使用する言葉(表現)まで定められた面接法を言います。均質化された一定の面接によって、診断や評価のばらつきを抑えることを狙いとしており、精神疾患に関する大規模な(疫学)調査などでよく用いられてきました。職場の健康管理においても、長時間労働者に対する医師面接などで、活用されることが推奨されています。

交代制勤務

連続した生産やサービスの提供などの事業活動を、複数の勤務時間帯にわけて労働者が交代しながら仕事を行う勤務形態をいいます。生産を止められない石油化学プラント、連続してサービス提供の必要な医療機関、コンビニエンスストアー、営業時間が所定労働時間より長い店舗など、いろいろな分野で行われています。

サ行

裁量労働

業務の性質上、管理監督者の指揮管理が及ばず実質労働時間の把握が困難な業務や業務の進め方等を労働者の裁量にゆだねなければならない業務で、一定の時間を労働したとみなす労働時間算定の特例が認められているものです(労働基準法第38条の3、第38条の4)。このため、短時間労働でも、長時間労働でも一定の賃金しか支払われません。研究開発などの「専門業務型裁量労働制」や創造的・非定型的に従事するホワイトカラーの「企画業務型裁量労働制」などがあります。裁量労働制の導入に当たっては、所轄の労働基準監督署に届出が必要となります。

作業関連疾患

職業病が特定の作業によって出現する特有な病気であるのに対して、一般の人がだれでもかかる日常的な病気のうち、特に、職場の環境、労働時間、作業による負荷などの影響によって、進行や発症の危険性が高くなる病気を作業関連疾患とよんでいます。作業関連疾患は、労働に伴うストレスや過労が直接的あるいは間接的に原因になるため、発症時および発症前の作業の状況によっては、労災補償の対象として認定されることもあります。

36協定

労働基準法第36条に規定されている時間外労働・休日労働に関する協定を言います。使用者が、過半数労働組合もしくは過半数労働者代表と締結し、労働基準監督署へ届け出た場合には、その協定の範囲内で法定労働時間を延長して労働させたり、休日(法定休日)に労働させることができます。ただし、労働時間の延長については、一定の有害業務については2時間までの制限があるとともに、厚生労働省よりその限度(上限)に係る基準(例えば、1か月につき45時間)が定められています。

産業医意見書

過重労働による健康障害やメンタルヘルス不調の予防と改善のために、事業者は産業医による面接指導を実施することが求められています。産業医はその面接結果をもとにして、産業医意見書によって事業者に意見を述べることになります。産業医意見書の内容は、健康障害の予防と改善に必要と考えられる措置に関することで、具体的には労働時間の短縮、就業場所の変更、出張制限など、就労上の配慮に関する産業医としての判断です。

産業保健推進センター

(独)労働者健康福祉機構が全国47都道府県に設置している機関で、産業医・産業看護職・衛生管理者等を対象とした研修や各種相談対応及び図書・ビデオ/DVD等器材・ホームページなどを媒体とした情報提供などによる支援活動や、事業者等に対する職場の健康確保に関するセミナー開催などによる啓発活動を主な業務としています。利用はすべて無料で、相談者のプライバシーは確保されます。

サービス残業

賃金不払残業のことで、就業時間後の残業や休日出勤等の所定外労働時間に対し、所定の賃金または割増賃金の一部または全部を支払うことなく労働させることです。労働基準法違反となります。特に、労働時間の自己申告を行っている企業では、残業規制等を考慮し過少申告をする従業員もおり、管理職は、日常的に部下の労働時間をしっかりと把握する必要があります。厚生労働省では、このようなサービス残業をなくすため、「賃金不払残業総合対策要綱について」(H15.5.23基発第0523003号)を示しています。

仕事の拘束性

見かけ上、実質的な作業をしていない待ち時間であっても、拘束性が高ければ、労働者の心理的な負荷(ストレス)は大きい状態が続くと判断されることがあります。また、仕事の自由度(裁量権)が少ないと、仕事上の心理的負荷は高まるといわれています。

脂質異常症(高脂血症)

血液中の脂質が過剰もしくは不足している病気です。血液中の脂肪分にはいくつかの種類があり、高LDL-コレステロール血症(140mg/dL以上)、低HDL-コレステロール血症(40mg/dL未満)、高トリグリセライド血症(150mg/dL以上)があります。以前は、高脂血症と呼ばれていましたが、善玉のHDL-コレスレロールは低い方が心血管疾患のリスクファクターとなるため、高脂血症という病名ではそぐわないことから脂質異常症と呼ばれるようになりました。遺伝的素因による家族性脂質異常症、内分泌疾患や腎臓病などによる二次性脂質異常症もありますが、食生活の偏りや運動不足などの生活習慣から起こる脂質異常症が問題となっています。脂質異常症でも普通症状はありませんが、動脈硬化の進行により起こる脳・心臓疾患の原因となります。

指導区分

一定時間以上の長時間労働者に対しては、医師による面接指導を実施することが、労働安全衛生法によって事業者に義務付けられています。これを担当する医師は、面接の結果をまとめ、3つの区分(診断区分、就業区分、指導区分)について判定を行います。指導区分の判定は、例えば「指導不要」「要保健指導」「要医療指導」のいずれかを選ぶ形がとられ、具体的な内容についても記されることになります。

死の四重奏

生活習慣病の中で「内臓脂肪型肥満」「糖尿病」「高脂血症」「高血圧」 が同時に発症している状態をいいます。 この4つの生活習慣病は、お互いに合併しやすく心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす可能性が大きくなります。アメリカの医師、カプランにより1989年に提唱されました。その後、インスリン抵抗性症候群やマルチプルリスクファクター症候群、内臓脂肪症候群などと呼ばれてきた病態とともに統合整理され、今日のメタボリック症候群の概念に連なっています。

就業規則

それぞれの事業場における労働条件を定めた規則で、10名以上の労働者を雇用する事業場では、就業規則を作成し、労働者代表の意見を聴取したうえで、労働基準監督署に届け出る必要があります。規則には、始業、就業の時刻や休憩時間、休日、休暇、賃金、賞与、退職(解雇事由を含む)などについて書かれています。

就業区分

定期健康診断などの結果を基に、治療の要否など示す医学的な区分とは別に、就業の可否や、就業の制限などを示す区分を就業区分といいます。例えば、通常通り勤務を行ってよい「通常勤務」、労働時間の短縮や時間外労働の制限、深夜業の回数の変更、勤務場所の変更などを行う「就業制限」、療養のために勤務を休む必要のある「就業禁止」などの区分があります。

出向

他の会社や団体に配置転換を行い、将来元の会社に復帰する在籍出向とそのまま出向先に転籍する転籍出向とがあります。出向の目的は、①出向先の新技術などの習得、②出向先に新技術や経営管理などを指導する、③人事交流、④人員削減などです。

職業性ストレス

職業性ストレスとは、職場におけるストレスを指します。人間関係、仕事のコントロール度、仕事量・時間外労働、仕事の将来性、仕事への適性、交代制勤務・出張等の勤務体制、職場環境(NIOSH職業性ストレスモデル参照)などにより、労働者に生じてくるものです。個人的な要因や仕事以外の要因等にも影響を受けるため、人によってストレスの受け取り方はさまざまなものになります。

所定労働時間

労働契約や就業規則などで定められた労働時間をいい、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間で求められます。所定労働時間は、法定労働時間(1日8時間、1週40時間))の範囲内で定められます。

心筋梗塞

心臓の筋肉は、心臓の表面を流れる3本の冠状動脈という血管から酸素を送られて動いています。
動脈硬化やストレスが原因で、この動脈がつまると酸素が送られなくなり、筋肉が窒息死した状態を心筋梗塞と呼びます。大抵は、突然の激しい胸痛を生じます。窒息死した筋肉の量が多いと心不全となり、ひどい場合は急性心不全で血圧が急激に低下しショック状態で死に至ります。
不整脈も出やすくなり、AED(自動体外式除細動器)や心臓マッサージが必要になる場合があります。
激しい胸痛が出た場合には、心筋梗塞を疑い速やかに救急救命センターを受診することが必要です。

診断区分

健康診断の結果の判定を指します。通常は、「異常なし」、「要観察」、「要再検」もしくは「要精密検査」、「要医療」と分けられます。
「要観察」は、治療の必要性がそれほど高くなく、生活習慣の改善等で経過を観察するものです。「要再検」もしくは「要精密検査」は、診断区分を最終確定するために、異常値に対して再検査を行うもの、もしくは精密検査を行うものです。「要医療」は、治療の必要性を指すもので、生活習慣の改善とともに、一般的には薬物療法が必要なものを指します。
事業者は、診断区分に基づき、産業医の意見を聞きながら、必要な場合には就業上の措置を行います。

心房細動

心臓では電気信号が一箇所から生まれ、信号が定められた電気系統を順次伝わって、その刺激の下に心房と心室が連携して規則正しい間隔で動きます。動脈硬化やストレスが原因で、この電気系統が乱れたものを不整脈と呼びます。
心房細動は、よく見られる不整脈の一つで、心房のあちこちから電気信号が生まれ、心臓はまったく不規則な間隔の動きとなってしまいます。不規則な動きで心房と心室の連携が乱れ、心臓の中では血液がスムーズに流れなくなり、心臓の中に血栓(血液のかたまり)ができやすくなります。心房細動の最大のリスクは、この血栓が心臓から飛び出し、脳の血管につまり脳梗塞を起こすことです。

時間外労働

法的には労働基準法で定められた労働時間(法定労働時間)を超えて行う労働をさし、一般には就業規則などで定めた所定労働時間を超えて行う労働のことをいいます。法定外の休日に働くことも含まれます。時間外労働が認められるのは、労働基準法第36条に基づく協定の届出が行われている場合などに限られています。

事後措置

健康診断の結果異常の所見があると認められた労働者あるいは長時間労働者への面接指導の結果必要があると認められた労働者に、医師や歯科医師の意見を十分聞きながら、事業主が行う対応策のことを指します。必要な場合には、労働者の生活環境や働く環境を十分考慮しながら、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換などを行うものです。作業環境の測定結果により施設や設備の適切な整備や設置を行い、衛生委員会や安全衛生委員会への報告を通じて、作業環境や作業の改善策を講じていきます。

自発的健康診断

6か月平均で4回/月以上深夜業に従事する人は自発的に受診してその結果を事業者に提出することができる健康診断です。労働安全衛生法第66条の2に定められているもので、過労死対策の一環としての健康管理の充実を図るため、平成11年に制度化されたものです。
なお、深夜業従事者健康診断助成金(自発的健康診断受診支援助成金)の制度があります。希望者は、都道府県産業保健推進センターに申請します。

睡眠時間

睡眠は、心身の健康を維持するために非常に重要であり、逆に心身の健康(特に精神面の健康)が損なわれると、睡眠に影響が出やすくなります。精神疾患の労災認定において、長時間労働の有無が重要な判断材料になるのは、それによって必要な睡眠が確保されなくなるという理由によるところが大きいと言えます。適切な睡眠時間は、個人差があり、日中に強い眠気を催さないことが目安のひとつとされています。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に呼吸していない(あるいは呼吸していることがわかりにくい)状態が頻回にみられもので、日中に強い眠気が出現し、仕事や学業に支障が出ます。交通事故の原因のひとつとして社会的な注目を集めました。不整脈、心臓病、脳血管障害などの病気の発症にも影響すると指摘されています。耳鼻咽喉科を中心として、診断と治療を専門的に手がけている医療機関があります。

生活習慣病

毎日の生活習慣、とくに過食、運動不足や喫煙によって引き起こされる病気です。
生活習慣病は、健康長寿の最大の阻害要因で、国民の3分の2近くが生活習慣病で亡くなっています。
平成12年からは、国を挙げての生活習慣病対策「健康日本21」としての取り組みが始まりました。平成20年からは、特定健診・保健指導として内臓脂肪型肥満に焦点を当てた予防啓発活動が行われ、「適度な運動」、「バランスのとれた食生活」、「禁煙の実践」を軸に、動脈硬化やがんの予防に、さらに積極的な取り組みが開始されました。

精神障害

国際疾病分類であるICD-10の第Ⅴ章「精神および行動の障害」に分類されているものを指します。代表的なものにうつ病等の気分(感情)障害、統合失調症、ストレス関連障害やアルコール等の薬物依存、睡眠障害も含まれます。

タ行

蓄積疲労

1日の疲労が食事や休養(睡眠を含む)によって十分に回復しない状態が続くと、慢性的な全身の倦怠感や注意力、集中力などの低下を招きます。この状態を蓄積疲労と呼び、重度になると、心身の健康を阻害するおそれがあることが知られています。

長時間労働

労働基準法では労働時間の限度を1週40時間以内、1日8時間以内と定めていますが、労使が同法第36条に基づく協定を結ぶ場合にはその協定の限度内で時間外労働(休日労働を含みます。)が認められます。長時間労働とは一般に月45時間を超える時間外労働を指します。時間外時間が長くなるにつれ、脳・心臓疾患(脳出血などの脳血管疾患及び心筋梗塞などの虚血性心疾患等)やメンタルヘルス不調の発症リスクが高まることから,時間外労働を減らすようにするとともに、時間外労働が月100時間を超える長時間労働者や事業所が定める基準を超える長時間労働者に対しては面接指導を行う必要があります。

THP

THPとは、トータル・ヘルスプロモーション・プランの略称で、労働安全衛生法に基づいた働く人の「心とからだの健康づくり」を目指した運動のことです。少子高齢化、生活習慣病の増加、ストレスの増大などへの積極的な対応が求められている現在、若年から中高年齢者に至るすべての働く人に対して、心とからだの両面の健康づくりを目指すTHPは、時代のニーズに応えた取り組みといえ、中央労働災害防止協会で種々のサービス提供がされています。

適正労働条件措置義務

過重な労働を防ぐため、使用者が、労働時間・休憩時間・休日・労働密度・休憩場所・人員配置・労働環境等に、適正な措置を講ずべき義務を言います。「適正労働配置義務」や健康管理義務などとともに、安全配慮義務の一内容とされています。

適正労働配置義務

使用者が、身体や精神に疾病や障害がある労働者に対して、勤務軽減・作業の転換・就業場所の変更などによって、過度な負担のかからないように配慮すべき義務を言います。「適正労働条件措置義務」や健康管理義務などとともに、安全配慮義務の一内容とされています。

ディーセントワーク

ディーセント・ワークは「働きがいのある人間らしい仕事」を意味する言葉で、国際労働機関(ILO)においてILOの今日的な目標として定められたものです。それぞれの国や地域で、よりよい環境を維持しながら、安全や健康を守り、今なお、そこに存在する労働や雇用に関係したさまざまな課題を克服していくために策定された概念です。わが国では、非正規雇用、ワーキング・プア、男女の賃金格差、ワークライフ・バランスなどとの関連においてディーセント・ワークという言葉がよく用いられています。

糖尿病

内臓脂肪から分泌される悪玉の生理活性物質(サイトカイン)は、血糖コントロールに必要な膵臓から分泌されるインスリンの働きを低下させます。インスリンの機能が低下するため、血糖コントロールができず食後の高血糖が生じます。さらにインスリンの機能が低下すると、空腹時にも高血糖となります。
一方、低下した機能を補うためインスリンが過剰に分泌されます。この過剰インスリンと高血糖が、動脈硬化を進めます。糖尿病の初期でも生じる脳梗塞・心筋梗塞・閉塞性動脈硬化症などの大血管障害と、長期間にわたる糖尿病で生じる腎障害・網膜症・神経障害などの細小血管障害が問題となります。
最近では、腎不全に至る腎障害(糖尿病性腎症)を防ぐことが、血糖コントロールの主要課題です。

突然死

WHOの定義では、疾病の徴候のない死で、発症から24時間以内の死亡(原因不明の突然死)を「突然死」としていますが、狭義では発症から1時間以内の死亡(瞬間死)を指す場合もあります。また、乳幼児の場合は、剖検しても死亡原因が特定できないものを乳幼児突然死症候群と分類することもあります。多くの突然死は原因不明ですが、虚血性心疾患・心筋症・致死性不整脈などの心臓突然死、くも膜下出血・脳梗塞・脳出血などの脳血管障害が原因と考えられることが多いと言われています。

ナ行

年次有給休暇

労働基準法第39条により、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10日の有給休暇を与え、その後1年ごとに1~2日追加し、最大年間20日の有給休暇を与えなければならないこととされています。有給休暇は原則として自由利用が認められます。

脳血管疾患

脳の血管がつまったり、破れたりして起こる病気であり、脳血管障害とも言われます。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に代表されますが、一過性脳虚血発作、もやもや病、慢性硬膜下血腫なども含まれます。また、脳血管疾患のうち急激に発症したものは、脳血管発作もしくは脳卒中と呼ばれます。脳血管疾患は、「がん」、「心疾患」に次いで現在の日本人の死亡原因の第3位です。回復後も手や足の麻痺、言語障害などの後遺症を残すことが多く、予防のためには、高血圧、肥満、高脂血症、糖尿病などの危険因子の治療とともに禁煙、精神的ストレスの緩和、運動などの生活習慣の改善が有効です。

脳梗塞

脳に酸素や栄養を運ぶ血管が詰まり、脳神経組織が酸素や栄養の不足のため壊死または壊死に近い状態になる病気です。多くは脳血管の動脈硬化により起こりますが、心房細動など心臓由来の血栓により引き起こされる心原性脳梗塞もあります。症状としては、意識障害、言語障害、手足の麻痺などがあり、急性期の治療とともに後遺症に対するリハビリテーションが重要です。また、微小な脳血管閉塞により起こる無症候性脳梗塞や徐々に進行して脳血管性認知症になる形も増えています。

脳出血

頭の中の出血には、脳の中の出血(脳内出血)と脳の周囲の出血がありますが、医学的には狭義に脳内出血を脳出血とすることが多く、くも膜下出血や硬膜下血腫などと区別しています。高血圧と動脈硬化による高血圧性脳内出血が多くみられましたが、近年は脳梗塞により脆くなった血管が破れることによる出血性脳梗塞も多くなってきました。その他に、脳動脈瘤、もやもや病、脳動静脈奇形、脳アミロイド血管障害、脳腫瘍、抗凝固療法など出血性疾患による脳内出血があります。症状は出血部位により異なりますが、意識障害を伴う重篤な例も多くみられ、手術適応のある場合は限られます。

ノー残業デー

事業所や職場などで特定の曜日や日を定め、特別のことがなければその日は残業をさせないようにする制度をいいます。ノー残業デーは、就業規則で定める必要はなく、随時実施することができます。

ハ行

日内リズム(サーカディアン・リズム)

人間をはじめとして多くの生物がもっている約24時間周期の生理現象をさします。このリズムの乱れは、短期的には疲労や睡眠障害(例えば、海外旅行などによる時差ぼけ)、長期的には心身の健康に深刻な影響をもたらすことがあります。

肥満

内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分けられます。
内臓脂肪型肥満は、中年男性に多く、上半身に脂肪がつくリンゴのような体型で、おなかの皮膚はつまみにくく、生活習慣病の原因になる悪玉の生理活性物質(サイトカイン)を分泌します。生活習慣の改善で減らしやすいという特徴もあります。
腹部CTで内臓脂肪面積が100cm2以上のものを指しますが、へその高さの腹囲で代用し、男性で85cm以上、女性で90cm以上を内臓脂肪型肥満としています。
皮下脂肪型肥満は、女性に多く、お尻に脂肪がつく洋梨型のような体型で、おなかの皮膚はつまみやすく、サイトカインは分泌されにくいとされています。皮下脂肪は一度ついたらとれにくいという特徴があります。

疲労

「ある活動をそのまま続ければやがてへばり、休めば回復すると予測できるかたちでおこる体内変化であって、それによって活動自身にもそれとわかる変化を伴って休息を求めている状況」と定義できます。いくつかの分類方法が提唱されており、必要な休息のパターンからは、急性疲労、亜急性疲労、日周性疲労、慢性疲労(蓄積疲労)に分類されます。

疲労蓄積度自己診断チェックリスト

過重労働による健康障害防止のための総合対策の一環として、厚生労働省により作成、公開されました。本人用は、労働者自身が疲労の蓄積をセルフチェックするツールとして、家族用は、本人用と合わせてご家族が見て労働者の疲労の蓄積度を判断する目安とできるように作成されました。本人用では、最近1か月の自覚症状について13の質問が、最近1か月の勤務の状況について7の質問が設定されており、総合判定で仕事による負担度が点数で表されます。

PDCAサイクル

事業場の安全衛生管理の手法のひとつで、国から『労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針』が示されています。P(計画)→D(実行)→C(点検)→A(改善)という流れにより安全衛生管理のレベルの継続的な改善を目指すシステムです。ポイントとしては、改善において個別事案の改善ではなく、仕組みの改善を行い、同種事案の発生しない仕組みに改善していくことにあります。

不整脈

心臓の拍動のリズムが一定でない状態ですが、心拍や脈拍が規則正しく整であっても、心電図で正常洞調律かつ正常心拍数(50~100/分)以外のものは、臨床的には不整脈です。不整脈の診断に心電図検査が必要です。さらに、ホルター心電図(長時間記録心電図)、心エコー検査、心臓電気生理学的検査、冠動脈造影などで不整脈の種類と基礎疾患について評価することが大事です。日常生活になんら問題のない不整脈も多いのですが、ある種の不整脈は生命の危険を伴っており(致死性不整脈)、突然死の原因となりえます。不整脈の原因としては、先天的異常、虚血性心疾患などによる刺激形成異常と刺激伝導異常がありますが、その発現には精神的ストレスも誘因となると言われています。

フレックス制勤務

労使協定で1か月以内の一定期間の総労働時間等を定め、その範囲で労働者が始業時間及び終業時間を自由に決めることができる制度です。1日の中で自由に勤務ができる時間(フレキシブルタイム)と、必ず労働しなければならない時間(コアタイム)に分けますが、コアタイムがない場合もあります。労使協定では、適用する労働者の範囲や、標準となる1日の労働時間なども定めます。

法定労働時間

労働基準法においては、使用者は、原則として1日については8時間、1週については40時間を超えて労働者を働かせてはならないと定められています(法32条)。この法律で上限を定められた時間のことを「法定労働時間」といいます。使用者は、この「法定労働時間」を超えて労働者を働かせる場合には、労働者の過半数を代表する者と書面による協定(労使協定)をし、これを労働基準監督署に届け出なければなりません。

マ行

民事訴訟

民間人同士の間で争いごとが発生したとき、当事者の間で話し合いがつかない場合には、裁判所に訴えるという方法があります。裁判所で争いごとの当事者がそれぞれの言い分の主張を行い、証拠を出して、どちらの主張が正しいか、裁判所に判断してもらうことになります。こうして出された裁判所の判断を「判決」といいます。そして、このような民事上の争いに関する裁判を「民事訴訟」といいます。

メタボリックシンドローム

内臓脂肪型肥満では、内臓の周囲についた脂肪が、いろいろな悪玉の生理活性物質(サイトカイン)を分泌し、ほっておくと高血圧、糖尿病、脂質異常症(中性脂肪が高い、善玉コレステロールが低い、悪玉コレステロールが高いなど)を起こします。これらが重なると、動脈硬化が進みやすく、脳卒中や心筋梗塞などの病気の引き金になります。
この状態をメタボリックシンドロームと言い、生活習慣病の代表です。
内臓脂肪型肥満を改善することにより、これらの病気を改善し、脳卒中や心筋梗塞のリスクを下げることができます。

免疫系

ウイルスや細菌などの病原体やがん細胞を認識して、それらが起こす病気から体を保護する機構(システム)を指します。
免疫系の低下は、ヒト免疫不全(HIV)ウイルスにより起こる後天性免疫不全症候群(AIDS)があり、肺炎や悪性リンパ腫などのがんを併発しやすくなります。
免疫系の亢進は、関節リウマチなどの自己免疫疾患があり、正常な組織にあたかも異物のように攻撃を加えます。花粉症などのアレルギー疾患も、免疫系亢進の一つです。

面接結果報告書

医師(通常は産業医)は、当該労働者との面接指導結果について事業者に報告しますが、事業者側も、医師からの意見聴取を行わなければならないとされています。このため、面接結果報告書には、「労働者の疲労の蓄積の状況」、「心身の状況」、「事後措置に係る医師の意見等」の要素が含まれていることが望ましいと言えます。

面接指導

事業者は、労働安全衛生法により、時間外・休日労働時間が1月当たり100時間を超える労働者であって申出を行ったものについては、医師による面接指導を行わなければならないとされています。面接指導とは、医師による「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」を指します。

面接指導記録保存期間

事業者は、面接指導を行った場合には、その記録を5年間保存することとされています。

メンタルヘルス不調

厚生労働省による「労働者の心の健康保持増進のための指針」によると、「精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」と定義されています。

ヤ行

有給休暇

休暇には、法的に賃金の支払いを必要としない、育児休暇や生理休暇等と休んでも賃金支払いの対象となる年次有給休暇があります。年次有給休暇の付与は、①雇入れ時から6か月間の継続勤務と②全労働日の8割以上の勤務が要件となります。年次有給休暇は、従業員の心身の疲労回復と質の高い労働の提供を目的に労働基準法第39条に規定されているもので、企業は、連休など取得しやすい環境を整えることが必要です。

予見可能性

ある出来事が起こった時、事前にその出来事を予想できたかどうかの可能性を言います。予見可能性が有るのにそれを回避せずに損害が生じた場合には、過失(落ち度)とされます。うつ病自殺の事案では、使用者において労働者の自殺という結果まで予想できたのかどうかという予見可能性の有無の点をめぐって、しばしば争いになっています。

ラ行

リスクアセスメント

リスクアセスメントとは、リスクの大きさの評価に加え、その結果に基づきリスク管理対策の優先順位の決定などの判断も含む概念です。
安全衛生分野でのリスクアセスメントとは、事業場に存在するハザード(危険性や有害性)を特定し、リスクの大きさを見積り、その結果に基づき優先度を設定した上で、リスク低減措置を決定するとともに、その過程を記録する一連の手順を含みます。労働安全衛生法第28条の2では、「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づく措置」として、製造業等の事業者に対しては、リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施に取り組むことが努力義務として規定されています。また、厚生労働省は、そのための技術的指針として、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」を公表しています。

リスクとハザード

リスクとは、不確実性が存在する状況で、対象にとって不利益な事象が発生する可能性と発生した場合の不利益の大きさの組み合わせ(積)です。安全衛生においては、対象は労働者、不利益な事象とは労働災害になり、したがって安全衛生上のリスクとは、労働災害が発生する可能性と発生した場合のけがや病気の大きさとの組み合わせ(積)ということになります。
一方、ハザードは不利益な事象を引き起こす固有な性質であり、安全衛生においては怪我や病気を引き起こす固有の性質ということです。リスクとハザードを具体的なイメージとして理解するためには、いくつかの例が必要になります。たとえば、ある毒性の強い化学物質が密閉された容器に入れられている場合と、労働者が実際に取り扱っている場合を比較した場合、ハザードとしては同一であっても、前者に比べて後者の方が、リスクが高いとみなすことができます。またフェンスがない屋上があっても、そこに入口に鍵がかかって滅多に人が入らない状況と、頻繁に人が立ち入り作業をする状況を比較した場合も同じです。

リスクマネジメント

リスクマネジメントとは、リスクアセスメント、リスクアセスメント結果に基づくリスク低減措置の実施および維持を含むリスク対策の一連のプロセスを指します。また、リスクを負っている関係者とのリスクコミュニケーションや実際に事故等が発生した場合の対応である危機管理(クライシスマネジメント)などの取り組みを含むこともあります。

両罰規定

両罰規定は、独占禁止法、個人情報保護法など様々な行政(取締)法規に設けられていますが、産業保健関係では、労働基準法第121条1項、労働安全衛生法第122条がそれに該当します。いずれにせよ、ある事業組織において一定の地位や役割を持つ者(従業者)が、その事業に関して両罰規定を定める法律に違反した、つまり違反の実行者(行為者)となった場合、彼にその地位や役割を与えた事業主(法人[の代表者]や人)自身も併せて処罰の対象とする、という規定です。例えば、ある企業の人事労務担当者や管理監督者に当たる者などが、一定の労働災害や事故について労働基準監督署長への報告(労働安全衛生規則第96条、第97条)を怠れば、彼らのみならず、その企業の代表取締役なども「罰金刑」を科されることがあります。このような規定は、事業主の選任・監督義務違反を問う趣旨から設けられたという理解が一般的ですので、この考えによる限り、事業主がそれらの注意を尽くしたことを証明できれば免責されることになります(労働基準法第121条1項但書を参照)。なお、ここでいう行為者には、安全管理者、衛生管理者等はもちろん、従業者である限り、産業医等の専門家であっても該当することに留意が必要です。

労災保険

労災保険(労働者災害補償保険)は、①労働災害や通勤途上災害(それぞれ該当項目参照)が発生したとき、必要な保険の支給(保険給付)を行うとともに、②被災労働者の社会復帰の促進、被災労働者本人とその遺族のサポート、適正な労働条件の確保などを図る制度のことです(労働者災害補償保険法1条)。当初は、労働基準法上の災害補償を肩代わりすることを主な目的として設けられた制度でしたが、その後、独自の発展をとげ、今では社会保障制度の一つと考えられるようになって来ています。その特徴として挙げられるのは、(i)政府による運営、(ii)労働者を使用する全民間事業の原則強制加入、(iii)年金給付(傷病、障害、遺族)、物価スライド制があること、(iv)介護補償給付があること、(v)リハビリテーション施設など(施設給付)の設置、(vi)通勤途上災害への保険給付、(vii)保険財政への一部国庫負担(補助)などの点です。 なお、使用者の過失によって労働災害が起きた場合、たとえ労災保険給付がなされても、民事損害賠償責任は免れません。ただし、一時金と年金給付の一部は差し引かれます(年金給付との調整には難しい問題がありますので注意が必要です。)。また、法律上、労災保険の申請は、労働者又は遺族が行うことが原則ですが、事業主や医師による証明が必要となりますので、法律上の定めはありませんが、事業主はこれに積極的に協力することが求められます。

労動安全衛生法

働く人の安全と健康を確保するための基本的な法律で、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています。
この法律に基づいて政令、厚生労働省令、厚生労働省告示及び指針が多く定められており、大きな法律体系となっています。

労働安全衛生マネジメントシステム

労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)は、事業場において事業者のリーダシップと労働者の参画により、労働災害の防止や労働者の健康増進、職場環境の形成といった継続的な安全衛生管理を、自主的に進めるための仕組みです。OSHMSは、事業者によって宣言された基本方針と、基本方針に盛り込まれた目的を達成するために必要な計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)に関する手順等を規定した文書体系および仕組みの中でそれぞれに規定された職務を遂行できる人材から構成されます。
事業場でのOSHMSの導入に当たっては、規格やガイドラインなどの基準文書を参考にして設計することになりますが、外部認証を取得することが目的の場合には国際的な規格であるOHSAS18001や厚生労働省の指針を基本としたJISHA方式適格OSHMS基準を利用することになります。

労働基準監督署

厚生労働省の地方支分部局である都道府県労働局の下部機関として全国に321の労働基準監督署があります。
労働条件、安全衛生、労災保険に関する事務を行っており、事業場に対する監督指導、各種の報告・申請等の受理、労働者からの申告(相談)の受理その他労働基準行政の第一線機関としての役割を果たしています。

労働災害

一言でいえば、労働者が仕事に従事したことにより被った人的な被害と説明できます(物的な被害は「事故」と呼ばれます。)。しかし、趣旨や目的の違いから、その定義(の表現)は、法律ごとに異なっています。先ず、労働安全衛生法第2条第1号は、「労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいう」と定めています。他方、労働者災害補償保険法第7条第1号は、「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」と定め、その表現から「業務災害」と呼ばれていますが、意味内容は労働安全衛生法の定めと同じという理解が有力です。ここでいう「業務上」の意味内容については、特に、労災保険の認定実務で第1に問われる「業務遂行性」の趣旨などをめぐって議論があります。しかし、要は「業務に起因すること(生じた災害が、業務に内在ないし付随する危険が現実化したものであること)」である、という理解は、ほぼ共通しています。また、業務上の疾病については、労働基準法施行規則別表第1の2で、その範囲が定められています。とはいえ、昨今問題になっている作業関連疾患については、業務起因性(因果関係)の考え方自体に難しい課題があり、どのような場合が業務上に当たるかについて、様々な議論があります。

労働災害防止計画

労働安全衛生法に基づき、国(厚生労働大臣)が労働政策審議会の意見を聞いて策定する計画をいいます。労働災害の防止のための主要な対策のほか労働災害の防止に関し重要な事項について昭和33年以来、5年ごとに計画が策定され、現在は平成20年4月から平成25年3月までを計画期間とする第11次の計画が策定されています。同法には計画の的確かつ円滑な実施のため必要があると認めるときは、事業者等に対し、労働災害の防止に関する事項について必要な勧告又は要請する旨の規定も定められています。

労働時間

一口に労働時間と言っても、その意味内容は様々ですが、法的に最も重要なのは、労働基準法に定められた労働時間(労働基準法上の労働時間)で、これは主に、労働者が使用者(会社側)からの明示・黙示の指揮命令に拘束されている時間を意味し、業務に当たるような行為をしていたかも判断の材料となります。実際に働いている時間のほか、指示を受け次第仕事に就かねばならない手待時間・仮眠時間、仕事の準備時間なども含まれ、労使が任意に決められるものではなく、客観的に定まるものと理解されています。使用者は、この時間(の長さ)について法律上の制限を受けており、違反すれば、罰則が適用されるほか、時間外手当などの支払いを命じられます。また、長時間労働が一定の限度を超え、過重なストレスを招き、疾病・死亡などの被害をもたらしたと認められれば、労災補償の対象となったり、使用者に民事賠償責任を生じさせたりすることがあります。ただし、その場合にカウントされる労働時間は、労働基準法上の労働時間とは異なる場合もあります。

労働時間管理

労働時間の管理は、様々な方法があります。タイム・カード式や最新のICカードによる入退室時間管理、パソコンの電源オン・オフ時間での管理等ですが、いずれにせよ労働実態を反映したものでなければなりません。サービス残業と呼ばれるような慣習は、メンタルヘルス対策を進める上でも問題です。なお、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日付け基発第339号)が示されています。

労働時間削減対策

まず、作業ごとに標準作業時間を設定しましょう。時間をかければかけるほどいい仕事ができると考えがちですが、一定時間以上かけても仕事の質はほとんど変わりません。時間をかけすぎることによって残業が発生してしまうことも多いので、まずは標準的な時間を設定します。そして、それをもとに考えていき、職場(や特定の労働者)でかかえる仕事が多すぎる場合は、要員の見直しが必要になるかもしれません。その他職場に合った種々の工夫もありますので、順をおって労働時間削減を図りましょう。

労働時間等の設定の改善

仕事の波が激しい場合は、変形労働時間制の採用も考えられます。所定労働時間を仕事の繁閑に合わせて弾力的に決めることができれば、残業を減らせるでしょう。また、フレックス制勤務も社員の自主性を尊重するメンタルヘルスへの効果も期待される制度でしょう。そのほかにも、勤務時間選択制やみなし労働時間制の適用、ノー残業デー等の設定などもあります。仕事の内容によって選択すると良いでしょう。

労働時間の自己申告

労働時間管理は、客観的な方法(ICカードなどを使った方法等)が望まれますが、どうしても自己申告によらざるを得ない場合には、労働者に十分説明し正しい申告がなされるようにし、必要に応じて実態調査し、適正な申告による労働者への不利益が生じないようにしなければなりません。時間外労働の上限設定や定額払い制などが(無言のプレッシャーとなり)適正な申告を阻害する場合は、改善措置をとる必要があります。

労働態様の変化

近年、社会の変化とともに労働態様も急激に多様になっており、派遣、契約社員、嘱託、パート、アルバイトなどの非正規労働者が増加しています。注目すべきは初職就業時の雇用形態で、平成14年10月から19年9月に初職に就いた者の4割以上が非正規労働者だったと報告されています。勤務は9時から5時までなどと思われがちですが、メンタルヘルス対策を進める上で、労働者には様々な働き方があることに注意が必要でしょう。

ワ行

ワークシェアリング

雇用機会、労働時間、賃金の3要素の組み合わせを変化させることにより、一定の雇用量を、より多くの労働者で分かち合うことをいいます。企業にとっては、多様な働き方を希望する有能な人材を確保でき、労働時間や賃金制度を見直しするチャンスでもあります。また、労働者にとっては育児、介護、自己啓発、ボランティア活動などの時間を確保できるメリットがあります。

ワーク・ライフ・バランス

ここ数年増加しつつある長時間労働による過労死や過労自殺の問題を解決するには、仕事Workと生活LifeとがバランスBalanceを保って調和Harmonyしていることが重要です。そして、働いている人それぞれの個性や意欲に応じて能力を十分に発揮でき、仕事も生活もともに充実していると実感できる状態をいいます。