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ダイキン工業株式会社 滋賀製作所(滋賀県草津市)

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ダイキン工業株式会社 滋賀製作所
(滋賀県草津市)

  ダイキン工業株式会社 滋賀製作所は、1970年に竣工。主に住宅用空調機(家庭用エアコン)の製造を行っており、年間生産台数は約100万台である。従業員数は約2000名。
 今回は、安全衛生担当課長の久保田昇志さん、健康管理室 産業医の赤築秀一郎さん、看護師の村田里世さん、保健師の中山淳恵さんの4人からお話を伺った。

職場環境改善の取り組み内容やその改善結果について共有するため、各職場にメンタルヘルスに関する委員を任命し定期的に検討会を実施

最初に、ストレスチェック実施に向けたこれまでの経緯と、現在の状況および職場環境改善の取り組みについてお話を伺った。

「当社では、ストレスチェックに関しては、事業場ごとに方法を決めて実施しています。滋賀製作所は産業医1名、保健師1名、看護師1名の3名体制で、高ストレス者への医師による面接指導は、産業医が行っています。」

「メンタルヘルス対策に取り組むきっかけとなったのは、1998年頃にさまざまな部門で、メンタルヘルス関連の休業者が発生した事です。そこで当時、現場の作業改善で協力・親交があった産業医科大学の専門家に相談し共同研究という形で、2000年から現在のストレスチェックの前身となる“いきいきダイキン 心と身体の健康チェック(いきいきチェック)”を開始しました。」

「この“いきいきチェック”は、職場におけるメンタルヘルスの状態把握とメンタルヘルスに影響を与える要因を調べることを中心に行いました。NIOSH職業性ストレス調査票、WAI(Work Ability Index)、GHQ(精神健康調査票)、SDS(うつ性自己評価尺度)などが含まれていました。当初、項目数が140以上もあったため、従業員からは時間がかかりすぎるという不満もあり、徐々に改善し項目を減らしていきました。閑散期と繁忙期の違いを知るため、年に2回、チェックを行ったこともありました。『一番業務の忙しい時期にストレスがたまるだろう』という予測を立て、エアコンの生産が忙しい夏前の時期に実施しました。すると、繁忙期には“仕事量”がストレス反応に深く結びついているのに対し、閑散期は“職場の人間関係”がストレス反応に関係するという結果になりました。これら結果をもとに産業医科大学の専門スタッフが、各部門の代表者に対して報告会を実施しました。各部門に出向き、管理職、グループリーダー、一般の社員と3群に分けて、それぞれ結果報告や、どのような課題があったか等を各グループで出し合い、解決策を検討しました。それぞれの職場で考えていた課題や問題点は違っており、業務の認識の違い、仕事の状況の違い、何にストレスを感じるか等の違いやギャップを知った上で、課題を共有して取り組むという仕組みでした。」

「このような取り組みを10年行った中でさらなる課題も見えてきました。主に、『自分たちの部門の結果が悪かった場合、どうしたらいいのかわからない』などの声があり、“いきいきチェック”の結果を有効活用できていませんでした。」

「このような課題を解決するため、2011年“労働安全衛生マネジメントシステム”を導入し、“労働安全衛生方針”に『従業員の心と体の健康の保持増進のために、メンタルヘルス対策を積極的に推進する』と明文化しました。さらに、2015年には2020年に向けた目標“セーフティ&ヘルスプラン2020”を策定し、『メンタル不調発症の抑制とメンタルタフネス従業員を増やす』ことを掲げ、活動を進めることにしました。」(【図1】参照)

図1

「5ヵ年目標で掲げた項目の『1.“いきいきチェック”の結果を効果につなげる活動』の具体策としては、メンタルヘルスについて取り組みを活性化させるため、各職場に“メンタルヘルス委員”を任命しました。そこで一定レベルの知識を身につけてもらうため、メンタルヘルスマネジメント検定(Ⅱ種)の取得を目指し、産業医が中心となって定期的に勉強会を開催し資格を取得していただきました。また、労働組合の代表を含めたメンタルヘルス委員による“メンタルヘルス委員会”を、年4回定期開催しました。委員会では製作所のメンタルヘルスの現状や、ストレスチェックの内容についての検討を行いました。職場環境改善の取り組み内容・改善結果について共有した上で、1年後に取り組んだ結果を報告し合い、水平展開していく場として活性化させていきました。さらには、労働組合の執行委員も、職場分析の結果から、自職場の課題を把握し、職場内で出てきた意見を踏まえて管理職と話し合い、労使一体となって取り組みました。この取り組みを労働組合は年間方針の中に含め、進捗状況の確認を行っています。」

「また、この“いきいきチェック”の質問数が多かったことや、他社との比較ができないという意見があったので、全国データの平均値や他社の数値と比較できるよう、広く使用されている“職業性ストレス簡易調査票”を2010年より使用することにしました。さらに職場環境改善につながるよう“メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)”も盛り込み、新たな“いきいきチェック”として実施することにしました。」

「“メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)”は、従業員が『どのような職場を望んでいるのか』職場のニーズを要望率として把握し、適切な目標・活動について検討できるチェックツールです。産業医科大学の専門家にひき続き協力・支援を受けながら分析し、製作所の状況に合わせて、項目数を減らしたり、文言をより具体化させたりして、社員が答える際に困らないよう工夫しました。毎年、“いきいきチェック”の実施前に“メンタルヘルス委員会”で、『この文言ではわかりにくい』といった意見を集め、質問項目の内容や文言を再検討しています。」

「“メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)”の結果は、できるだけ10名くらいの小さなグループに分けて、調査を反映させるようにしています。対象数が多すぎると要望している内容が違うといったこともあるので、小集団ごとに要望率を示すことで、管理職もイメージしやすくなり、各職場のメンバーで共有することで、より具体的な議論を行うことができます。その上で、各職場で年間2項目以上の改善目標を設定して、職場改善につなげる活動を展開するように促しています。この活動は、悪かったことを改善するだけではなく、良いところを更に伸ばす工夫なども含み、なるべく取り組みやすいようにしました。毎年調査を実施することで、要望率にも注目が集まるようになり、『改善できたから要望率が下がった』というものから『改善したのに要望率は変わらないのはなぜだろう』といったことまで考えるようになり、メンタルヘルス委員も細かく数値を通じて職場状況を分析することができるようになりました。このような取り組みが、職場全体のストレス負荷の軽減や、社員の仕事へのモチベーション向上につながるのではないかと思っています。」

「実際の改善取り組み事例として、2例紹介します。1例目は、製造職場で『メンバーの意見がシステム作りに反映されていないと感じる』項目の要望率が77%ありました。そこで 聴取した課題点として、『上司に相談したことが何もされないまま放置されている』や『返答を待っているが忘れられている』などが挙げられました。そこで、改善内容として、作業者が気になること・やりにくい事といった声を模造紙に記入してもらい、活動板に貼り出しました。そこに、上司が、いつ、どのように行ったのか、改善内容や進捗状況、その結果を全員で共有化するようにしました。このように職場の課題と改善活動を見える化したことで、77%あった要望率は翌年には、44%まで減少しました。」(【図2】参照)

図2

「2例目は、事務職などの間接職場にて、『パソコン入力作業による負荷が高い』、『部内の他のグループとの連携』についての要望率が高く表れていました。『パソコン入力作業による負荷が高い』ことに関しては、課題点として『電話対応が多い』ことが挙げられていたので、『入電を減らすために業務システムの改修を行う』改善を行いました。また、『部内の他のグループとの連携』に関しては、現状を把握し、各グループの業務状況をシステム的に見える化しました。それぞれ改善に取り組んだことで、要望率は下がりましたが、それ以上の効果として、管理職が中心となって職場全員と対話しながら取り組んだ結果、『上司に部下の話を聴く姿勢を持ってほしい』の要望率が78%から19%へと大幅に減少するという効果も表れました。改善取り組みを積極的に行うことで他の項目も下がるということがよく分かりました。」

「前年度と比較して要望率が上がっていた項目などは、課題を深掘りし、『ここが問題だった』、『次年度はこうしていきたい』といった内容を各職場で検討し、 “メンタルヘルス委員会”で報告する職場が増えてきました。また、各部門がどのような改善取り組みをしているか誰でも見ることができるように、製作所のイントラネットに掲載しています。各職場の安全衛生委員会が月1回開催されおり、最近ではそこでの議題に、メンタルヘルス関連やストレスチェックの結果を受けた対策なども挙がるようになりました。さらに、ある職場では、職場環境改善の対策状況の見直しを1年後ではなく、半年ごとに行っている部門も出てきており、PDCAサイクルとしてもようやく回りだしてきた感じがします。」

事業場内のメンタルヘルスの現状やストレスチェックの内容、職場環境改善の取り組み内容やその改善結果について共有するため、各職場にメンタルヘルスに関する委員を任命すると共に、労働組合の委員も加わり労使協働で定期的に検討会を実施する。その中で、“メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)”の結果から小集団ごとに要望率を示すことで、それぞれの職場でより身近な改善策を検討し実行している。さらに、各職場の職場環境改善の取り組み内容を、事業場内のイントラネットに掲載することで、社員は誰でも確認し、参考にすることができる。

研修後、参加者が気づき学んだことを、職場に戻って上司や周囲の方と対話をする機会を設ける

続いて、メンタルヘルス教育および健康推進活動などの福利厚生について、4人からお話を伺った。

「5ヵ年目標で掲げた項目の『2.メンタルヘルス教育』の具体策としてまず“いきいきダイキン”が目指す心の健康について、新たにまとめました。従来のメンタルヘルス対策では身体の病気と同様に、予防に重点を置いた不調予防、早期発見、病気の治療、重症化予防、復帰支援に重点を置いていました。これからのメンタルヘルス対策では、自分らしく仕事もプライベートもいきいきと楽しめることを心の健康と考えました。その上で、働きがいの実感や幸福感の向上を目指す取り組みにしようと、研修内容を大きく見直し、積み上げていく研修を目指すことにしました。」

「若年のメンタルヘルス不調者が増えている傾向があったことから、まずセルフケア研修として新入社員には、食事・睡眠・運動・ストレス対処能力といった、社会人としての基礎生活力を土台としてしっかり身につけてもらうようにしました。加えて、お互いを尊重して円滑な関係を築くことができるコミュニケーション力や、困難を乗り越え成長できる力、やる気を高め何事にも挑戦できる力を高めていくことができるような内容の研修を実施しています。これらをきちんと積み上げていくことができるよう、3年目、5年目という節目に研修を行い、心の成長を支援しています。」

「また、管理職が一方的に叱るとか、いきなり訳も分からずほめられて部下が困惑してしまったといった声があったことから、ラインケア研修として効果的なほめ方・叱り方を学び、部下の些細な変化にも気づいて支援につなげられるようにしました。これら積み上げていく研修の考え方を、1枚の図にまとめました。(【図3】参照)図は、新入社員時からのメンタルヘルス教育で土台をしっかりさせ、ラインケアを通じて、太陽の光や水として取りこみ、セルフケアで自らの心を育て、若葉が成長していく様子を描いています。図にしたことで、各職場にもより分かりやすく伝わったと思います。」

図3

「メンタルヘルス研修に関しても、PDCAサイクルで回していくことを重視しています。以前は、受講者数や受講者の感想を研修の評価としていました。ただ最近のメンタルヘルス委員会では、研修についても具体的な研修内容の要望や、受講者である若手に対する職場の想いについて、活発な意見が交わされるようになりました。そこで、メンタルヘルス委員と協議しながら、研修計画を早めに立案することにしました。受講者には、事前に学びたいことなどを確認し、受講の動機づけを行った上で、受講してもらっています。研修後は、受講による満足感や理解度を確認すると共に、どういう気づきがあったのか等を本人に把握してもらい、自分の日常にどのように落としていけるかを書いてまとめることにしています。それをもとに上司と対話をし、コミュニケーションを通じて行動変化につなげていくように取り組んでいます。また、研修内容についても、受講した本人しかわからなかったものが、職場に戻って対話することで上司や周囲の社員とも共有できたりしています。そして、受講者の意見も取り入れ、次回の研修に向けて話し合い、次の研修計画につなげています。私たちはきっかけづくりの提供が重要だと考え、これからも上司と部下が対話できる環境を作っていこうと努力しています。」(【図4】参照)

図4

「その他、2010年からは、“元気ふぇすた”と名付けた製作所全体での運動会が復活しました。この活動は、会社というよりも“健康推進部会”が主体となって行っています。“健康推進部会”は安全衛生委員会の下部組織で、従業員の健康増進や健康意識の向上に、取り組みの企画、立案を行っている部会です。健康増進を前面に出しており、身体を動かすことをメインに従業員が集まる企画としています。さらに、毎年8月には納涼祭として近隣住民も参加した盆踊り大会を開催しています。社員食堂と協力して露店を出したり、打ち上げ花火を行ったりして、毎年9000人以上の来場者で賑わいます。このように社員同士の絆を深める活動も行っています。」

「まだまだ道半ばですが、地道に途切れず続けていくことが大事だと考えています。一旦、止めてしまうと停滞したり、維持できなくなったり、逆戻りしてしまったりということになるので、今後もこれらの活動は継続していきたいと思っています。」

メンタルヘルス研修は、定期的に行い、社員のキャリアアップに応じた内容で積み上げて心の成長を支援することが大切である。また、参加者が気づき学んだことを、職場に戻って上司や周囲の方と対話をする機会を設けることで、研修内容の共有および対話できる環境づくりにつながる。

【ポイント】

  • ①事業場内のメンタルヘルスの現状やストレスチェックの内容、職場環境改善の取り組み内容やその改善結果について共有するため、各職場にメンタルヘルスに関する委員を任命すると共に、労働組合の委員も加わり、労使協働で定期的に検討会を実施する。
  • ② “メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)”の結果から小集団ごとに要望率を示すことで、それぞれの職場でより身近な改善策を検討し実行につなげる。
  • ③メンタルヘルス研修では、参加者が気づき学んだことを、職場に戻って上司や周囲の方と対話をする機会を設けることで、研修内容の共有および対話できる環境づくりを目指す。

【取材協力】ダイキン工業株式会社
(2019年3月掲載)