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埼玉県教育局(埼玉県さいたま市)

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埼玉県教育局
(埼玉県さいたま市)

 埼玉県教育局が実施するストレスチェックでは、埼玉県下の県立の高校や中学校、特別支援学校の教職員の他、県庁の教育委員会・教育事務所や、図書館、美術館、博物館等の県立教育機関の職員も対象になっている。県庁内においても知事部局とは別に実施している。
 対象者は約15,000人で、教員が最も多く、事務職などの職員も含まれている。
 今回は、教育総務部福利課健康づくり・メンタルヘルス担当保健師の岸下洸一朗さん、主査の佐藤嘉章さん、主任の岩城侑子さんの3人からお話を伺った。

毎年、各職場の代表を集め実施前説明会を行うことで、その後の円滑な実施運営と高い受検率につながる

最初に、ストレスチェック実施の全体の流れと状況について、お話を伺った。

「ストレスチェック実施の年間スケジュールは、まず5月に各職場の管理職と衛生管理者を集めて、事前に実施説明会を行います。この説明会では実施の趣旨と全体スケジュールなどをお伝えするのですが、説明会後のアンケートでは、回答者の98%が内容の理解をされたとのことで、その後の円滑な実施運営につながっていると思われます。そして、6月から7月にかけてストレスチェックを質問紙で実施します。8月から9月に個人結果を通知、その後、高ストレス者に対する医師による面接指導を11月から12月にかけて行いました。また、職場ごとの集団分析結果は、10月頃に通知します。そして、各職場の管理職と衛生管理者を集めた事後説明会を10月から11月に行います。そこで、集団分析結果の読み方の説明と職場環境改善活動に関するワークを実施しています。その後、翌年1月頃からは、いくつかの学校などを選定して福利課の方から職場訪問を行い、“集団分析結果を活用した職場環境改善の取り組み”や、“働きやすい職場環境づくりの理念”、“職場での実践・工夫している点”などの聞き取りを行った上で、好事例集にまとめています。これらの活動は初年度から毎年実施し、今年で3年目になります。」

「私たちの特徴としては、ストレスチェックの受検率が非常に高いことが挙げられます。受検対象者が15,000人もいる中で、初年度が99.3%、2年目が99.7%、3年目が99.9%となっています。」

「受検者数に対する高ストレス者の割合は、概ね10%前後で推移しています。うち約2割が医師による面接指導を受けました。受検者数に対する医師による面接指導の受検率は、2.0%(2年目)で、全国平均の0.5%“平成29年心理的な負担の程度を把握するための検査実施状況”(厚生労働省平成30年10月)よりも高い割合で医師面接指導を受けてくれたことになります。各学校単位で産業医を選任しており、高ストレス者への面接指導は、産業医(健康管理医)が行います。面接指導の未受検者には何度か勧奨もしています。同僚に知られないような配慮から、保健師から面接指導未受検者の個人宅に勧奨の通知を郵送して伝えています。」

毎年、ストレスチェックを実施する前に、各職場の代表者を集めて事前実施説明会を行うことで、その後の円滑な実施運営と高い受検率につながっている。また、医師による面接指導を受ける割合も高い。面接指導対象者に対し職場の同僚に知られることがないよう、保健師から個人宅に勧奨の通知を郵送するなど、数々の工夫が功を奏しているものと思われる。

健康管理部門が各職場を直接訪問し巡回することで、その職場で自然と行われている素晴らしい取り組みを見つけ、好事例集としてまとめる

続いて、職場訪問などにより情報収集した職場環境改善活動の事例について、お話を伺った。

「事後説明会の“ストレスチェック集団分析結果を活用した職場環境改善のための研修会”では、最初に保健師から埼玉県教育局全体の状況報告を行っています。ストレスチェックの受検率などと合わせて、職場環境改善の活動状況も報告しています。研修会の際にアンケート調査を実施しており、2年目の段階の調査では、多くの所属で1年目の集団分析結果をもとに職場環境改善に取り組んでいたことが分かりました。『みなさん職場環境改善に取り組んでいますよ』ということを示した方が刺激になるとの思いから、取組状況についてもフィードバックしました。」

「職場環境改善は、管理職からトップダウンで進めていくだけではなく、皆で話し合って取り組むことが大切です。各学校の衛生委員会が中心になって活動していく形をおすすめしています。また、衛生委員会を設置していない図書館などの小規模の事業場は所属長だけでなく、総務担当や若手職員、研修の参加者などにより、自分たちの部署で取り組んでもらいたいと考えています。希望する職場には外部講師による参加型職場環境改善のグループワークを行うなど、毎年様々な方法で行っています。」

「翌年1月頃から行う職場訪問では、アンケートや衛生委員会の記録を確認した上で、福利課が訪問して取材を行っています。そこでまとめた事例集が“ストレスチェックの集団分析結果を活用した職場環境改善事例集~職場環境改善の好事例~”です。 」

「事例集の中では、項目ごとに写真も入れて分かりやすく事例を紹介しています。ある特別支援学校の事例では、ラベルを掲示し、管理責任の明確化を図ると共に、棚の容量内で整理するようルール化した取り組みを写真付きで示しました。【図1】」

「最近職場訪問した学校では、整理整頓に着手することができていないという課題がありました。初めて配属された教職員には、最初は違和感があったようですが、結局そのままになっていたとのことでした。そこで、その学校では、事例集の“整理整頓”の項目を参考にし、整理収納アドバイザーの資格を持っていた教務主任が中心となって整理整頓の基準を示すことにしました。目に見えて景色が変わっていくと、教職員たちにも職場の雰囲気が明るくなっていくことに気づき、整理整頓に取り組むメリットを実感できたようです。」

「ある高校では、印刷室に段ボールがたまりやすく、かつ片付けられてないという状況が続いていました。そこで、衛生管理者である養護教諭が、『一日一善』、『段ボールを縛ってくれる心優しいあなたは、今日は幸せな1日になるでしょう』と書いた回収箱を設置することで、整理整頓を促すことにつながりました。強制的に行わせるというのではなく、教職員自ら行いたい気持ちに持っていくことが大事だと考えさせられました。」

「別の高校では、大規模校であるため教職員が多く、どこで誰が何をしているのか分からないといった課題がありました。そこで、週1回、“職員通信”を発行し、それを通じて、各先生の特徴や状況、考え方など相互の理解が進み、コミュニケーションのきっかけづくりとなりました。」

「特別支援学校への訪問では、職員室の壁に“みんなで使いたい【あったか言葉】、使いたくない【ひえひえ言葉】”という貼り紙がありました。【あったか言葉】には、『ありがとうございます』、『協力してやりましょう!』などの言葉が並んでいます。【ひえひえ言葉】には、『なにしてるんですか!』、『1人でなんとかしてください』などの言葉が並んでいます。先生方は、こういったわかりやすい掲示物を作ることがとても上手です。【図2】」

「職場訪問を多くしていると、職場環境改善に取り組んでいるけれどもうまくいっていないということもありますし、私たちの方から課題に気づくこともあります。例えば、最初に教職員全員からアンケートを取る学校が多いのですが、アンケートの結果を職場環境改善活動にうまく活かせなかったことがありました。どのようにして意見を集めるのか、集めた意見をどう活かしていくか、課題を踏まえて研修等を企画していきたいと考えています。」

「事例集を各学校に配布していても、現場の教職員はその内容どころか存在も知らないということもありました。そこで、改めて関係各所に許可を取り、事例集をホームページで公開することにしました。公開後は県内の学校だけではなく、他県の教育委員会や市からの問い合わせも多くありました。これからも、多くの学校で、事例集の認知度を高めていくと共に、事例集を活用して改善された事例を追加していくよう、働きかけていきたいと思っています。」

「毎年、福利課ではメンタルヘルスに関するリーフレットを作成しています。今年は、事例集の活用も兼ねて、“みんなでつくろう!「チーム職場」~職場の長所を伸ばす職場環境改善活動~”と称したリーフレットを作成しました。作成の際には、アクションチェックリストやこころの耳に掲載されている各社の事例を参考にしました。各学校でどのように話し合うと良いかをグループワークの4つのステップに沿って紹介しました。 “ステップ1:職場の状況について共有しよう!”では、最初、楽しい雰囲気で話し合いができるように、アイスブレイク的なことも考え、『今の職場の状況を漢字一文字で表現すると?』などを紹介しました。こちらは、“職場のメンタルヘルス対策の取組事例(カルビーポテト株式会社)”を参考に取り入れました。」

「先述の通り、ストレスチェックの受検率が高いことが私たちの特徴として挙げられます。実施前に福利課の担当職員が丁寧に説明して、各学校に通知していることも奏功しているかもしれません。また、紙方式で実施していますので、各学校で配布と回収を行い、受検勧奨も丁寧に行っていることも大きいと思います。集団分析結果は受検率が高い方が、その後の職場環境改善活動にも反映しやすくなるので、皆さんが働きやすい職場を作っていくために、この高い受検率はとても良いことだと考えています。ストレスチェックの個人結果だけではなく、集団分析結果による職場環境改善活動を実施し、事例集を通じて広く周知していくことで、ストレスチェックの意義が徐々に広がってきている感じがします。今後も教職員の皆さんに安心して受けてもらえる環境にして、実施していきたいと思います。」

ストレスチェックの受検率が高いことは、集団分析を行う上で重要である。さらに、その結果を踏まえた職場環境改善活動の実践により、教職員にもストレスチェックの意義が伝わり、受検率のさらなる向上につながっていると思われる。また、各職場を横断的に知っている健康管理部門が職場を訪問することで、その職場の人たちが当たり前だと思っている好事例を見出すこともできる。こうして出来上がった好事例集をインターネット上で一般にも公開することで、同業種など多くの企業・団体で参考になっている。

【ポイント】

  • ①毎年、ストレスチェックを実施する前に、各職場の管理職等を集めて事前実施説明会を行うことで、その後の円滑な実施運営と高い受検率につながっている。
  • ②ストレスチェックの受検率が高いことは、集団分析結果の活用という点で重要である。さらに、集団分析結果を踏まえた職場環境改善活動を実践することで、教職員にもストレスチェックの意義が伝わり、受検率の向上とうまく循環している。
  • ③各職場を横断的に知っている健康管理部門が職場を訪問することで、その職場の人たちが当たり前だと思っている好事例を見出すことができる。

【取材協力】埼玉県教育局
(2019年3月掲載)