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第12回:積水化学工業株式会社(大阪府大阪市)

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積水化学工業株式会社
(大阪府大阪市)

 積水化学グループは、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックスの3つのカンパニー(事業体)に、コーポレート部門を加えた体制で、それぞれの分野において多様な事業を展開している。
 当社グループは、1947年に設立された積水化学工業株式会社を親会社として関係会社(約200社)、従業員数約26,000人で構成されている(2018年4月現在)。
 今回は、人事部 厚生・健康支援グループ 健康推進室、室長の荒木郁乃さん、新宮圧子さん、岡村裕之さんの3人からお話を伺った。

集団分析結果の正しい読み方・扱い方を説明し、ポジティブに活用してもらう

最初に、ストレスチェック実施における現在の体制と、2016年の職場環境改善の取り組みについて三人からお話を伺った。

「以前は各事業場や健康保険組合によるそれぞれ単体での活動が中心でした。2015年4月に人事部の中に“厚生・健康支援グループ”を立ち上げ、本社を中心に当社グループ全体を管轄することになりました。合わせて、健康保険組合とコラボヘルスを行う上で、各事業場に健康管理責任者・担当者を配置し、本社で取りまとめることにしました。さらに、人事部と産業保健専門職とともに健康推進を実施するという意味を込めて、2017年4月に“健康推進室”を作りました。この時、統括産業医と室長兼統括保健師である荒木さんが加わりました。健康推進室は、各事業場の健康管理責任者・担当者を通じて社員のフィジカル・メンタル両面の健康を推進する部署になります。」

「ストレスチェックの実施に関しては、健康保険組合を実施窓口として、当社グループ全体で統一実施しています。質問票は“職業性ストレス簡易調査票(57項目)”です。当社グループ内の窓口は、当人事部 厚生・健康支援グループ健康推進室(以下、健康推進室)が担い、グループ全体の約6割にあたる50人未満の事業場でも実施対象としました。ストレスチェックの目的を考えると、50人未満の事業場でも実施する必要があるとの思いからです。さらに、各社の状況判断にもよりますが、基本的には派遣社員に対しても実施しています。」

「当社グループでは、ストレスチェックの目的を『①従業員個々人のストレスへの気づきを促し、メンタル不調者の発生を未然に防ぐこと』、『②各自のストレス値を部署ごとに集計・分析(組織分析)し、職場環境改善につなげ、働きやすい職場づくりを目指すこと』と示しており、職場環境改善活動も視野に入れています。」

「ストレスチェック制度が義務化され、当社グループ全体としては、2016年に初めて行いました。高ストレス者への医師による面接指導は、産業医が選任されている事業場では、基本的には産業医が対応しています。また、産業医が選任されていない事業場では、積水グループ(当社含む4社)と健康保険組合で一緒に作った“セキスイ・ヘルスサポート・ネットワーク”に加盟している全国の登録産業医に依頼したり、個々の会社や事業場の近隣の医師に依頼したりしています。」

「ストレスチェック実施後、特に集団分析結果については、分からない部分が多かったため、各事業場の健康管理責任者・担当者に任意に集まってもらい、“読み方ワークショップ”と称して人事部と外部講師の共同による研修会を行いました。内容は、まずストレスチェック実施の目的を改めて伝えた上で、集団分析結果の正しいデータの見方と扱い方を伝えました。集団分析結果が上司の通信簿や責任問題になるような誤った使い方を防ぐ目的がありました。また、データを分析するとなると、指導的立場にある人はどうしてもネガティブな面に目を向けて原因追及しようという動きが懸念されたので、ポジティブに活用してもらいたいという思いもありました。健康管理責任者・担当者の多くは、人事・総務・安全部員などが担当しています。そのため、これらの健康管理責任者・担当者が事業場で集団分析や職場環境改善を展開するうえではキーパーソンとなるため、基本からしっかりと分かるように説明しました。現状認識した上で、改善したい点について話し合ってもらい、それぞれの事業場で持ち帰って実践してもらうことにしました。その後、実際に職場環境改善を行いたいなど意欲のある部門に対しては、“職場環境改善モデル事業場”として人事部が支援し実施しました。」

「2016年度は、4事業場を職場環境改善モデル事業場として選定し、外部講師と一緒に取り組みました。選定の際、できるだけ効果が現れるように、かついろいろな事例をつくることを意識しました。そして、モデル事業場の取り組みを、今後幅広く展開していくため、それぞれの事業場の特徴を活かし、“①管理監督者主導型”、“②ライン長主導型”、“③従業員参加型”の3タイプ別々の方法、異なる外部講師で実施しました。実際に行ってみると、方法の違いはあれど、よりよい職場をめざすという意味ではどれもかわらないと思いました。」

「やはり担当者が積極的で社員の意欲が高い事業場は、良い活動になりました。ただ、担当者が積極的でも社員の意欲が低く、『なぜこの活動をしなければならないのか』といった意義が伝わっていない事業場では、活動にギャップが見られました。この活動に対しての社員のモチベーションをいかに上げていくかなどの課題を感じました。」

「また、事業場が東京と大阪で分かれており、部門長が常駐していない場合、連携がなかなか取れないことがあります。そういった中での人間関係の問題の改善は難しいものです。さらに、活動内容が現在の業務にプラスすることもありますので、本当にこの職場環境改善活動が業務の効率化や、生産性の向上につながるのかと疑問を感じた社員もいました。感触が掴めないまま活動を進めたことで、少し負荷を感じられた傾向があり、継続的に続けていくことが難しいのではないか、といった声もありました。」

「参加型グループワークによる職場環境改善活動では、『エアコンが直接当たって寒いので席替えしてほしい』や、『事務所のドアをいつも開けっ放しにする人がいるのできちんと閉めてほしい』といった意見が出てきました。自分たちで簡単にできる小さなことから改善していくだけでも、社員個々人の働きがいが変わることを実感しました。職場環境を改善するために話す場を作り、継続して行っていくことで、さらに良い職場環境づくりにつながっていくのではないかと思っています。」

「事務職の多いA事業場では、職場環境改善活動の中で、照度や温湿度、作業姿勢、パソコンとの距離などに関してVDT作業調査を行いました。中央労働災害防止協会の専門家に調査してもらうと共に、関連する研修や予防体操などを行いました。実際に調査をすると、事務所内にも暑い場所や寒い場所の温度差があったり、日差しが明るい時間帯にブラインドが上がったままだったり、日常的に使用している机といすの高さを測ってみると、腰に負担がかかりやすいなど、様々なことが分かりました。」

「100人ぐらいのB工場は、集団分析結果からコミュニケーション不足が見られたので、促進するために、“挨拶プラスワン”という活動を始めることにしました。まず上司の方から『おはようございます』と、はっきり皆に言うことです。その上で、もう一つ、挨拶の他に『これちょっとどう?』と声をかけることを継続して行うことにしました。実践していくことで、少しずつ現場の雰囲気が良くなっていったという感想がありました。“挨拶プラスワン”活動は、職場環境改善活動のライン長主導型グループワークの中で、いろいろな意見が出てきたところに、ファシリテーターである外部講師からヒントやアドバイスをもらった上で、皆で考えました。」

集団分析結果が上司の責任問題になったりネガティブな部分にばかり目を向けたりしないためにも、正しい読み方、扱い方を説明し、ポジティブに活用してもらうようにすることが大切である。また、参加型グループワークにおける改善策の検討にあたっては、ファシリテーターとなる外部講師から、ヒントやアドバイスを受けることによって、さらなるアイデアにつながる。

前年の自社のモデル事業場の事例を紹介することで身近に感じてもらう

続いて2017年の職場環境改善の取り組みと今後について、お話を伺った。

「2017年の“読み方ワークショップ”では、新設した健康推進室が中心となり進め、2016年に実施した職場環境改善モデル事業場の活動全てを紹介しました。好事例だけにしぼらず、参加者が実践は難しいと感じた事例も紹介しました。また、2017年は、基礎編と応用編に分けると共に、どちらかには、健康管理責任者・担当者が参加するように必修化しました。前年のワークショップに参加された方は応用編を、参加されていない方は、基礎から学ぶ基礎編を紹介しました。」

「“読み方ワークショップ”が終わった後に、アンケートで健康推進室と一緒に職場環境改善活動を実際にやってみたいかという質問を入れました。2年目でしたので、自分たちで実施する部門や今回は見送るという部門もありました。その中で10前後の部門から手が挙がりました。さらに、今回は少しリスクの高い部門にも支援したいとの考えから、手を挙げた1事業場、昨年から継続実施している2事業場、少しリスクの高い2事業場で実施することにしました。」

「C事業場では、管理職層を対象に、1回目はラインによるケア全般の研修を行い、2回目は職場環境改善活動を実施するにあたってどのように行うかといった研修、そして3回目は、その事業場の中からモデル職場を選定して、実際に具体的な職場環境改善活動を一緒に行うといった流れで、大きく3回に分けて実施しています。まだ途中ですが、これらの効果を1年後のストレスチェックの集団分析結果で検証すると、時間がかかってしまいますので、職場環境改善活動の前後にアンケートをとって効果を検証しようと考えています。」

「D事業場では、C事業場同様の取り組みの他、集団分析結果から身体的な疲労度が高かったことを踏まえて、職場環境改善の一環として、統括産業医が職場巡視に行きました。ストレスチェックの結果をもとに、実際に工場の様子や作業環境、作業姿勢などを観察すると、改善が望ましい点も浮かび上がりました。生産現場などでは、作業環境から生じるストレスにも着目することも必要だと思いました。」

「これまでは、職場環境改善活動の主となる担当者は健康管理責任者・担当者だったのですが、今後は、もう少し現場に近い役職者に担当を任せた方が、より機動的で自立的な活動ができると共に、会社全体で根付いていくことにもつながるのではないかと考えています。最終的に、時間はかかるかもしれませんが、個々の事業場にて自分たちで集団分析結果を見て、職場環境改善をしていけるところまで持っていくことを目指しています。」

前年の自社のモデル事業場の職場環境改善取り組み事例を紹介することで、社員が自分たちでもできることだと身近に感じてもらうことが大切である。また、職場環境改善の一環として職場巡視を行い、作業環境・作業姿勢などから生じるストレスにも着目することも必要である。

【ポイント】

  • ①集団分析結果の正しい読み方・扱い方を説明し、ポジティブに活用してもらうようにする。
  • ②グループワークから様々な案が出てくる中で、自分たちで簡単にできる小さな改善を積み重ねていくことが大切である。
  • ③前年の社内のモデル事業場の事例を紹介することで、自社でも職場環境改善活動を実践していることを理解してもらい、身近に感じてもらう。

【取材協力】積水化学工業株式会社
(2018年8月掲載)