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株式会社アキュラホーム(東京都新宿区)

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株式会社アキュラホーム
(東京都新宿区)

 株式会社アキュラホームは、1978年創業の住宅メーカーである。木造注文住宅の建設・販売などの住宅事業を中心に、工務店支援事業、研究開発事業などを行っている。
 従業員数は、1230人(2018年4月現在)。本社は約120人。全国に12支店とグループ会社4社、そしてその配下に86の営業所があり、お客様の対応を行っている。
 今回は、総務人事部人事課の篠原亜梨沙さん、田中愛美さん、外部委託機関としてストレスチェック業務を請け負った精神保健福祉士の重山三香子さんの3人からお話を伺った。

外部委託機関に、ストレスチェックを委託して集団分析をする場合、事前に社内担当者が各部門の体制・状況などを説明する

最初に、メンタルヘルス対策の体制、およびこれまでの経緯と状況について、篠原さん、田中さんのお二人からお話を伺った。

「当社は営業部門、設計部門、工務部門、管理部門があります。営業部門は、総合住宅展示場などで住宅販売に携わっています。設計部門はお客様との打合せも多く、座って行う業務が中心です。工務部門は、主に現場監督として工程管理などをしており、業務時間の多くを建築現場で過ごしています。こちら新宿本社には販売促進、商品開発、管理業務といった部門に加えて、全国の工務店を支援するビルダー事業部があります。」

「昨年は、私(篠原さん)も田中さんも健康管理・安全衛生関連の業務を担当したばかりでしたので、手探り状態の中二人で、『まずは、できることからやってみよう』ということで進めてきました。」

「少し振り返りますと、ストレスチェック制度が始まる前の2015年に、前任者がストレスチェック外部委託機関の重山さんに社員のメンタルヘルスについて相談したのがきっかけで、東京産業保健総合支援センターがインターネット上にて無料で提供している“職場のメンタルヘルス取組状況評価表(チェックリスト)”を、まず受けてみるようにアドバイスをいただきました。あくまでも社内担当者の主観に基づくチェックなのですが、当社はコミュニケーション領域が良く、中でも“上司の支援”などが高数値でした。重山さんからも『この結果は、日々快適に仕事ができている環境があるのではないか、それは会社としての強みだ』と評価していただきました。当時は、職場環境を改善するためのメンタルヘルス対策にまで力を入れられていませんでしたので、この時が本格的にメンタルヘルスに関して取り組み始めるきっかけになったのだと思います。健康診断については、2012年から外部委託機関に健康診断の予約代行サービスを導入しており、昨年の健康診断の受診率は、100%でした。社員の健康管理という点では、健康診断の受診が、すべての出発点だと思います。今後は、健康診断だけでなく、ストレスチェックや、その他の施策についても整備していきたいと思っております。」

「当社は産業医が1名います。法令で義務付けられているのは本社のみですが、他の拠点でも、面談を望む社員がいる場合は、本社での面談を実施しています。月に一度の産業医の来社日には、安全衛生委員会に参加してもらうとともに、健康管理について社員が産業医へ直接相談できる仕組みを取り入れています。また、外部の相談窓口も設置しています。利用数がまだまだ少ないのは、今後の課題です。」

次に、ストレスチェックの実施状況と集団分析結果について、篠原さんと外部委託機関の重山さんのお二人からお話を伺った。

篠原さん
「ストレスチェックは従業員の健康を管理する上でとても重要だと思い、健康診断と同様外部委託機関のサービスを利用することにしました。実施1年目の2016年は、本社の社員を対象に107人が受検しました。2年目からは、本社だけでなく50人未満の拠点も含めて全社で実施することを推進しました。これは社員全員が同じサービスを受けられるようにしたいという思いから実施したもので、2年目の受検率は83%でした。」

「2017年は、ストレスチェックを8月に実施し、9~11月に高ストレス者への医師による面接実施、そして12月に安全衛生委員会で集団分析結果を含めた総括の報告を行いました。 ストレスチェック実施後、集団分析を行った結果から様々な課題が見えてきました。今回は30代に高ストレス者が多かったので、仕事量が多いなどの特徴を確認しあった上で、さらに深掘りしてもらい、最終的に安全衛生委員会で重山さんから説明していただきました。」

重山さん
「部門別の結果の特徴は、工務部門の受検率が低く、また、設計部門は、20代以外のすべての年代で、“仕事のコントロール度”が低い結果が出ていました。」

篠原さん
「工務部門は、業務時間のほとんどを建築現場で過ごすため、受検する時間の確保が難しかったことや、実施した8月は当社の上期決算月の繁忙期だったことも受検率に影響しているかもしれません。設計部門はお客様からの変更依頼が多くなるせいか、自分自身で業務の調整がしにくいなど、私たちが想像していた課題と集団分析結果がほぼ一致していました。働き盛りの30代の方が多い部門ですので、この世代の環境改善が課題だと考えています。」

重山さん
「営業部門に関しては、コミュニケーションがとても良いという分析結果が出ています。」

篠原さん
「営業部門は仕事量も多く、ストレス負荷が高い職種で大変なイメージが強かったのですが、分析結果から上司とのコミュニケーションがしっかりとれていることなど、想像とは違い良い結果を得ることができました。一つの営業所において、営業社員は4・5人ほどと人数は少なく、その中で、毎日一緒に過ごすことになるので家族のような感じになります。だからこそ人との関係がうまくいってないと、良いパフォーマンスが発揮できないと思います。そういった点でも、コミュニケーションの領域が高い数値でよかったと感じました。」

「細かく部署別の“仕事のコントロール度”を見てみると、最近できた新しい営業部門のコントロール度がとても低い傾向が出ました。会社としても精鋭を集め、当社の将来を担うことを大いに期待されている部門ではありますが、これまでとは異なるお客様の層をターゲットとするため、積み重ねてきた営業手法だけでなく、新たな手法で対応する必要があると思います。この部門には、今後も継続して支援する必要があると感じました。」

重山さん
「“上司・同僚の支援”について年代別にまとめたグラフを見ると、全体的な特徴として20代は営業部門を筆頭に、どの部署においても支援を受けていると実感している傾向です。ただ、“仕事の量的負担”については、30代が高い傾向にあり、後輩の20代に仕事をうまく割り振れていないことを現わしているのではないかと、コメントしました。」

篠原さん
「当社の新入社員や若手社員を大切にする意識の表れとも言えますが、その分、30代に少ししわ寄せが来ているのかもしれません。」

重山さん
「他社の集団分析結果からも、20代は“仕事の量―コントロール”“上司・同僚の支援”の数値が良好で、ストレスが少ない環境だと感じているようです。一方で、その上の30代に高ストレス者が多いなども見受けられ、平成世代の人材育成、キャリア形成の観点からも、世代間のギャップを解消できるような職場環境づくりが、今後の課題だと思います。」

外部委託機関に、ストレスチェックを委託して実施する場合、集団結果に関しては、社内担当者が職種・年齢構成や各部門の体制・状況などを事前に説明した上で、分析することが重要である。また、年代や部署の特性に合わせた個別のケアおよび職場環境改善を行うことが大切である。

新入社員を中心とした20代と、中堅社員となった30代の特性やストレス状況などを考慮した上で、個別のケアおよび職場環境改善を行う

最後に、より良い職場環境にしていくための様々な施策について、篠原さんと田中さんのお二人からお話を伺った。

「新入社員に対しては、定期的に集合研修を行っています。集合研修で学んだことを、実務で活かせたかどうかなど、定期的に振り返る機会をつくっています。同期がいるとはいえ、勤務地が分散してしまうことで同じ職場で働くことは少なく、“ひとりぼっち”になりがちですが、集合研修で一堂に会して話し合ったり、研修後に懇親会の機会をつくることも一つのメンタルケアの対応になっていると思います。そこに、総務人事部も参加して表情などを見ながら新入社員の状況を確認しています。」

「また、新入社員と年齢の近い先輩社員一人をペアとして、仕事上の困った時だけでなくいつでも相談できる“メンター制度”を取り入れています。日頃から話し相手となる先輩がいることで、メンタル面での支えになっているようです。メンターが、仕事上の悩みや不安があるのではないかと気になる新入社員がいれば、新入社員の職場で対応したり、本社人事部門で相談対応したりすることもあります。」

「他には、全社員を対象に“キャリアアピールシート”(現行:人財開発シート)というものを実施しています。このシートの質問項目には、『今後のキャリアをどう考えていますか』、『3年後、5年後の自分の姿をどのように考えていますか』、『異動や職種転換を希望しますか、しませんか』といったキャリア形成に関する質問の他、『最近の健康状態はどうですか』と健康面に関することも質問しています。また『困っている事や人事部門に伝えたい事がありますか』、『人事部門と面談したいことがありますか』という項目も含めています。このシートは、直属の上司を介さず人事部門と担当役員だけしか見ないもので、全社員が実態を記入しやすい工夫をしています。もちろん人事評価制度などとは連動していません。」

「昨年は、『健康状態が悪い』と回答した社員に対して、直ちに状況を確認しました。また、直属の上司には言いにくいということから、本社の人事部門で面談を行うこともありました。これまでは、『特にありません』という回答が多かったのですが、徐々にこの制度が浸透し、最近はコメントが多く書かれていて、実際に面談数も多くなりました。キャリア形成という点では、自分の今後のことや、プライベートのことなどを考え、言葉にするきっかけになっていると思います。この“キャリアアピールシート”の取り組みによって、人事部門は社員がどんなことでも相談できる存在にもなれたら、と思っています。」

「今年は、これまでの本社の人事部門だけが知るシートとは別に、上司と部下も一緒に見て考える、“人財開発シート”というものを実施しました。このシートは、これからのキャリア形成や目標を、社員が上司と共有することで、社員自身が考える将来像と、上司が考えている将来像とを調整する役割もあります。」

「住宅建設業は、天候に左右されることもありますし、時期によっては労働時間が多くなる部門もあります。その点では、安全衛生に関する整備を、今後さらに進める必要があります。私(篠原さん)自身は、入社してからずっと営業をしておりましたので、お恥ずかしながら労働時間や衛生管理については無知な部分もありました。そんな中、総務人事部人事課で衛生管理などを担当し、田中さんと一緒に様々な考え方や社内の文化、あるべき姿を理解してきました。理想論だけではなく、現場の話を聴いたり、“キャリアアピールシート”を確認したりする中で、社員がもつ本当の思いや考えを知ることができます。それらを踏まえて、『時代の流れに合わせて、このようにしないといけない』、『当社の風土を考えると、このように変えた方が良い』と、意見を交わしながら施策を考えています。」

「また、当社がより良い人材を集め定着させるためには、どうすればよいか、また従業員が幸せであるためにはどんな取り組みが必要かも考えています。その1つとして、9連休を取ることができる“長期休暇制度”を導入しました。この制度は、同業他社にはない制度だと思います。 “長期休暇制度”を利用してOFFの感覚を持ってもらうことが大事だと考えています。メリハリをつけることで、ストレスの度合いも違います。 “長期休暇制度”は、メリハリのある働き方、休暇の充実、充実した人生の実現を目的としており、仕事へのモチベーションアップや、相互補完の意識による業務効率のアップも見込めます。9連休までは取れていない方もいますが、『連休を取る』、『まず休みを取る』、『ONとOFFのメリハリをつける』という意識は、以前より浸透してきていると思います。休んで、リフレッシュして、また仕事を頑張る!という風土の会社にしていきたいです。」

「当社の社長は、『幸せな住まいづくりをお客様に提供していくには、まずは従業員が幸せでなければならない』と常日頃発言しており、従業員を大事にするという考えを強く持っています。これまで以上に社員間のコミュニケーションを充実させ、周りからも『アキュラホームの社員はすばらしいね』と言われるような社員を育てたい、そういう社員のいる会社でありたい、という社長の思いがあります。様々な仕組みづくりは、まだ道半ばですので、今後もよりよい環境・社員の幸せのために努力していきたいです。」

人事部門によるアンケートと定期面談を行うことで、早い段階で社員の状況変化やキャリア形成の不安について話し合うことができる。また、休暇が取りづらい業種でも「長期休暇制度」を導入することで、仕事のメリハリをつけられるため、良い仕事を生み出す職場環境づくりにつながると思われる。

【ポイント】

  • ①外部委託機関に、ストレスチェックを委託して実施および集団分析をする場合、事前に社内担当者が各部門の体制・状況などを説明する。
  • ②年代や部署の特性に合わせた個別のケアおよび職場環境改善を行うことが大切である。
  • ③“キャリアアピールシート”を利用して、人事部門が直接社員の本当の思いを知った上で、キャリア形成を支援し、メンタルヘルス対策につながる。
  • ④休暇が取りづらい業種でも「長期休暇制度」の導入することで、仕事のメリハリをつけられるため、良い仕事を生み出す職場環境づくりにつながると思われる。

【取材協力】株式会社アキュラホーム
(2018年8月掲載)