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株式会社マルハニチロ北日本(北海道釧路市)

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株式会社マルハニチロ北日本
(北海道釧路市)

 株式会社マルハニチロ北日本は、北海道・青森地区の加工食品の生産を主体とするマルハニチログループ企業5社が吸収分割・合併し、2010年4月に統合。缶詰等の加工食品や冷凍食品の製造を主に行っており、釧路工場では、目前の港より水揚げされた鮭マス類、サンマ、タラなどの新鮮な原料を使った缶詰を製造している。
 本社および釧路工場は、1952年にニチロの工場として設立。現在は、北海道に3工場、青森に1工場ある。
 従業員数は全体で約400名弱。本社は約20名、本社と併設する釧路工場は約140名である。
 今回は、管理部部長の入船豊さんからお話を伺った。

社員からの要望に関しては、「すぐできること」など4段階に分類した上で対応策を管理職で検討し、検討結果は社員にフィードバックする

メンタルヘルス不調の未然防止に向けた職場のメンタルヘルス対策活動および職場環境改善の取り組みに関してお話を伺った。

「ストレスチェックは、義務化にもとづき2016年に初めて実施しました。その際に、チェックだけではなく、医師との面談や心理職との対面・電話相談もできる外部EAP機関のサービスを利用することにしました。ストレスチェックは、毎年、健康診断の時期に合わせて6~7月頃に実施しています。ストレスチェック実施後は、メンタルヘルスの研修を毎年内容を変えて行っています。1年目はメンタルヘルスの基本的な内容について説明いたしました。2年目以降はコミュニケーションに焦点をあて、ハラスメント対策を含めた研修を行っています。事例を交えながら、ハラスメントを受けた方がどのように感じるか、様々な言動がハラスメントにつながることもあるので、普段から気をつけてもらうことを目的に実施しています。メンタルヘルス研修の内容については、私が普段から工場現場などでの業務を見ていて、教育が必要だと気づいた点をメモして、工場の操業閑散期である1~3月に講師を招いて約90分間、各工場で実施しています。」

「職場環境改善の取り組みとしては、2015年からマルハニチログループ全体で、“快適職場調査(ソフト面)”と“管理職による面談”を毎年実施しています。当グループの関連工場で、2013年末から2014年にかけて農薬混入事件が起こりました。その要因の一つとして、当時の社員の会社に対する不満があったと思います。そのことを踏まえ、社員の不満やストレスを早い段階で解消していくため、社員からの意見の集約を行うことができる仕組みづくりとして、事件の翌年から全社で毎年実施しています。これは、ストレスチェックが法制化される前から取り組んでいました。」

「“快適職場調査(ソフト面)”は、心理面における職場の現状を的確に把握し、その上で問題点を発見し、具体的な職場全体の取り組みに役立てるための調査票です。“①キャリア形成・人材育成”、“②人間関係”、“③仕事の裁量性”、“④処遇”、“⑤社会とのつながり”、“⑥休暇・福利厚生”、“⑦労働負荷”の7つの領域に関して、それぞれ5問ずつ、合計35問のチェックシートに社員が記入します。この結果を部門ごとに集計することで、それぞれ7つの領域の評価点が出てきますので、管理職にはまず傾向をつかんでもらいます。管理職と従業員の意識の違いを比較・検討することにより、働きやすい職場づくりに向けた課題を把握することが主な目的でもあります。当社では1~3月に実施しています。」

「その後、集計結果を踏まえて管理職が社員と面談します。面談時間は、一人当たり15分から30分程度です。普段仕事の中で改善してほしいことはないかを聞き取り、職場環境を改善していこうと話し合っています。当初は職場への要望や不満も多く出てきていましたが、毎年実施をすることで、最近は減ってきました。面談後に管理職が報告書に社員からの要望などを記録した後、管理職同士で話し合います。要望に関しては、“①すぐできること”、“②〇月〇日までにやること(期日を決めて取り組むこと)”、“③予算化してから実施すること”、“④実施が難しいこと”と4段階に整理します。すぐに対応できることは、すぐに実施します、検討結果は、掲示物や口頭で結果を報告したり、全体朝礼時に伝えたりしています。」

「当初、不満として挙げられていたものとしては、現場の中でのちょっとした不具合に関するものが多かったです。例えばある製造ラインにおいて、日常的に作業がしづらいと感じている箇所があり、班長には言っているが、なかなか対応してもらえないといった不満がありました。そこで、班長会議で状況を確認した上で、班長自身で対応できない場合は、周囲や上司に相談するように伝えました。その上で、不具合部分は、すぐに対応しました。社員たちにとって、上長に言っても変わらないと感じるようになると、変わらないなら言っても無駄だという雰囲気になりかねません。そのため、すぐに行動しました。また、そもそも不具合の状態が続くと、結果として事故につながることにもなるので、そのことも皆に説明しました。」

「また、社員にとっても、長年同じ作業を続けていると、マンネリ化してしまうので、定期的に担当配置を変えることにしています。担当が変わったことで、新たに気づくことも出てきますし、そういった改善策を言いやすい環境を作るように心がけています。小さな不満が出てきても、小さい段階で改善されていけば大きな不満にはならないので、社員の不満は早めに解消するようにしています。その点では、“快適職場調査(ソフト面)”と“管理職による面談”を毎年実施するようになってからは、日頃から現場社員より意見が言いやすい雰囲気になってきたのではないかと感じています。」

「労働時間に関しては、当社の場合、1年単位の変形労働時間制を採用しています。鮮度を保つために可能な限り1日で生産を行った方がよいため、工場の操業時間は漁獲量に応じて変動します。そのため、繁忙期には残業時間が増えてしまうこともあります。短期採用人材を募集したり、時差出勤で対応したりといったことで、早めに全体の業務調整をするかが、今でも課題としてあります。また、生の原料が少ない時には、冷凍原料を解凍して生産していますが、そこで、ある程度、年間を通じて残業時間の波を計画的に調整するようにしています。」

「当社の独特な労働状況や職場風土を社員に知ってもらいながらも、普段の業務の中で責任感をもって安心安全な食品を作るというところを常に意識して行っていただきたいことを念頭に、社員皆が気持ちよく仕事してもらえる職場環境づくりを今後も進めていきます。」

【ポイント】

  • ①定期的な職場環境に関する調査の実施により、管理職と従業員の意識の違いを管理者に把握してもらい、働きやすい職場づくりに向けた課題を見出す。
  • ②上記調査に基づく管理職による面談を実施することで、社員にとって自分たちの意見が伝わる職場だと感じられる機会を設ける。
  • ③社員からの要望に関しては、「すぐできること」「予算化して実施」など期間や費用面で段階ごとに分類した上で対応策を管理職で検討し、検討結果は社員にフィードバックする。
  • ④繁忙期が偏りがちな業種は、年間を通じて残業時間の波を計画的に調整するように心がける

【取材協力】株式会社マルハニチロ北日本
(2020年6月掲載)