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第25回:社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院(沖縄県中頭郡中城村)

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社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院
(沖縄県中頭郡中城村)

 社会医療法人かりゆし会ハートライフ病院は、沖縄本島中部東海岸に位置する中城村にある。29の診療科に加え、各種専門外来、内視鏡センター、予防医学センター、成人を対象とした骨髄移植を完結できる「無菌治療センター」などの専門治療を行う中核病院であり、24時間救急指定病院でもある。また、「社会医療法人かりゆし会」の事業場には他に、糖尿病の治療を行う糖尿病内科を中心として、内科、小児科では地域の身近な医療を提供する「ハートライフクリニック」や地域の介護を包括的に提供する「ハートライフ地域包括ケアセンター」がある。
 職員数は812名(2015年4月現在)、看護師が337名と最も多く、保健師や准看護師などを含めると看護職が約半数を占めている。
 今回は、産業医である菅谷明子さんを中心に、衛生委員会のメンバーである事務部副部長の比嘉靖さん、経理課の大山朝史さん、臨床心理士の池村久美子さん・大家聡樹さんの5人にお話を伺った。

「衛生委員会」の活動を明確にし、「職場環境改善活動」につなげる

最初に、事務部副部長の比嘉さんを中心に現在の活動に至るまでの経緯について、お話を伺った。

「メンタルヘルス関連について話し合う委員会としては、4年ほど前に”衛生委員会”とは別に”健康増進委員企画委員会”が発足しました。最初の名称は”職員の健康を守る会”でした。院長の『患者様の為にはまず職員が健康でワークライフバランスを整えられるように』という思いから始まりました。院長の指示で、保健師、栄養士、リハビリ運動指導員、事務員などが委員となりました。そこでは院長を委員長として、また、各部署から健康増進委員を選出し、年間計画に運動会や卓球大会のレクレーション活動も入れて病院全体で取り組みました。」

「他には、職員へのアンケートを主に行っていた”ワークライフバランス委員会”もありました。ですが、”ワークライフバランス委員会”も”健康増進委員企画委員会”と同様に、”衛生委員会”とは別に機能していました。個々の委員会の横のつながりがなく、それぞれの担当委員が必要事項を実施するけれども、その後につなげる仕組みはありませんでした。」

「また、それぞれの委員会において、”目標”と”活動していること”はありましたが、”目標設定”がしっかりしていなかったので、皆が違う目標に向かっているように感じられました。例えば、一般定期健康診断で『喫煙していますか?』と質問しているのに、ワークライフバランス委員会でも『禁煙していますか?』というアンケートを取るといったように、連携していれば1回で済むことを複数回実施していることもありました。また、その集計結果を前年のデータと比較することや、結果を踏まえて『禁煙プログラムを実施しよう』という話にはつながっていませんでした。実際に実施していたことは、集計結果を見て『増えた』、『減った』という結果報告のみです。さらに、一般定期健康診断結果に関しても、例えば高脂血症の人数、腰痛がある人数や、それらの年齢層などのデータを詳細に分析せず、『●●%が健診を受けました』、『費用はいくらかかりました』という報告のみで完了していました。これでは、PDCA(Plan、Do、Check、Act)にはなっておらず、『前年これをやりました』に続き『今年もこれをやっています』という、ただの報告会になってしまいます。」

さらに産業医である菅谷さんにお話を伺った。

「そこで、今年からは”衛生委員会”の活動を明確にすると共に、それぞれの委員会と関連づけて、共同で取り組んでいこうとしています。私が産業医として入社したのは、約1年前です。それ以前から衛生委員会はありましたが、改めて仕組みづくりから始めることにしました。『委員のメンバーは事業者側と労働者側が半々で入り産業医も加わること』や、『産業医は事業者側、労働者側のどちらにも属さないこと』などから教育を始めました。また、『衛生委員会とはどういうものなのか』については、本を渡し該当ページを伝えて読むようにお願いし、他の企業ではこのようにしているなどの事例と共に説明しました。組織なので担当者が自ら活動しなければならないことが多く、私自身でやった方が早いと思うことでも『待つ』ことを心掛けました。」

臨床心理士である池村さんからお話を伺った。

「現在、衛生管理者は12人まで増員できました。今までは1人で抱えていたことをそれぞれで分担できるようになったので、精神的に大変楽になりました。その上、困った時に他の衛生管理者に声をかけると助けてもらえることで、肩の荷が軽くなりました。」

引き続き、経理課職員であり衛生管理者でもある大山さんに衛生委員会に加わってからの経緯を伺った。

「私は衛生委員会に関わって2年目になります。最初は、『衛生委員会とは何をするところだろう』という感じでした。前任者から『こういうふうにやっていた』と聞いたことを、正しいのか間違っているのかもわからずに実行していました。その中で、衛生管理者の資格を取る必要性を考え、取得しました。学習の過程で『衛生管理者が何をするのか』が理解できました。また、産業医からも指導があったことで、やっと本格的に衛生管理者としての活動を始められたように感じています。」

衛生委員会で話し合われている「職場環境改善活動」についても伺った。

「現在は、衛生委員会が中心となって全職員にアンケートを取り、その結果を基に、各部門で”職場環境改善計画”という目標と計画を立てています。目標に対する効果測定としては、各部門において職場満足度の数字を出して示しています。アンケート結果については、イントラネットに掲載しただけでは閲覧しない職員が多くいるので、紙で壁面に貼り出すようにしています。」

「職員の中には『患者様にはありがとうと言って頂けてやりがいを感じるけれども、自分の仕事が経営に役立っているのかわからない』といった意見も多くありました。また、直接、患者様と触れ合わない職種、例えば売店・喫茶店・食堂の職員などは、職場満足度はある程度高く、同僚とも仲良くやっているが、経営理念をあまり理解していないという結果が出ました。このような職員に対しては、『あなたがやっている仕事は意味があり、病院としてはあなたがいてくれることで患者様の治療につながっています』というメッセージを出すことが重要だと部門長に報告しています。それらアンケート結果を踏まえて、各部門で立てる”職場環境改善計画”の目標は、『整頓や挨拶』など、簡単なことから始めていくことで良いと考えています。」

アンケート結果を分析して意味のある内容にした後、衛生委員会で話し合い、各部門での職場環境改善に結び付けている。また、職場環境改善計画の目標は、皆がやろうと思えばできる簡単な内容から始めることも大切である。

相談窓口を内容に応じて分け、ポスターなどで周知する

次に、内部の相談窓口とメンタルヘルス研修の状況について、まず、臨床心理士の池村さんにお話を伺った。

「私の業務は、心療内科外来でカウンセリングを担当し、緩和ケア中の患者様の心理的なサポートや心理面接にも携わっています。その他、当病院職員の”メンタルヘルス相談窓口”の相談員も担当しています。私は元々、医療メディエーターという患者様と医療者の間に入り橋渡しをする対話促進者として当病院に採用されました。メディエーターというのは、裁判外紛争処理の担当者のことです。入社後、院長のすすめで衛生委員会にも入り、業務の幅が広がっています。」

引き続き、内部の相談窓口に関してお話を伺った。

「職員への”メンタルヘルス相談窓口”は、対面、電話、メールの3種類を用意しています。休憩室にポスターを貼って、相談窓口を周知しています。相談窓口は内容に応じて、”メンタルヘルス関連”と”ハラスメント関連”がそれぞれあり、”ハラスメント関連”は”男性”と”女性”とで窓口を分けています。」

さらに、産業医が担当する相談窓口について伺った。

「産業医も”働くこと”にかかわる相談全般を受け付けています。敷居が高いのか、直接産業医への連絡は少ないのですが、歩いている時に話しかけてくる職員はいます。また、医師同士では、自身のメンタルヘルス不調に関して、自ら相談することはほとんどありませんが、医師も自分に起こったとてもショックな出来事は誰かに話したいという気持ちは同じはずです。最近あった事例では、看護師から『●●先生が落ち込んでいて心配だ』という連絡が入り、その医師へ産業医である私から直接話しかけ、相談につながったことがありました。」

メンタルヘルス研修についても伺った。

「現在、3年計画でメンタルヘルス研修会を開催しています。全職員は”セルフケア研修会”を3年間に必ず1回、役職者は毎年テーマを変えている”ラインによるケア研修会”を1年間に必ず1回受けることになっています。」

既に専門職として勤務している「臨床心理士」が「メンタルヘルス相談窓口」の相談員となると共に衛生委員会のメンバーと連携することで、職員個人のみならず組織への働きかけにもなっている。また、医師からの相談を同じ医師である産業医が受け、さらに全職員へそれぞれの役職に応じた研修を提供することで、職員個人の状況に応じた働きかけもしている。

職場ごとに配置された「衛生管理者」が中心となってメンタルヘルス不調者や復職者をフォローする

職場復帰支援の取り組みについて、まず、相談対応を担当している臨床心理士からお話を伺った。

「メンタルヘルス不調を理由として”メンタルヘルス相談窓口”で相談を受けた場合であっても、臨床心理士である私からは休業をすすめることはしません。心療内科または産業医につなげます。効率よく業務できていないかも知れませんが、休業までには至らない場合もあるからです。」

次に、メンタルヘルス不調者や復職者へのフォローについて伺った。

「休業までには至らない段階、もしくは休業から職場復帰したばかりの段階などは、各部門の衛生管理者が窓口となり、産業医面談の日程を調整し伝えると共に、現場をフォローしています。本来は、上司が中心となってフォローすべきとは思うのですが、メンタルヘルス研修時の状況や理解度を考えると上司にだけ依頼するのはまだまだ難しいと思うので、衛生管理者にお願いしています。」

「現場でのフォロー内容としては、その職場でないとわからないことを中心に見ています。例えば、復職後、産業医が判断した業務時間内の状況、その間の仕事の質や定時に出勤しているかなどを確認し、必要に応じて衛生管理者から産業医に報告しています。」

さらに、休業者への支援について伺った。

「休業者にお渡しする”休業のしおり”も独自に作成しています。このしおりが、復職後『戻ってきて良いんだよ』という当病院からのメッセージになってくれればと思っています。休業中のフォローは、産業医と臨床心理士の2人が対応しています。産業医は月に1度、臨床心理士は2週間に1度面談日を設けています。」

「職場復帰の判定は、精神科医、産業医、臨床心理士、総務課長、職場の上司が集まり、皆で話し合います。その際、これまでの経緯や現在の状況、復帰後の対応などに関して、書面を作成するルールにしています。また、就業規則には、『職場復帰の際は、主治医の診断書だけでなく産業医の意見も加味すること』や『試し出勤制度について』を追加しました。現在はそれらに基づいて実行しています。」

「衛生委員会」の活動を明確にしたことで「衛生管理者」を12名まで増員でき、各職場では、その「衛生管理者」が中心となってメンタルヘルス不調者や復職者の支援を行っている。また、就業規則へ職場復帰に関わる事項を盛り込むと共に、独自に「休業のしおり」を作成することにより、ルールや対応策を事前に示している。

沖縄労働局の運動に宣言登録することで、健康経営に積極的に取り組むことを示す

最後に、今後の課題についてお話を伺った。

ひやみちか健康経営宣言

「当病院の職員は半分以上が入れ替わりの激しい看護職です。確かに医療業界では、平均的に見ても看護職の離職率は高いですが、警鐘を鳴らす人が必要だと思います。」

「当病院には人事部がなく、いわゆる健康管理室もありません。その為、離職前に当人が人事や専門的立場の職員と面談する仕組みがありません。離職理由として書類上”一身上の都合”となることが大半なので、実際の理由を把握することが難しい状況です。また、衛生委員会での審議事項として『何年目に離職する者が多いのか』などについての状況確認もこれまで取り組んでいないので、残念ながら把握できていません。”離職したから補充”ということに労力をかけるよりも、今後は衛生委員会を通じて、”離職対策”や”人材教育”も視野に入れた活動になるようにしていきたいと思います。」

「今年3月、沖縄労働局が行っている“ひやみかち健康経営宣言”に宣言登録しました。当病院も代表者である院長メッセージと共に、”メンタルヘルス研修会の実施と職場復帰支援”などの取り組み事項を宣言し、職場内での表明のみならず、沖縄労働局のホームページにも掲載しています。これからも『職員の健康無くして、地域の健康は守れない』をスローガンに実践していきます。」

職場のメンタルヘルス対策推進において、事業者は、内部に対しメッセージを発表するだけでなく、公にも宣言して、熱意を示していくことが重要だと思われる。

【ポイント】

  • ①「衛生委員会」の役割を明確にし、衛生委員会で調査審議した内容を各職場に説明することで「職場環境改善活動」につなげる。
  • ②増員した「衛生管理者」が中心となり「産業医」と連携して、メンタルヘルス不調者や復職者へのフォローを実施する。
  • ③地元の労働局が行っている健康増進運動を活用し、事業者が職場のメンタルヘルス対策と職場復帰支援に積極的に取り組むことを、事業場内外に表明する。