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第14回:三菱ふそうトラック・バス株式会社(神奈川県川崎市)

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三菱ふそうトラック・バス株式会社
(神奈川県川崎市)

三菱ふそうトラック・バス株式会社は、1932年に商用車「ふそう」の販売に始まる。トラック・バスや産業エンジンなどの開発、設計、製造、そして販売が主な業務である。2003年には三菱自動車工業株式会社から分社し、外資系となった。そして、2006年に販売子会社26社が本体に統合された。全従業員数は約12000名。今回取材した川崎地区では、第一第二の2つの工場があり、そこでの勤務者が約3500名、本社が約600 、合わせて約4100名いる。川崎地区では、常勤産業医・非常勤産業医合わせて4名(内1名は精神科医)、常勤保健師・看護師5 からなる健康管理部門(ヘルスケアセンター)で対応している。今回は、産業医の佐々木直子さん(写真:前列中央)、並びに保健師の松尾玲奈さん(写真:後列左)を中心にお話を伺った。

健康管理部門主導によるメンタルヘルス体制の構築

最初にメンタルヘルス対策への取り組みの歴史についてお話を伺った。

「川崎地区に関しては、約30年前から2012年まで外部のカウンセラーが週1回相談対応で当社に来ていました。その点ではメンタルヘルス対策の歴史は長いと思います。2000年以降徐々にメンタルヘルス不調者が増えてきたこともあり、2003年から数年間、外部EAP機関の講師によるメンタルヘルス研修を実施しました。 一方、2006年に統合した販売部門については、医務スタッフは常勤では一人もおらず、カウンセリングなど相談対応の実績はありませんでした。教育に関しても”メンタルヘルス対策支援センター”等に依頼して、研修を実施した事業所もありましたが、ほとんどできていない状態でした。」

「2007年、川崎工場では工場内の従業員を主に管理の対象としていた診療所を廃止して、”ヘルスケアセンター”となり全社の健康管理を進めていくことになりました。診療に携わっていた看護師を保健師と一緒の健康管理業務に従事するようにし、メンタルヘルス不調に関しても環境調整の相談や教育などに応じられるような体制を作っていきました。」

「また、同じ頃にヘルスケアセンターには全国の販売部門の状況が相談として入るようになり、不調者が多い販売部門2ヶ所には、外部EAP機関の電話相談を導入しました。しかしながら、相談利用者が非常に少なかったため、僅か1年間で契約を終了しました。当時、当社では大規模な人員削減や組織改編が行われていたため、全社的な対応が弱まっていたこともあり、その後、積極的なメンタルヘルス対策への動きには繋がっていきませんでした。 」

「当時の課題としては、医務スタッフがいない販売部門にメンタルヘルス不調者の対応や心の問題による危機管理をどのような形で展開するか、ということにありました。販売部門においては、メンタルヘルス不調による休業者に対して医務スタッフからの助言を得ることができないため、本人または主治医のみの復職可という判断により、そのまま復職させていることが多くありました。しかし、川崎地区を管理している常勤のスタッフだけでは全国の対応を行うことは難しい。そこで外部資源の導入を検討するわけなのですが、前述の外部EAP機関の導入の失敗の経験や、過去にはそれ以外にも健康保険組合や労働組合が契約している外部EAP機関の利用は可能でしたが、実際はなかなか利用にはつながりませんでした。販売部門の社員からすれば、外部の電話カウンセリングの自主的な利用はハードルが高く、また事業所が複数に分かれていたため、首都圏のみにある直営のカウンセリングルーム、提携カウンセリングルームや電話相談のサービスが主流の外部EAP機関では利用を促進するには限界があると気が付きました。」

「積極的に動き始めたのは、2011年4月に新たな外部EAP機関と契約をしてからになります。2010年に健康保険組合がグループ健保から、協会けんぽへ変更したこともあり、サービス低下部分をどのように補おうかといった問題がありました。それを解決するために、新たな外部EAP機関との契約を経営者に提案したところ、承認を得ることができました。」

外部EAP機関導入に際しては、費用対効果等、経営者への説明に苦労している企業も多い。関連している他の福利厚生策と一緒に考えることも重要である。

「販売部門の中にはトラックの整備を行う従業員5人未満の事業場もあり、川崎地区とはそもそもの基盤が違うのだから、会社全体で公平なメンタルヘルス対策活動を行うにはどうすれば良いか悩んでいました。新たに契約した外部EAP機関では、全国各地にカウンセラーを配置しており、地区担当のカウンセラーが相談者の希望に合わせた場所に出向いてカウンセリングを行っています。緊急時には、即日対応してくれることもありますし、必要に応じて、カウンセラーから本人へ連絡が入ることもあります。また、各事業所にてセルフケアやラインケア研修を実施することも可能となりました。2012年からは、川崎地区でも同じ外部EAP機関のカウンセラーに週3回出務してもらう契約を結び、メンタルヘルスの相談体制を全社的に見直しました。当社のように、健康管理部門の医務スタッフが中心となって外部EAP機関を導入し、メンタルヘルス体制を構築するケースは珍しいかもしれません。」

近年、経営環境が激しく変化し、長期的な展望が見えづらい状況の中でも、 職場ではメンタルヘルスの不調者は逐次発生し、健康管理部門にはその対応を求められる。 「待ったなし」の状況において、苦労されたことと思われると共に、現場視点でメンタルヘルス体制が構築されていった様子が伝わってきた。

外部EAP機関を活用した職場復帰支援プログラムの策定

次に、職場復帰支援に関して、お話しを伺った。

「職場復帰支援に関しては、川崎地区においては、長年、十分な社内ルールはできていなかったのですが、そのような中でも、健康管理部門が中心となることで、職場復帰支援は厚生労働省の手引きに沿った形で運用されていました。過去の復職に関する規程では、7日以上欠勤すると、診断書を提出するようにしていました。しかしながら、それ以降の復帰に関する取り決めは、曖昧でした。そこで、2011年、外部EAP機関との契約を機に”私傷病による休業及び復職に関する実施要領”を策定し、従業員に周知しました。特徴としては、常勤の産業保健スタッフがいない各販売事業所でも実行可能なルールとしたことです。休職者に対して、休職時から随時、復職に向けて先程の外部EAP機関のカウンセラーが支援する仕組みとしました。各販売事業所においては、復職時には地区担当のカウンセラーと連携して職場復帰支援を進めています。休職者の個人情報に関しては、本人の了解を得た上で、会社側に伝えるようにしています。川崎地区では、私たち”ヘルスケアセンター”と人事部門、そして外部EAP機関が連携し、休復職者の情報は”ヘルスケアセンター”に集約するようにしました。各販売事業所においては、復職時には地区担当のカウンセラーと連携して職場復帰支援を進めています。休職者の個人情報に関しては、本人の了解を得た上で、会社側に伝えるようにしています。川崎地区では、私たち”ヘルスケアセンター”と人事部門、そして外部EAP機関が連携し、休復職者の情報は”ヘルスケアセンター”に集約するようにしました。」

「販売部門における職場復帰の手順としては、まず外部EAP機関のカウンセラーが日々の相談対応の中で、生活リズムの確認をします。それらを、各販売事業所において人事担当者が確認します。その後、主治医の復職に関する意見を書面で確認し、各地区の産業医による面談を経て復職の条件を最終判断いたします。復帰に際しては、嘱託産業医による面談が頻回に実施できる訳ではないので、通常勤務が原則です。そのため、復職前にリワーク施設に通っている方もいました。川崎地区における、精神科産業医による定期的なフォローとは異なりますが、事業所の事情に合わせた形で以前よりも職場復帰支援が実施できるようになりました。」

「販売部門の休職者について外部EAP機関のカウンセラーを通じて報告を受けることで、ヘルスケアセンターでは対応できない休業者や拠点の現状を把握できるようになりました。また緊急性の高い事例への危機管理として対応や困難事例での環境調整における連携も次第に増えてきています。」

常勤の産業保健スタッフがいない事業所においても、外部EAP機関のカウンセラーが休職時から随時、復職に向けて支援するので、全国で公平に職場復帰支援を行えているようである。

各販売事業所での外部EAP機関活用事例

最後に、各販売事業所の人事労務責任者にお集まりいただき、外部EAP機関の活用事例に関して、お話を伺った。

A事業所 「休職者本人は『これまで会社には話をしにくかったことでも、外部EAP機関のカウンセラーには話をしやすかった』と言っていました。利害関係がないことも話しやすさの1つにあるんでしょう。メンタルヘルス不調者の力添えになってくれてありがたい。休職中も間に入って支援していただいている。また、相談対応によって得られた情報をどのように職場へ伝えていくかについては、カウンセラーから本人に事前に説明してくれていました。本人了解のもとで情報共有できたので、職場復帰が進めやすかったです。」

B事業所 「先日、当事業所の従業員にメンタルヘルスの教育研修をしてもらいました。」

C事業所 「最近では、何かあれば、管理職の方から『外部EAP機関のカウンセラーに相談したらどう?』と勧めることもあります。結果的には相談利用者は増えています。」

大企業の場合、従業員数の多い本社や支社では産業医もメンタルヘルス担当者も選任し、メンタルヘルス対策を行ってはいるが、地方の従業員数の少ない事業所までは対策が行き届いていないといった声は多く聞かれる。今回のように本社の産業医、産業保健スタッフが全社的な仕組みをつくり、外部EAP機関のカウンセラーに委託しながらも、しっかりとリードすることで、全国で公平な職場復帰支援が実現されることを現している。

【ポイント】

  • ①メンタルヘルス不調者や休職者の情報は、「健康管理室(ヘルスケアセンター)」にて一元管理する。
  • ②「職場復帰支援プログラム」は産業医が選任されていない小規模事業場でも全国一律に利用できる構成とする。
  • ③全国各地で対応できる外部EAP機関を活用することによって、従業員数の少ない事業所でも公平なメンタルヘルス対策活動を行う。