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第11回:株式会社エアー沖縄(沖縄県那覇市)

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株式会社エアー沖縄
(沖縄県那覇市)

 沖縄県の玄関口、那覇空港。年間1370万人(平成23年)もの乗降客数は、全国で5番目に多い。株式会社エアー沖縄の社員の多くは、空港内での勤務である。1964年の創立のため、来年で50周年。ANA那覇空港の空港委託業務を行っており、沖縄の玄関で日々お客様をお出迎えしている。また、沖縄の地元企業であり創業者もそのことにこだわっているとのことであった。

 全社員数は346名(平成25年4月現在)。男女比は半々。お客様への業務を行う「空港サービス部」が210名と大半を占めている。又、グループ会社の「株式会社グランドシステム沖縄」では那覇空港において航空機の整備支援業務、手荷物・貨物ハンドリングや国際貨物ハブ事業を手掛ており、両社あわせて約800のグループ企業である。 国内線ターミナルから少し離れたところに、貨物ターミナルがあり、そこに事務所をかまえる総務課主任の眞謝(まじゃ)寿賀子さん、並びに人事課副長の仲地みき子さんからお話を伺った。

「タイムプレッシャー」と「台風等自然災害」によるストレス

最初に「職場復帰支援プログラム」作成のきっかけについて、それぞれお二人からお話を伺った。

眞謝さん 「平成22年度に空港サービス部から総務課に異動してきました。当時は、メンタルヘルス不調者を目の当たりにしながらも、知識がない中でどうやって対応したら良いのか分からず、本人の支援と総務課としての会社の立場との間で板挟みになっていました。そんな時に、沖縄産業保健推進センターの研修に参加して、メンタルヘルス対策支援センターの池田なぎさ促進員と出会い、それがきっかけでメンタルヘルスのことを学習し始めました。」

「当時は残念ながらメンタルヘルス不調で辞めざるをえない人が何人かいました。会社として何をしなければならないかといった時に、安心して休めて、安心して復帰できる体制をつくろうと上司に相談してつくったのが、”職場復帰支援プログラム”でした。」

仲地さん 「平成25年3月までは企画課に在籍していました。以前、総務課は社員の大半が働く空港サービス部がある那覇空港とは離れたところに事務所をかまえていました。そのため、那覇空港に事務所をかまえる企画課が社員と直接やりとりをしていました。眞謝さんと二人で初めて一緒に取り組んだのは、平成23年頃にパワハラ・セクハラ担当の窓口をつくったのと合わせて、全社員にそのセルフチェックを行ったことです。そこから職場復帰に際しても、眞謝さんとお互いに情報共有したり、不調に対する対応方法を相談したりといった細かい調整をするようになりました。そこで、『なんとかしなきゃいけないね』と必要性を感じていたのが、”職場復帰支援プログラム”でした。平成25年4月からは、総務部から分割する形で新たに人事部ができ、そこへ異動してからは、”職場復帰支援プログラム”を運用する立場となりました。 」

総務部門に所属しながらも大多数の社員がいる職場と離れていた眞謝さんと、空港現場で働く仲地さんとが同じ思いだったからこそ、プログラム作成に取り組めたのだろう。
次に、社員の業務内容とストレス要因に関して伺ってみた。

「当社は、対お客様への業務を行う”空港サービス部”が社員の大半を占めています。部門内においては、女性が8割と圧倒的に多いです。この部門での主なストレス要因は、”タイムプレッシャー”です。『飛行機を定時に飛ばさないといけない』や『乗り継ぎ時間が足りない』といった焦りです。もうひとつの要因は、”接客対応”です。特に沖縄は台風が多いことと、離島への乗り継ぎのお客様が多くいらっしゃることで、お客さまのスケジュールが崩れてしまったり、ご要望にお答えできなかったりしたときには、多くのご意見をいただきます。そのとき、社員自身ではうまく対処できない問題も多いため、そのまま抱え込んでいる方もいます。」

「部門ではそれぞれ約12名ごとに班がつくられており、社員は、班に所属しています。社員に一番近い先輩として班長がおり、その上に、チーフ・アシスタントマネージャー、管理職という体制で、いつでも相談できる体制は整っています。また、必要に応じて、管理職より総務・人事部門へ相談がくる場合もございます。また、総務課では、毎月勤怠チェックを行い、休みがちな社員がいたら所属長へ確認を行ったり、部下へのフォローを依頼したりといった声かけを積極的に行っています。」

職場におけるストレス要因は、業種、職制、業務内容等によって異なる。ただ、「タイムプレッシャー」や、自然災害時の対応は、社員自身ではコントロールできない問題だけに、さぞかしストレスを多く受けるものと思われる。
次に、これまでのメンタルヘルス対策についてお話を伺った。

「これまで弊社ではメンタルヘルスに関する研修は、行ったことはありませんでした。そこで平成24年に階層別研修時にメンタルヘルス教育として”ラインケア研修”を実施しました。研修は”メンタルヘルス対策支援センター”の池田促進員に依頼しました。来年度は”セルフケア研修”を実施して、全社員にメンタルヘルス教育を行う予定です。」

「ラインケア研修」により「いつもと違う部下への気づき」に繋がっていることが一つの成果として表れている。

休職者本人の視点で1シートずつ順番に作りあげた「職場復帰支援プログラム」

次に職場復帰支援の実際について、お話を伺った。

「職場復帰支援で困っていて、休職から復職にあたる時に、『今の状況で復帰させて大丈夫なんですかね』などと相談した際、池田促進員から『復職にも段階があるんですよ』と言われて、初めて知りました。私にとってこの分野は未知の世界でしたから。メンタルヘルス不調者への対応を通じて、段々と分かるようになってきました。『個別の対応だけではダメだ』と。本当に休むための支援体制があり、休んでいる時にどういう知らせをするか、復職の全体の流れを整えたいという思いがありましたね。また、『どうやったらいいの?』という休職者の所属長からの質問責めを受けていましたので、書面としてまとめておけば、こんなことにはならないと考え、”職場復帰支援プログラム”を作成することとしました。作成に際しては、池田促進員のアドバイスの下、先程のラインケア研修等と並行しながら進めました。」

「作成にあたり、まずは役割分担を明確にしました。”職場復帰支援の手引き”の5つのステップに沿って、”本人”、”上司(所属長)”、”総務部・人事部”、”産業医”、そして”主治医”が何をしなければならないのかを1シートにまとめました。」

「次に、休職に入る方には説明することが多いので、これでは覚えられないと思い、本人たちが一番知りたいものをそれぞれ1シートにまとめました。 “休職期間”や”有休残数”とそれらの就業規則の該当箇所の抜粋が1枚。また、休職中の社会保険料や税金等の立替金の目安と返済方法、並びに共済会貸付金に関する説明が1枚。そして、”傷病手当金”の個人別の支給額と、支給期間、説明等をまとめたものが1枚。説明文は箇条書きで分かりやすく書かれています。」

まずは役割分担を1シートにて明確にする。その上で、本人が知りたい「休職期間」や「傷病手当金」などの情報も順番に1シートでまとめていく。休職者の所属長からの質問責めを通じて、端的に必要な情報を伝える方法が養われていったものと思われる。  次に、産業医の役割について詳しくお話を伺った。

「内科の医師に産業医をお願いしています。産業医業務として月1回、職場を巡回し健康相談として面談をお願いしています。仲地さんが企画課にいた時に、社員からの要望もあり事前に面談の予約ができるようにしたり、じっくり話がしたい社員には個室を準備したりと相談できる環境を整えることにしました。先生が親身に対応していただけるため、最近では相談者も増えています。職場巡回・面談以外は先生の診療所にいけば面談していただけたり、必要に応じて社員の主治医に連絡をして社員の状況などを確認してくれたりしているようです。 」

「仲地さんが企画課にいた時に、会社全体での経営戦略を立てる際、社員の大半がシフト勤務で体調管理が難しいが、常に心身ともに健康であることが重要であり、社員のモチベーション向上に繋げられないかということを考え、産業医を産業保健分野でさらに活用していきたいと『産業医はどこまでしてくれるのか』をいろいろ調べ、先生と情報交換やアドバイスを積極的に行うようになりました。社員より、『夜が眠れない』、『疲れがとれない』などの相談があった場合でも『産業医の先生に相談することできるよ』といった促し方をするようになりました。」

「産業医が休職中からずっと面談しているので、どういう状況なのか、どういう薬を飲んでいるのかを把握し、薬の種類や量の変化から、職場での対応方法についても産業医から助言してもらっています。職場復帰後も産業医からの専門的なアドバイスをもとに、本人の状況や復職時の注意点で公開できる情報は、管理職を通して同僚にも伝えるようにしています。」

会社として産業医にお願いする以上、会社側もしっかりと産業医の役割と業務内容について理解しておく必要がある。

「休職中は所属長が休職者と相談窓口を担っており、電話などで連絡を取り合っています。産業医への面談は、所属長経由で依頼します。”ラインケア研修”によって、管理職は、自分たちにも役割を果たさなければならないんだということを学んだようです。」

「その他の”職場復帰支援プログラム”の書面も運営を通じて、徐々に整備していきました。今では、『欲しい情報はこれだね』と、先手先手で関係者に書面を渡せるようになりました。 」

「職場復帰の判断前には、”生活リズム表”をつけてもらう事にします。また、”試し出勤”は長くて1か月。時間は始業時間に合わせるようにしています。」

「そもそも、どういう流れで職場復帰支援をすれば良いかが分かりませんでした。”職場復帰支援プログラム”があることで本人も安心して復帰することができる。『会社もその人のために、業務軽減に配慮した”職場復帰支援プラン”をつくってくれる』という面で安心できるのではないかと思います。このように”職場復帰支援プログラム”に沿って運営し始めてからは、復職に失敗する社員はいなくなりました。」

ラインケア研修などのメンタルヘルス教育があるからこそ、「職場復帰支援プログラム」の運営がうまくいっていることを表している。

自然につくられた「人間関係が良好な職場」

次に今後の取り組みについてお話を伺った。

「社員は、周りの上司・先輩に話や相談はできていると思いますが、人事・総務部は、メンタルヘルス不調になってからの対応が中心となっています。メンタルヘルス不調になる前に”話せる場所”をちゃんとつくりたい、というのが今の目標です。保健室のようなものですね。そこで、『最近不安なんです』とちょっとした話をしてすっきりすることで、嫌な気持ちを持ちこさないようにする仕組みづくりをしていきたいです。」

最後に組織風土について伺った。

「弊社は、”元気がでる会社”、”未来が語れる会社”という目標がございます。社員の自分の子供が弊社に入社してもらいたいという想いもあり、家族への職場見学などを積極的に行っています。」

「最後に1つ、当社の自慢をしても良いですか?毎年行っている全社員へのアンケートでも『人間関係が良好である』を選択する人が多いです。多分、社員間の”人間関係”の問題で辞める退職者はいないと思われます。人事課では、採用活動の一環に会社説明会を実施していますが、実際現場で活躍している社員も同席させ、仕事のやりがいや会社のアピールをしてもらうのですが、”人間関係の良い組織風土”を語ってくれます。アットホーム感が強すぎて叱れない社員もいると聞きますが、『何かあったときのチームワークはすごい』ことは自慢のひとつです。」

「人間関係が良好な職場」は沖縄の県民性によるものなのかと思いきや、県外からの社員が多くいるとのこと。県民性よりも職場風土に要因はあるようだ。創業者が、社員の成長を願うことを経営理念に表わすと共に、社員も仲間同士話をしやすい環境が、「人間関係が良好な職場」を作り出しているのであろう。また、毎年アンケートを実施し、その結果を公開し、会社全体で共有することにより、社員自ら「人間関係が良好な職場を改めて再認識しているのではないかと思われた。これからさらに、セルフケア研修によるメンタルヘルス教育を通じて、問題を一人で抱え込むのではなく、早い段階で上司や同僚に相談することで、更なる予防に繋がるであろう。こうした新たな課題の達成に向けても、職場環境の良さは大きな後押しとなるに違いない。

【ポイント】

  • ①職場復帰支援に係る「役割分担」を1シートでまとめ、分かりやすくした。
  • ②産業医の役割と業務内容をよく理解した上で積極的に活用する。
  • ③毎年、全社員アンケートのポジティブな結果を皆で共有する。