職場復帰支援の取り組み事例

第26回:株式会社日立ソリューションズ東日本(宮城県仙台市)

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第26回:株式会社日立ソリューションズ東日本(宮城県仙台市)

第26回:株式会社日立ソリューションズ東日本(宮城県仙台市)

 株式会社日立ソリューションズ東日本は、日立ソリューションズの国内グループ会社の1つである。1984年、仙台市に設立以来、北海道や東北から日本全国、そして世界へと範囲を拡げながら、業務内容を充実させている。主な事業内容として、システム・インフラ構築等の「システムエンジニアリングサービス」、ソフトウェア開発やパッケージ開発等の「ソフトウェアエンジニアリングサービス」を手掛けている。
 従業員数は、全社で約1,000人(2015年3月末)。大きな事業所としては、仙台にある本社の従業員が約300人、川崎にある東京事業所の従業員が約600人、札幌にある北海道事業所の従業員が約70人、この3拠点である。
 今回は、総務部勤労グループ主任の菅祐二さんを中心に、総務部勤労グループ部長代理の手塚昌之さん、外部EAP(従業員支援プログラム)機関のカウンセラーである松本桂樹さん、清野俊充さんの4人に話を伺った。

研修からメンタルヘルスに関する情報を広めて、誰もが相談しやすい環境をつくる

最初に、メンタルヘルス対策の体制について話を伺った。

手塚さん
「菅さんは、当社の安全衛生担当のメインとして活動しています。東京事業所では総務部門の3人、北海道事業所でも2人が兼務で安全衛生を担当し、菅さんと協力して業務を行っています。」

菅さん
「私が安全衛生担当になったのは、2013年からです。社内の担当者として活動していますが、はじめからメンタルヘルス分野に関する知識があった訳ではなく、わからない状況の中、取り組みながら覚えています。」

「仙台本社の事業場内産業保健スタッフは、当初、月1回2時間、主に面談を依頼していた産業医1人だけでした。2013年6月から、産業医の紹介により週1回で保健師が加わり、今年2015年10月からは週2回に増やしました。東京事業所でも、当初は月1回3時間で依頼している産業医1人だけでした。2013年当時、メンタルヘルス不調者数が一番多かったのは東京事業所でした。そこで、2014年9月から産業カウンセラーの資格を持ち、メンタルヘルス不調者に対しての知識や経験もある保健師が週2回で加わり、今年2015年10月からは週3回に増やしました。北海道事業所においては、産業医は選任していますが、保健師はまだいません。」

「事業場外資源としては、10年程前から外部EAP機関と契約し、支援を受けています。専属の専門スタッフを全て社内で抱えることが難しいため、非常に助かっています。」

続いて、メンタルヘルス研修について伺った。

「メンタルヘルス研修は、6年程前から定期的に実施しています。社内研修(階層別の内容)と、契約している外部EAP機関による研修(一般的な内容)の2種類を設けています。社内研修の講師は外部に依頼し、該当する社員は強制参加です。階層は、"新入社員"、"入社2年目"、"新任専門職"、"新任技師・主任"、"新任課長"別に設け、それぞれが直面するだろうと思われるメンタルヘルスの問題について研修しています。しかしながら、6年前より以前に"新任"管理職になった社員は研修を受講していません。そこで、今年2015年から、未受講の管理職を対象に、それぞれの上司から受講者を選出し、今後3年間で全員が受講できるように取り組んでいます。研修受講者からは『非常に役に立つ』というアンケート結果が多く寄せられています。現在では、メンタルヘルスに関して社員の意識が変わり、メンタルヘルス不調の未然予防、早期発見の意識が高まってきたように感じます。」

メンタルヘルス相談窓口についても伺った。

「契約している外部EAP機関によるメンタルヘルス相談窓口を2008年から設けています。更に2010年からは全社員対象のストレスチェックも依頼しています。昨年2014年、ストレスチェックは7割の実施率でした。過去には、本部長等の幹部を対象に集団分析結果の報告会を開催したこともあります。」

「研修では、外部EAP機関と契約して社外に専門の相談窓口を設置していることを伝えています。また、研修でメンタルヘルスに関する知識を広めることにより、"相談すること"への抵抗感は少なくなっているように感じます。更に、部下のメンタルヘルス不調による休業を過去に経験した上司は、早めに相談窓口を紹介するケースが多いように感じます。」

手塚さん
「職場復帰支援へも外部EAP機関が直接関わっているので身近に感じられるようになってきたことも相談しやすくなった理由の1つだと思います。」

外部EAP機関カウンセラー 清野さん
「定期的に行われる上司と部下の評価面談時に、『窓口があるから相談してみたら?』という上司からの紹介で相談に来ることが多い印象です。相談内容が社内に漏れるのではないかと心配していることも少なくありませんが、本人の同意がなければ絶対に社内の関係者に伝えることはありません。」

菅さん
「私に直接質問をしてくる社員もいます。その場合は、個人情報保護の仕組みを説明しています。『ここは話したくない』と言えるし、『これは会社には言わないで』と言ったことは会社側には伝わらない仕組みになっていることも知らせます。」

外部EAP機関カウンセラー 松本さん
「相談を受ける前には『話したくないことは話さなくて良い』と伝えています。カウンセラーもその前提で相談対応をしています。業務上、会社側も知る必要があると思う内容に関しては、必ず事前に『菅さんに伝えても良いか』を直接相談者に確認し、ほとんどの場合、了解してもらえます。そのことから、菅さんが信頼されていることが伝わってきます。」

手塚さん
「カウンセラーや人事労務スタッフにはそれぞれ役割があり、また上司には違う役割があります。各々が責任を果たし、連携することで、『ただ形として外部EAP機関の相談窓口を置いている』のではなく『外部EAP機関と契約してしっかりメンタルヘルス対策に取り組んでいる』という、会社の思いが職場全体に伝わると思います。」

研修を開催することによりメンタルヘルスに関する情報を提供し、相談窓口の周知もできる。更に、相談窓口の利用に不安がある社員には、安心して相談できるように、個人情報保護の仕組みを説明している。

職場復帰支援活動によりメンタルヘルス不調者の休業率は大幅に減少

次にメンタルヘルス不調による休業者の現状と対策について伺った。

菅さん
「2013年以前においても、外部EAP機関の専門相談窓口設置やストレスチェック等、メンタルヘルスに関する施策は実施していましたが、体系立った施策とはなっていませんでした。2006年に"メンタルヘルス対策支援のためのガイドライン"を作成し、職場復帰支援の流れが規定されましたが、職場復帰の条件や流れが明確でなく、あまり機能しているとは言えない状況でした。例えば、"慣らし出勤"が制度として記載されていましたが、休業前にきちんと休業者に説明していたかというとそうではありませんでした。」

手塚さん
「2013年頃、日立ソリューションズグループ一体で、『それぞれの施策をシェアしよう』という流れがありました。そこで、グループ内で共有した施策をもとに、当社の実態に合わせてアレンジを加え、2014年1月に "職場復帰支援プログラム"を作成しました。」

菅さん
「2013年のメンタルヘルス不調者による休業率は、グループ会社平均と比較すると大変高い状況でした。そこで、まず、経営会議や安全衛生委員会で『メンタルヘルス不調による休業率が他のグループ会社よりも高い』という当時の状況をしっかりと伝えました。そして、"職場復帰支援プログラム"を確実に運用することで、高止まりを続けていた休業率も2015年4月にはグループ会社平均を下回る程度にまで減少しました。この減少率は当社グループ内でも特に目立った下がり幅だと思います。結果として復職者が多くなる中で再休業者が少なくなってきています。」

菅さん
「現在は、総務担当者が休業前に必ず本人と上司へ"職場復帰支援プログラム"の内容について説明しています。」

手塚さん
「休業の目的をきちんと持つためにこの説明は必要です。『休業により療養すること』は『職場復帰に向けて療養すること』であると自覚することが重要です。」

菅さん
「休業中には"試し出社"期間を設けています。期間は3週間~8週間です。休業期間が90日以内の場合は3週間、90日を超えた場合は5週間を目安とし、最大8週間としています。この期間で職場復帰の準備が整っていない場合は再度休業となります。」

「職場復帰前に、産業医は休業者と2回面談します。1回目は『休業中の試し出社が可能か』について事前に本人、産業医、上司の3人で話し合います。2回目は試し出社終了後、『実際に職場復帰できるか』の判定を先程の3人に総務担当者を加えた4人で話し合います。産業医と休業者が対面することはこの2回の面談だけですが、休業者に関する情報は、保健師から産業医へ適宜報告しています。」

職場復帰の流れにおける職場側での職場環境改善活動について伺った。

菅さん
「"職場復帰支援プログラム"の中で"試し出社"を経ることにより、復職準備中の休業者の状況や復職後にどのように接していくかということに対する職場での理解が深まってきていると思います。また、職場でのメンタルヘルスケアに対する理解が深まったことにより、以前に比べて職場で部下や同僚の様子が気になったとき、すぐに保健師等の産業保健スタッフへの面談を勧める等、未然防止としての"周りの気付き"が進んできました。」

続いて、社外リワーク支援の活用について伺った。

菅さん
「休業を2回繰り返すケースでは、試し出社期間前に社外リワーク支援を受けることを勧奨しています。リワーク支援では、休業することになった原因を振り返り、復職後の対処方法を検討していきます。この"ふり返り"作業をすることで、復職後、同じ原因で再休業になることを防ぎます。」

「リワーク支援にあたっては、休業者の通っている医療機関のリワーク施設や障害者職業センター等の公共機関、または契約している外部EAP機関等を利用します。そのリワーク支援終了後、本人、産業医、上司の3者面談を行い、そこで了解が得られれば試し出社となります。」

外部EAP機関カウンセラー 清野さん
「当外部EAP機関の東京本社では、以前からリワーク支援を行っていましたが、東北支社では昨年2014年からはじめました。2015年現在、東北での参加人数は少なく、多くても5人前後です。参加者同士が密にやり取りをして、モチベーションを高めやすいとも言えます。東北では、障害者職業センター等の公共機関がリワーク支援を行っていますが、それ以外ほとんどない状況です。我々外部EAP機関がリワーク支援を行うことで、多くの方が利用しやすくなるのではないかと思っています。」

"職場復帰支援プログラム"を休業者と上司に説明することで休業の目的を明確にし、復帰時の問題を防ぐために役立っている。また、産業医に保健師が適宜状況報告することが、産業医業務の支援にもつながっている。

外部カウンセラーと社内保健師が連携して、休業者が自身の問題に向かい合う"ふり返り"作業をサポートする

次に、外部カウンセラーや社内保健師による休業中の支援について話を伺った。

菅さん
「休業者がどうしているか、きちんと把握する仕組みにしました。契約している外部EAP機関のカウンセラーが、月に1回休業者にカウンセリングを実施し、社内保健師を通して、私や休業者の上司、そして産業医に面談状況の報告をしています。対面カウンセリングをできない事情がある場合は、電話等でフォローし、休業中の状況確認をしています。外部カウンセラーと社内保健師が密に連携して対応しています。」

「また、保健師の日々の活躍も大きいと思います。必要に応じ、保健師が付き添って病院へ同行することもあります。業務内容がどうしても合わないという理由で休業中に退職したケースもありましたが、保健師が色々とフォローしていました。」

更に、契約している外部カウンセラーによる休業中面談の特徴を伺った。

手塚さん
「休業中に『このまま職場復帰して良いのか』、『それとも他の道もあるのか』等、休業者が自身のキャリアについてしっかり考えることも、再休業者数の減少につながっていると思います。」

菅さん
「リワークでも実施していることですが、月に1回の外部カウンセラーによる面談でも、休業するに至った原因を思い起こす"ふり返り"作業を行います。『なぜこうなったのか』、『職場復帰後はこの問題をどう克服するのか』、『克服できないなら他の道があるのか』等を外部カウンセラーと一緒に考えて、今後の方向性を見つける作業をします。"ふり返り"ができていないと、職場復帰後も同じような問題に対処できない可能性が非常に高いと思います。」

外部EAP機関カウンセラー 清野さん
「休業者自身の"ふり返り"や、"今後のキャリア"についてのカウンセリングは、復職を目指している場合、必ず行っています。また、月に1回は菅さんと情報交換をしています。」

手塚さん
「外部EAP機関がカウンセリングすることで"ふり返り"作業がスムーズに行えていると思います。上司や社内人事労務スタッフが相談対応者では、仕事についての思いや不満は話しにくいと思います。また、医療職が相談対応者では、病気に関しての相談や仕事に関する話でも一般的な内容になってしまいがちだと思います。そこで、カウンセリングスキルのある外部の相談対応者が聴き、問題点について話し合うことが休業者の"気づき"につながると思います。」

外部EAP機関カウンセラー 清野さん
「職場復帰前の面談では"ふり返りシート"を必ず会社に提出する仕組みにしています。カウンセラーと一緒に考えたことをきちんと会社に提示することで、『これから職場復帰してしっかりやっていく』という決意表明になります。」

菅さん
「職場復帰前の面談では、"ふり返りシート"の他に、休業中にどのような生活を送っていたかを記録する"生活習慣記録表"や"自己評価シート"等の提出が必要です。提出書類が足りない場合は職場復帰できません。そのことは"職場復帰支援プログラム"のルールとして、休業前に説明しています。」

外部カウンセラーと社内保健師の連携で、社内関係者が休業者の状況を適宜把握できる。また、"ふり返り"をすることで、再発防止だけでなく、今後の仕事に対する新たな姿勢を休業者が表明する仕組みとなっている。これら休業者へのサポートが、メンタルヘルス不調者の休業率減少につながる。

【ポイント】

  • ①研修を通じてメンタルヘルスに関する情報を提供し、誰もが相談しやすい環境をつくる。
  • ②休業中のサポートを外部EAP機関に全て任せるのではなく、社内保健師が連携して、人事労務スタッフ、上司、産業医等の関係者へ情報を伝える仕組みをつくる。
  • ③休業者が過去の問題点をふり返り、今後のキャリアについて考えることが、再休業防止につながる。

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