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[事例1-17] キャリアウーマンの就業への不安・焦燥感の事例

女性管理職をめぐる課題

 女性管理職のケースは2つに大別できます。1つは、以前には女性の総合職が極めてまれな時代だったことから、一般職採用で就職し男女雇用機会均等法成立後、女性活用の時代の要請があり昇進をして適応障害に陥った、あるいは総合職に転換し管理職になり適応が上手くいかない「移行期に見られた事例」です。

 2つ目は、総合職で採用されたキャリアウーマンに認められたケースです。ここではキャリアウーマンの事例を中心に、説明を加えます。

1 事例:女性・43歳-キャリアウーマンの就業への不安・焦燥感の事例

  1. (1) 概要

     大卒後、現在の会社に総合職的な内容で就職して21年になるキャリアウーマン。夫と子どもが2人います。長女であり、親の期待に応えてきた、いわゆる「いい子」で、女性の第一選抜で選ばれ努力をしてきた人です。性格は几帳面、頑張り屋で融通性が乏しいタイプで、勝気な性格でもあります。趣味といえるほどのものはありません。

     4月に女性活用の追い風もあり、抜擢され本社のエリートコースである営業企画課長に昇格しました。「女性のトップランナーだから、後輩の模範にならなければ。上司から良くやっている、と言われたい」と期待にこたえようと頑張りますが、対外折衝やマネージメントの仕事が多いポストゆえ、焦りも重なり、本人の思う通りにいきませんでした。

  2. (2) 症状

     実績などが前任者を下回ったことが契機となり、「会社でフラフラする。倒れそうになる」などの、めまい感や吐き気が起こりました。内科医を受診。血圧は最高血圧が180、最低血圧が100(定期健康診断では150と88)で、高血圧症と診断されました。降圧剤により140と90になりましたが、症状は軽快しませんでした。「朝の気分がブルーです。起床しにくい。本社の高層ビルをみると動悸がし、冷汗が流れる。足がすくんでしまう」という、就業への不安・焦燥症状が出現しました。内科医の紹介で精神科外来を受診しました。

  3. (3) 家族の気づきとサポート

     夫は多忙で妻が過剰ストレス状態にあるのに気づいていませんでした。後述する対応には必要に応じて診療に同伴し、サポートができていました。

2 事例の解説と対応

 本人は努力家で勝気。女性の第一選抜のキャリアウーマンとして頑張り、評価されて課長に昇格しました。営業企画課長は企画力や根回し、部下のマネージメント能力が要求され、職務適性も課題になります。 過剰なストレス状態に陥り、さらには業績があがらず、気分転換もうまくできず、長男の高校入試という家庭のストレスが重なり発症しました。第一選抜として、「後に続く女性のモデルになりたい」、「男性社会で女性の実力を示したい」などの思い入れやプレッシャーが強かったようです。

 治療としては、本人が言う「トップランナーのしんどさ」の状況や心情に共感するとともに、「思い入れの強さ」を減らすように、カウンセリングを行いました。すなわち、「モデルになろうとするより、あなたはあなたらしくあってほしい。肩の力を抜いて、それなりに仕事ができたらいい」と助言をし、受容されました。必要に応じて夫が同伴しサポートをしたことも有効でした。リキミがとれ、課長職から同格の参事として復職を果たしたのです。再発はありません。

3 職場の課題

 このケースの場合、会社としての女性社員の昇進への考え方や対応に課題があります。女性の昇進や転勤などへの体制づくりやサポートが不十分であったと考えられます。男性管理職が段階的に受ける研修が、この方に対してはなく、ポンと課長ポストに据えられたという感じです。必要な研修の実施や、職務内容と適正に関する見通しなど、女性社員の昇進や昇格に際して、組織としてどのようなバックアップ体制を敷けるかが重要です。

4 4つのケアからの対処

  1. (1) セルフケア(家族のサポートを含む)

     対象者自らのストレスの気づきが大事です。過剰ストレス状態の警戒信号である「心身の不調」が見られたら、ストレス・コントロールを行ってください。

     本人が気づかない場合もあるので家族が過剰ストレス状態に気づくことが大事です。事例に挙げたような症状に気づくことです。

     職場は、ストレスを中心にした健康教育を行っていただきたい。

  2. (2) ラインケア

     女性における急速な職場進出からくる女性が被るストレスへの理解を中心に、男性管理職への健康教育を行ってください。男女雇用機会均等法成立前後の女性の職場ストレッサーを調査した結果からは、「対人関係葛藤」がトップでしたが、「配置転換や昇進」が6%から34%へと急激に増加していることが注目されました。このような背景や特徴を把握して健康教育を行ってください。ポイントは女性活用のシステム整備です。男性の昇進や転勤、新技術習得の研修を中心にしたキャリア獲得システムは整備されていますが、女性のそれは、ノウハウが少ないのです。そこでジョブ・ローテーションや技術習得のためのシステム構築や研修の充実を含めたシステム整備が大切です。

  3. (3) 産業保健スタッフによるケア

     ケアには対象者が自ら相談に来る自発的な相談と上司や職場関係者からの紹介の2つの大まかな流れがあります。症状が強ければ精神科医への紹介が望ましいところです。精神科医に紹介時、ケースをとりまく職場事情を中心に説明を手紙に書き、本人の同意の上で持たせ、主治医に知らせると良いでしょう。

  4. (4) 事業場外資源の活用

     産業保健推進センターや地域産業保健センターのほか、地域の保健所や精神保健福祉センターなどでも原則無料で相談等のサポートを行っています。また、外部EAP機関も、電話相談やメール相談等のサポートを行っていますので、自社が契約をしている場合は、そのサービス内容を確認し、利用しましょう。

     また、産業医や保健師は外部医療機関(1.地理や時間的条件、女性は、この条件は大きい。2.専門性:うつ病、女性のケースに強いなど)情報を日常から把握し、正確な情報を伝え、対象医療機関に適切な紹介状などを書いてください。