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4 部下・同僚への配慮

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(1)日頃の様子への注意

 部下や同僚のメンタルヘルス不調に気づくには、「本人の通常の行動様式からのズレ」 に着目することが大切です。たとえば以前と比べて遅刻が多い、顔色が良くない、口数が少ない、身だしなみが乱れてきた、昼休みに一緒に食事に行かなくなった、仕事の能率低下やミスが目立つなどです。このような徴候に気づいたら、一度時間を取ってゆっくり話を聴くことが大切です。

 その場合、アドバイスするよりも、その人の気持ちを十分に聴くという姿勢が大事です。話を聴いてみて、眠れない・食欲がない・疲れやすいなどの体の不調や、飲酒・喫煙量の増加などに気づいたら、率直に心配している気持ちを伝え、社内の産業医や保健師への相談を促しましょう。

(2)パワハラなどのストレス要因

 パワー・ハラスメントとは、「職場において、職権などの力関係を利用して、相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること」とされています。ハラスメントは被害を受けている社員のメンタルヘルス不調に結びつくだけでなく、職場にハラスメントを容認する風土があれば、他の社員のやる気もそがれます。

 部下や同僚のハラスメント被害に気づいたら、まずはプライバシーに十分配慮しつつ、真摯に話を聴くことが大切です。その際に、本人にも問題があるような発言をしたり、否定するような発言をすると、2次被害を与えてしまう場合があるので注意が必要です。メンタルヘルス不調の徴候に気づいたら、産業保健スタッフへの相談を勧めます。

 ハラスメント行為者が直属の上司である場合などは、本人が相談したがらない場合や、パワー・ハラスメントかどうかの判断が第三者から見て難しい場合は、放置するのではなく、まずは自分自身が産業保健スタッフに相談してみるのも一つの手です。また、ハラスメントは人権問題でもあり、産業保健スタッフへの相談だけでは根本的な解決にはなりませんので、ハラスメントの相談窓口に相談することが必要な場合もあります。

(3)過重労働の回避

 長時間の残業や深夜業務など過重な負荷が続くと、睡眠時間の減少に結びつき、脳・心臓疾患発症のリスクが高まります。また業務による心理的負荷によってうつ病やうつ状態が生じることもあります。一方で、メンタルヘルス不調が原因で業務遂行能力が低下した結果、長時間の残業が起こっている場合もあります。いずれにしても過重労働とメンタルヘルス不調を始めとした健康障害は密接な関連があると言えるでしょう。

 長時間労働者への医師による面接指導は、疲労の蓄積やメンタルヘルス不調を早めに発見してもらう貴重な機会です。部下や同僚に残業時間を過小申告させないようにしたり、忙しいからと面倒くさがっているときには面接を避けずに、積極的に受けさせるようにしましょう。また過重労働が常態化している部署の管理監督者は、部下に医師による面接指導を受けさせるのはもちろんですが、中長期的に根本的な解決に取り組むことも重要です。

 仕事の分担を見直したり、仕事を効率化したり、派遣社員やOBを雇用して人を増やしたり、新人を育てるなどの対策に地道に取り組んで、少しずつでも良い方向に向かっていることが見えれば、同じ残業時間でも疲労の感じ方は変わってきます。またノー残業デーなどを設けることも有効です。

(4)プライバシーへの配慮

 部下、同僚への相談に対応する際は、本人のプライバシーに十分配慮する必要があります。話し合いの場所は、他の人へ話しが聞こえないよう、個室で行うようにしましょう。よく部下や同僚の悩みを聞く際に酒の席に誘いがちですが、重要な内容の場合には適切ではありません。

 本人から聴いて知った個人情報を不必要に他の人へ伝えてはいけません。他の人へ伝える必要がある場合も、原則、本人の了解を得た上で行う必要があります。伝える範囲も必要最低限とし、その内容についても本人が安全かつ健康に働くことができるために必要なものに限るべきです。病名については伝える必要はなく、残業制限や軽作業など具体的に必要な配慮の内容に焦点をあてるようにします。

(5)職場のサポート

 部下・同僚からの相談、話し合いをもとに、職場でできるサポートを検討します。自分自身で対応できない場合は本人の了解を得た上、上司や産業保健スタッフ等に相談するようにします。具体的なサポートの内容としては、短時間勤務、軽作業や定型業務への従事、残業・深夜勤務の免除、交替勤務から日勤への転換、危険・運転・窓口・苦情処理業務の免除、高所作業の免除、フレックスタイム制度の制限または適用などが考えられます。