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このコーナーでは、一人でも多くの方に交流分析について学んでいただくことを目的として、ホームページに掲載された情報と同じ内容のデータのPDF版をご用意しています。PDF版は、交流分析を学ぶ、広めるという目的の範囲内において、印刷や内容の部分抜粋など自由にお使いいただくことが可能です。注意事項を良くお読みの上、ご利用ください。
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目次
「自分らしさ」をつくる心の働きについて理解すると、人間関係の改善や自律的な生き方・自己実現に役立ちます。今回は、「5つの特性」を中心に学んでいきましょう。
「15分でわかるはじめての交流分析1」と「15分でわかるはじめての交流分析2」を先に学習すると、より理解が深まるでしょう。
※学習時間の目安は15分です。
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1.「自分らしさ」とは心の働きの違い
心理学は、心の働きを理解する学問(科学)です。
心の働きとは、思考(考える)、感情(感じる)、行動(行動する)のことです。
一人ひとり、考え方や感じ方が違い、行動の仕方も違います。
そのような心の働きの違いを「自分らしさ」と言います。
2.「自分らしさ」を5つの特性から分析する
交流分析では、「自分らしさ」をつくる心の働きの違いを5つの特性で分析します。
5つの特性とは、
・CP(Controlling Parent)
・NP(Nurturing Parent )
・A(Adult)
・FC(Free Child)
・AC(Adapted Child) です。
3.【特性1】指導するCP
自分の中に理想や目標をしっかりもち、それを基準にして考え、行動する働きです。
相手に指示したり、指導したりするときに使います。
相手をリスペクト(大切に)しながら使うと、相手は力を発揮して成長することができます。
CPは、自分の意思を主張するときにも使います。
相手の気持ちや状況を考えて使うと、あなたの意志が伝わりやすくなります。
4.【特性2】育むNP
心から人の世話や援助をして、他人のことを自分のことのように感じ取る働きです。
相手を励ましたり、寄り添ったりするときに使います。
NPの優しさは人を安心させ、ここちよい人間関係をつくる力になります。
優しく思いやりのある気持ちが伝わると、相手はのびのびと成長することができます。
相手ができることは任せて見守れば、相手は挑戦する勇気が出るでしょう。
5.【特性3】考えるA
情報を集め、今ここで何が必要かを考えて、冷静に判断する働きです。
仕事や学習で、目標を立てたり、計画的に進めたりするときに使います。
相手の状況を理解したり、自分の感情をコントロールするのもAの働きです。
考えるAは、相手や状況に応じて、指導するときはCP、世話をするときはNP、情報交換するときはA、楽しむときはFC、身を守るときはAC、というように、特性を使い分けて対応するときにも使っています。
6.【特性4】楽しいFC
自由で自然な子どものように、感情や要求を自由に表現する働きです。
周りの人と自然体で楽しい時間を過ごしているときに発揮されています。
FCの楽しさは、活き活きと元気で、笑顔があふれる人間関係をつくる力になります。
その場の空気を明るくしたり、盛り上げたりするのもFCの働きです。
そのときに、他の人の反応や様子を見る余裕をもてば、人気者になるでしょう。
7.【特性5】おとなしいAC
自分の意志や感情を適度に抑えて、集団の中で協調し、自分の居場所を作る働きです。
心のエネルギーの消耗を防ぎ、「自分の心身を守る力」になります。
素直に話を聞き、その場の雰囲気を大切にするのもACの働きです。
ACをよく使う人の中には、人から何か頼まれたときに断るのは相手に悪いと思う人がいます。
そういう人は、“考えるA”を使って状況を伝えることを意識すると、自分も大切にしやすくなります。
8.これまでの人との関わりが「自分らしさ」をつくる
その人らしさは、5つの特性の働きの違いから理解することができます。5つの特性の働きの違いは、これまで親や周囲からの関わり(ストローク)を、どう受け止めてきたのかによります。ですから、その人のストロークのやりとりに、特性の働きの違いが現れます。
例えば、ストロークを“おとなしいAC”で受け止めやすい人がいます。時間を聞かれただけなのに、せかされているように思う人です。また、冷静に話しているつもりが、“指導するCP”で責めているように受け止められる人もいます。相手の反応を観察するとそれが分かります。
このように、ストロークのやりとりを知ることは、自分の癖に気づくきっかけになります。
1. 5つの特性からやりとりについて考える
誰もが5つの特性を少なからず持っています。誰かとやりとりするときは、この5つの特性を使い分けています。
例えば、“考えるA”で「今度のプレゼンのことで打合せしたいのですが」と、 “考えるA”からの回答を期待して話しかけたとします(これを“刺激”といいます)。相手が期待通り「良いですよ。少し待ってもらえますか?」と応えてくれました(これを“反応”といいます)。これは、“考えるA”から“考えるA”に返したことになります。このようなやりとりを“相補的なやりとり”といいます。
ところが、「今、忙しい!君の仕事だろう!」と言われたとします。これは“指導するCP”から“おとなしいAC”への反応です。言われた人は、言葉に詰まってしまうでしょう。このようなやりとりを“交差的なやりとり”といいます。このようなとき、どの特性を使えば、話を継続できるでしょうか。
ここからは、“心地よいやりとり”と“心地よくないやりとり”を、5つの特性で分析してみましょう。
2.心地よいやりとり、心地よくないやりとり(相補的なやりとり1)
- 刺激「今、何時かな(A)」
反応「16時ですよ(A)」
〔以後、刺激・反応は省略します〕 - 「今度の新人、パソコン上手だね(NP)」
「今度、教えてもらおうかな(NP)」 - (漫才を見て)「おもしろかったね!(FC)」
「久しぶりに大笑いしたよ!(FC)」 - 「報告書はできていますよね(CP)」
「申し訳ありません。まだできていません(AC)」
「そうですか。今日中には仕上がりますね(CP)」
「はい、なんとかできそうです(AC)」
前のページは、笑顔で続く会話のキャッチボールの例です。
投げかけた言葉に対して、想定内の返答が返ってくるような相補的なやりとりは、気持ちよく会話がはずみます。
このような会話が飛び交っている職場は相互理解や協力体制が取りやすく、居心地のよい職場でしょう。
相補的なやりとりとは、①A⇔A ②P⇔P ③C⇔C ④ P→CとC→Pのように、平行線のやりとりで表現できる関係のことを指します。
※Pには“指導するCP”と“育むNP”、Cには“楽しいFC”と“おとなしいAC”が含まれます。しかし、それを図示すると複雑になるので、やりとりを分析するときはP・A・Cを使うことが多いです。
3. 心地よいやりとり、心地よくないやりとり(相補的なやりとり2)
しかし、相補的なやりとりがすべて心地よいとは限りません。その一例が下記のようなやりとりです。
「すみません。一件、検討していただきたい案件があるのですが…(AC)」
「今頃なんだ、事前に聞いてないぞ(CP)」
「申し訳ありません。緊急にお願いできませんか(AC)」
「緊急、緊急って、この前もそうだったじゃないか!大した内容でもなかったのに(CP)」
「…これは本当に急いでいまして(AC)」
「君のところは計画悪すぎるよ。だから、成績も振るわないんだろう(CP)」
「と言われましても…(AC)」
“指導するCP”と“おとなしいAC”で交わされる想定内の相補的なやりとりではありますが、抜け出したくてもなかなか抜け出せない、心地の悪い会話です。
こんなときは、「お怒りはごもっともですが」「いきさつを話させてください」など“考えるA”を使って冷静に返したり、「○○さん、ちょっと顔怖くなっていますよ」など“楽しいFC”を使ってユーモアを交えてみたり、相手にとって予想外の一言を返してみたりすることで、心地よくない会話を切り替えることができます。相手によっては「もう、色々考えても何にも思いつかないんです。助けてください~」と“育むNP”に訴えるのも効果があるかもしれません。
4. 心地よいやりとり、心地よくないやりとり(交差的なやりとり)
あなたは「今、何時かな(A)」と声をかけました。
「今、〇時ですよ(A)」と返ってくると思っていたら、「時計を見たらいいじゃないですか(CP)」(⑤)とか、「そんなに急かせないでくださいよ。まだ、企画書の期限まで時間があるでしょう?!(AC)」(⑥)と返ってきたらどうでしょう。
予想外の一言に、一瞬言葉に詰まるのではないでしょうか。
このような会話(交差的なやりとり)になると、「不愉快だ」「何が言いたいの?」など、感情的なねじれのタネになることがあります。
こうしたことが重なると、人間関係のこじれにつながりやすくなります。
5.5つの特性を活用してよりよい人間関係を築いていく
自分と相手が、どの特性を使ってやりとりしているか理解できると、状況判断ができ対処法も見つけやすくなります。
例えば、自分が“おとなしいAC”で受け答えしてしまうとき、相手はいつも“指導するCP”から指示し命令しているのだということに気づくことができます。そして、そこから抜け出すために、“考えるA”でその背景を考え、自分のもっている特性を活かす対応を選択することが可能になります。
このように5つの特性について理解を深め、居心地よい職場を作るためにぜひ活用していってください。
【参考】 日常のやりとりには、相補的・交差的という表面のやりとりとは別に、裏面に異なるメッセージのあるやりとりがあります。話している言葉と真意が異なるやりとりで、人間関係を混乱させるもとになります。ここでは紙面の関係で言葉の紹介にとどめますが、交流分析の本や講座で学ぶことができます。
これで、「15分でわかるはじめての交流分析3~5つの特性編~」は、終わりです。
お疲れ様でした。