こころの耳
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このコーナーでは、一人でも多くの方に交流分析について学んでいただくことを目的として、ホームページに掲載された情報と同じ内容のデータのPDF版をご用意しています。PDF版は、交流分析を学ぶ、広めるという目的の範囲内において、印刷や内容の部分抜粋など自由にお使いいただくことが可能です。注意事項を良くお読みの上、ご利用ください。

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目次

1.交流分析とは
2.心(自我状態)のはたらき
3.人はつねにストロークを求めている

eラーニングで学ぶ 15分でわかるはじめての交流分析1

職場などにおいては、自分と他人との交流パターン(人間関係)に着目することで、人間関係の改善や自律的な生き方・自己実現に役立ちます。今回は、他者との関わり(ストローク)を中心に学んでいきましょう。
※学習時間の目安は15分です。

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1.交流分析とは

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1.庭に咲く花も…

きれいに咲く庭の花…
あなたはその種を栄養たっぷりの土にまき、
水をかけ、太陽に当てて、
いつも心にかけて世話をしてきました。
芽が出、茎が伸び、葉をつけ、あなたはその成長に喜び、花が咲くのをどんなにか楽しみにしていたでしょう。
そして、あなたが丹精込めて世話をした一粒の種は成長し、今、美しい花を開いたのです!

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2.人間の心を育てるストローク

人間の心もこの花と同じです。
赤ちゃんは生まれた時から親や周囲の人によって、抱っこされ、ほおずりされて育ちます。
「かわいいね」と声を掛けられ、笑顔を向けられ、たくさんの愛情あふれる関わりを受けます。そこから、「私はOK、あなたもOK」という人生の基本的な構え方を体感的に身につけていきます。
OKとは、「自分はここに存在していい」という自尊感情の原点であり、「私は明日に向かって生きていける」という自信の基になるものです。
このような関わりを「ストローク」といいます。

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3.ストロークは相手の存在を認めるメッセージ

肌の触れ合いやほほ笑み、愛情ある関わりなど、ストロークは「あなたという存在を認めているよ」という存在認知のメッセージです。自分という人間(人格)を形成するための心の栄養素でもあります。
人は生まれた時から死ぬまで、「心の栄養」であるストロークを求めます。抱っこのような肌の触れ合いを通しての身体的ストロークに始まり、成長するにつれ、ほほ笑みや気づかう態度などの精神的なストロークが増えます。
一方、「それをしては、ダメ」の叱責も、存在認知のひとつです。

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4.交流分析を提唱したエリック・バーン

交流分析は、1950年代半ば、アメリカの精神科医エリック・バーンによって開発された心理学です。自分と他人との交流パターン(人間関係)に着目することで、人間関係の改善や自律的な生き方・自己実現に役立ちます。
人は親子関係に始まり、他者との関わり(ストロークの授受)の中で成長します。人の思考や感情など、心の動きは言動に表れます。また、言動を変えればその基になる心も変化します。
交流分析が目指すのは、自律性の確立と自分と他者とのOK-OKな人間関係作りです。

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5.交流分析は幅広く活用されています

交流分析は治療のための心理療法として発展してきましたが、現在では教育、ビジネス、医療、介護、子育てなどで幅広く活用されると共に、職場におけるメンタルヘルス対策、コミュニケーションの活性化としても行われています。
メンタルヘルス対策における一次ケア(予防)、二次ケア(早期発見・早期治療)、三次ケア(職場復帰支援)のそれぞれの段階において、役立てることができます。

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2.心(自我状態)のはたらき

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1.心(自我状態)の成り立ち

エリック・バーンは普段は社会的地位のある冷静なクライアントが、ギャンブルに没頭すると人が変わったように行動する様子などから、人の心の成り立ちを三層構造で表し、「自我状態」と呼びました。
親(P ペアレント)、大人(A アダルト)、子ども(C チャイルド)の三層です。

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2.心(自我状態)の成り立ち(親:P)

親(P)

親や養育者と同じように考え、行動する部分。自分や他人に対して厳しく律したり、優しく支援・受容したりする。

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3.心(自我状態)の成り立ち(大人:A)

大人(A)

今、ここでの現実に対応し、計画立てたり冷静に判断したりする。

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4.心(自我状態)の成り立ち(子ども:C)

子ども(C)

子ども時代と同じように感じ、行動する部分。思うまま自由にふるまったり、親の顔色を見て素直になったり反抗したりする。

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5.心(自我状態)の機能

自我状態には5つの機能があります。
一日の中でも相手や状況に応じて私たちの自我状態は変わっていきます。
その場にふさわしい自我状態で適切に対応できるようになることが大切です。

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6.心(自我状態)の機能(親:P)

支配的な親(CP)

「ルールを守りなさい」、「不正をしてはダメだ」と社会の秩序やルールを守るよう厳しく求める

養育的な親(NP)

「よく頑張りましたね」と育成的・支援的に働く

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7.心(自我状態)の機能(大人:A)

大人(A)

今、ここでの現実を観察し、適切な判断を取る

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8.心(自我状態)の機能(子ども:C)

自由な子ども(FC)

「うれしい!」、「いやだ!」、「それ、やりたい!」と心のままに言動を取る

順応した子ども(AC)

「申し訳ありません。おっしゃる通りです」と親や上司の意向に素直に従ったり反抗したりする

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9.自我状態のあらわれ方の違いが個性になる

人の個性は、外から見てそれとわかる違いがあります。いつも自分や他人に厳しい人、人に温かく世話焼きな人、厳しい状況でも冷静さを失わない人、いつも明るく快活な人、素直でおとなしい人。
その違いは自我状態のはたらきの違いによるものです。5つの自我状態のはたらきの強い・弱いは、これまで親や周囲からどのように関わられ、どう受け止めてきたのか、人からひとへの関わり(ストローク)の違いです。
個性を形作っているのは、こうしたこれまでの自分の心のはたらき方によるものです。

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3.人はつねにストロークを求めている

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1.心が快になる肯定的ストローク

ストロークにもさまざまな種類があります。
褒められたり、労われたり、笑顔であいさつされたり…
心が快になるのが、「肯定的ストローク」です。
その中で、「あの難しい契約をまとめあげるとは、〇〇さんはよくやった」など、相手の行為や行動に対してのストロークを条件付きストロークと言い、相手は「次も頑張ろう」というモチベーションを助長します。
反面、伝え方を間違うと「難しい契約をまとめられなければ、〇〇さんはダメだ」と逆のメッセージと受け取られて、相手を追い込んでしまうこともあります。
人が求めているのは、「あなたのことが好き」、「君はうちのチームになくてはならない存在だ」など、相手の存在に対して送られる無条件の肯定的ストロークです。
人は無条件の肯定的ストロークを受けることによって自尊感情が高まり、前向きに生きていけるという自信を得ます。

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2.心が不快になる否定的ストローク

反対に、叱責されたり、にらまれたり、舌打ちされたり…
心が不快になるのが、「否定的ストローク」です。
その中で、「こんなケアレスミスをしたら、ダメだよ」など、相手の行為や行動に対する条件付きストロークは、適切に伝えれば、「ケアレスミスさえしなければ、君はOK」というメッセージと受け取られ、相手は、「次からは気を付けよう」と思う教育的ストロークになります。
また、「あなたのことは嫌いだ」、「君の代わりはいくらでもいる」など相手の存在を否定するような、否定的無条件ストロークを受けると、自尊感情が低下し、それが続けば心身の不調を生じることにもなりかねません。

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3.ストロークが不足すると、否定的なものでも求めてしまう

「おはよう」と笑顔で声を掛ければ、必ず「おはよう」と笑顔が返ってくる…
人はそのことを期待しています。しかし、相手が気づかなかったり、無視されたりすると、途端に不安になることはありませんか。
ストロークが不足する状態が続くと、無意識に、否定的なストロークでもかまわないので、求めるようになります。例えば、いじめられていてもそのグループから抜けられないのは、離れたら誰からもストロークが来なくなり、その孤独感に耐えられないからでもあります。

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4.職場でこのような経験はありませんか

職場でこのような経験はありませんか。

部下 「課長、〇〇産業様の営業活動がうまくいってないのですが、どうしたらいいでしょう。」
上司 「相手のニーズが把握できているのか。提案が的外れではうまくいかないよ。」
部下 「はい。でも、新人の担当者に要望を聞いていても、なかなかうまく進まないのです。」
上司 「それでは、もっと上の立場の決定権のある人に話をしてみたらどうなんだ。」
部下 「はい。ですが、忙しくて、なかなか会ってもらえないのです。」
上司 「では、メールで企画書を送って読んでいただけないのか。」
部下 「はい。そうなんですが、私も他に仕事を抱えているので、企画書をまとめる時間が取れなくて…。」
上司 「できない、できないって、君は一体やる気があるのか!いい加減にしろ!」
部下 「…」

気がつけば、同じ人としている嫌な気分で終わるやりとり。

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5.無意識にストロークを求める嫌な行動

前ページのやりとりのように、アドバイスを求めてきて全部否定する部下、わざと喧嘩をふっかけてくる人、毎回同じ失敗をしてわざと叱られるように仕向けているような人、些細なことで大騒ぎを繰り返すような人、世話焼きで他人のことにも手を出し、最後にすべてを台無しにしてしまう人…
これらも無意識にストロークを求める行動だといえます。

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6.ストロークを得るためのさまざまな心理ゲーム

嫌な行動につい乗せられてしまい、お互いにさらに嫌な思いで終わる。気づけば、同じ人と何度も同じようなパターンを繰り返している…
交流分析ではこれを「心理ゲーム」といいます。
心理ゲームが始まったと気づいたら、いつものパターンのやり取りを止め、ユーモアで返したり、その場を離れたりして心理ゲームを続けないことです。嫌な気分をひきずらないで気持ちを切り替えましょう。
ストローク不足が心理ゲームにつながるので、普段から肯定的なストロークの交換を心がけることも大切です。

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7.ストロークの感じ方が、人生の構え方・生き方を決めていく

私たちは乳幼児期から現在にいたるまで、周囲のストロークを受けて、心の状態である自我状態を育ててきました。自我状態の原型は学童期ごろにできあがりますが、その後も発達を続けています。
ストロークの受け取り方の積み重ねから、私たちは人生の構え方、生き方、人生観にも大きな影響を受けます。人間関係の中で劣等感が強くなったり、独善的になったり、自閉的になりやすくなったりするのもその影響と言えるでしょう。
ストロークの受け方、感じ方によって、人生観や生き方も決まっていきます。

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8.ストロークの出し方を変えれば、生き方が変わる、人生が変わる

自分がどのような人間関係を築きたいのか、人生をどう描きたいのかは、自ら選択できるものです。また、自分のストロークの授受の方法を意識すれば人間関係も変えることができます。
「あなたを信頼している」、「君ならできるよ」など、無条件肯定的ストロークで相手の存在をしっかり認めましょう。
否定的ストロークも、「同じミスはくり返さないよう、気をつけて」など、相手の行為・行動に対する条件付けを明確にした上で教育的に伝えるように心がけましょう。
ストロークの送り方を変えていくことで、周囲からも同様のストロークが増えるでしょう。職場でも家庭でも、「私もあなたもOK」という健全で協調的な相互信頼の関係が築かれることで、自己実現を可能にしていきます。
人生を自分のありたい方向に舵を切ることができるのは、自分自身です。

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9.ストロークはブーメラン効果

ストロークはブーメラン効果と言われます。
「おはよう」、「お疲れさま」、「よく頑張りましたね」など、肯定的ストロークを送るよう心がければ、肯定的ストロークが返ってきやすく、「ダメ、ダメ」、「また失敗したの?」、「・・・(無視)」など、否定的ストロークを送ることが多いと、否定的ストロークが返ってきやすいといった傾向があります。
自分自身のストロークの出し方の傾向に気づいてみましょう。
職場でも家庭でも、ほめる、ねぎらう、感謝する、笑顔を向けるなど、出し惜しみせず、肯定的な無条件ストロークをしっかりたくさん送りましょう。
ブーメラン効果で、そこからストロークの輪が広がります。
職場が、家庭が、そして社会全体が、心明るく元気になります。

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10.交流分析の哲学

I am OK, You are OK

  1. 人は誰でもOKであり、誰もが考える力を持っています。
  2. 過去と他人は変わらない。
    変わるのは、現在と将来の自分だけです。
  3. 自分の運命は自分自身が決め、そしてその決定を変えることができます。
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これで、「15分でわかるはじめての交流分析1」は、終わりです。
お疲れ様でした。