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第40回:ヤフー株式会社(東京都千代田区)

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ヤフー株式会社
(東京都千代田区)

 ヤフー株式会社は、1996年に設立されたインターネット上の広告事業を中心とした情報通信業である。
 従業員数は、6,696人(2018年6月末現在)。本社には約5,600人おり、エンジニアが約半数である。
 今回は、ピープル・デペロップメント統括本部グッドコンディション推進室のリーダーである看護師の竹内幸子さん、保健師の前田由香さん、産業医の下方征さんの3人からお話を伺った。

社員の心身の健康管理を、コンディションを整えて働くこととして捉える

最初に、ヤフー株式会社の社員の健康への取組みに対する考えについて、およびメンタルヘルス対策の体制の状況について、三人からお話を伺った。

「“ピープル・デペロップメント統括本部”では、社員の人事関係の他に、健康面、オフィスの労働環境などを統括管理しています。その中の“グッドコンディション推進室”は、健康面を中心に対応しています。これまでの疾病管理を中心とする健康管理の視点から、昨今の“健康経営銘柄”のようにより積極的な方向に健康保持増進の考えはシフトしてきています。前社長の“コンディションを整える”というキーワードをもとに、以前の“健康推進センター”から“グッドコンディション推進室”に名称変更しました。」

「疾病という切り口では社員の健康状態に問題は無くとも、日々のコンディションに関しては良い状態もあれば、悪い状態もあります。業務遂行にあたり、社員には最高のコンディションで働いて頂き、最大のパフォーマンスを出してもらいたいとの思いがあります。どうすれば働く上でベストのコンディションにできるのかを課題と捉え、代表取締役自らCCO(Chief Conditioning officer)に就任しました。すべての働く人が心身ともにグッドコンディションで業務に取り組むことができる企業を目指し、『UPDATEコンディション―働く人の身体の健康(安全)と心の健康(安心)をUPDATEする―』と、宣言しています。実際、社員食堂とタイアップして栄養バランスのとれたメニューや、低カロリーメニューを用意し、食事面からのアプローチを行ったり、生活習慣病の予備軍に対してデバイスを配布して運動することを促すなど、社員全体の健康度を上げる活動も始めています。」

「会社全体で、産業医9名、保健師など看護職6名が勤務しています。遠方の地方拠点によっては、別途、地元の産業医と契約しているところもありますが、大阪や名古屋の事業所には東京本社の産業衛生スタッフが直接訪問もしますし、またテレビ電話会議システムを活用することで本社と同様に関わることができています。」

「健康に関する社内相談窓口は、“グッドコンディション推進室”で受けています。メールでの相談もありますし、ウェブから予約をした上で看護職との対面相談もあります。基本的には、初回面談を看護職が行い、その後必要があれば産業医につなぐことになります。初回から産業医が対面相談をする場合もあります。外部の相談窓口は特には設けていません。」

「当社では、“1 on 1”という制度があり、上司と部下が最低週一回は、1対1で面談するように決めています。仕事の話だけではなく、部下が話したいことを上司が聞いて対話をするための時間を確保することが目的です。このような場で、上司が部下の業務や体調の変化についても早期につかみ、産業保健スタッフにつながる事例も増えています。」

社員の心身の健康管理に関して、社員がコンディションを整えて働くことにより、最大のパフォーマンスが引き出されると考え、単に健康とか病気とかという切り口だけではない健康管理を目指している。また、上司と部下が週一回、1対1で面談する仕組みをつくることで、業務や体調の変化を早めにつかむことができ、早期に看護職等による社内相談窓口につなげることができる。

職場復帰支援における検討会や面談では、できるだけ多く上司も参加する

次に、職場復帰支援プログラムについてお話を伺った。

「以前の“職場復帰支援プログラム”においては、統一した規程や明確な基準がありませんでした。そのため、複数の産業医が対応する中で、産業医によって復職や就業措置についての判断にばらつきがありました。また、職場復帰しても再休職してしまうといったこともあり、出社の継続率を上げたいという思いから、2014年にプログラムを作りなおすことになりました。」

「2014年に作り直した“職場復帰支援プログラム”は、より復職へ向けての段階設定を細かくし、“①休職中の月1回の来社面談”、“②生活リズム表を用いた復職判定”、“③主治医からの診断書および診療情報提供書の確認”、“④関係者(人事、上司、産業保健スタッフ)による復職プラン検討会”、“⑤関係者と本人を含めた復職面談”、“⑥仮復職(2週間ごとに段階を踏んだ時短勤務制度、2週間ごとの産業医面談)”、“⑦正式復職後の6ヶ月間に渡る段階的な就業制限”の7段階を経て復職する仕組みとしました。【図】」

「“①休職中の月1回の来社面談”は以前からありました。面談は産業医と看護職が同席して行っています。面談を通じて本人の復職への意欲・体調の回復が確認できれば職場復帰が近づいてきたと考えます。“②生活リズム表を用いた復職判定”に向けて、産業医から“生活記録表”を渡し、2週間生活リズムを記録してもらいます。生活記録表では、2週間の睡眠時間や日中の活動度を見ることにより、生活リズムが安定していることを確認しています。その後、“③主治医からの診断書および診療情報提供書の確認”のため、産業医から主治医宛てに“職場復帰支援に関する情報提供依頼書”を書きます。診療情報提供書には、これまでの治療経過や職場復帰時の配慮についてのほか、当社には仮復職制度がありますので、その利用に関する意見も記載してもらうようにしています。」

「以前は、本人が体調良くなったと感じていても、実際に復帰して就労してみると体力が回復していなかったなど、心よりも身体面の準備不足で再休職になることもありました。“生活記録表”には、生活リズムが整っていることを確認するだけではなく、毎日の6段階の“活動度”と気分を表わす“顔のマーク”も合わせて書くことにより、活動時間や状態を本人が可視化できます。1日に7時間45分働くことができるまで体力的に回復しなければいけないことを意識していただくことにつながりました。この“生活記録表”は、主治医に見てもらってもかまわないと伝えており、主治医や私たち産業保健スタッフと共有して、アドバイスを受けながら、復帰に向けて準備しています。」

「次に、“④関係者(人事、上司、産業保健スタッフ)による復職プラン検討会”を開きます。まず、これまでの休職歴や経過などを共有し、復職プランを作成していきます。基本的なプランは、最初の仮復職2週間は5時間勤務、その次の2週間が6時間勤務。その後、正式な復職となり、残業禁止のフルタイム勤務で2か月間続けます。その後、2か月ごとに残業1日に1時間まで、2時間までと増やしていき、6か月間で終了するという流れです。事案ごとに、この基本的なプランで行くか、アレンジするかを検討します。その中で、上司には、検討内容を踏まえて、具体的な業務内容を、復職面談の時までに考え、まとめておくように依頼します。」

「復職プランによって復職した方からは、『職場だと上司と自分だけでの話で少し心配ですが、各段階でいろいろな人と連携することで、上司以外とも話す機会があり、関係者の方々によって、幅広く支援されている感じがして安心した。』といった感想がありました。」

「検討会を行わないと、関係者それぞれ言っていることがバラバラになってしまう事態が懸念されます。特に、産業医が本人と上司を別々に面談した場合、その後、本人と上司が話すと内容が違っていたということが考えられます。解釈が違ってしまうと私たちが期待しているような措置、支援が現場では実行されないことになりかねません。本人も納得がいかないことがあるでしょう。検討会を通じて皆の足並みをそろえることが大事です。」

「検討会で復職プランが決まると、今度は本人も加わって、“⑤関係者と本人を含めた復職面談”の場を持ちます。内容を共有した上で、本人からの不安な思いや具体的に心配な点をお聞きして、すり合わせを行い、問題ないということであれば“⑥仮復職(2週間ごとに段階を踏んだ時短勤務制度、2週間ごとの産業医面談)”が始まります。当社では、最初の時短勤務の部分を“仮復職”と呼んでおり、最大4週間行います。そして検討会のメンバーが再度集まり、勤怠などに問題がなければ正式に復職可となり、 “⑦正式復職後の6ヶ月間に渡る段階的な就業制限”が行われます。」

「復帰後は基本1か月に1回、産業医と看護職による本人との面談を行っています。内容によっては、環境調整が必要などの場合は、上司や人事部門も一緒に面談に入ってもらうこともあります。そして、6か月目には、産業保健スタッフと本人との面談に上司も加わって、復職プランが終了することを確認する面談を行います。」

「新たな“職場復帰支援プログラム”を導入する前【2011年5月~2014年9月末】と、導入した後【2014年10月~2017年6月末】の復職者の状況を比較すると、復職1年後の出社継続率は、導入前の68%から、導入後は79%と改善が見られました。また、平均休職期間は、導入前よりも導入後の方が、長くなりました。出社可能な生活リズムへの回復が確認できるまで、しっかり療養してもらうようになったことが原因だと考えています。」

「“職場復帰支援プログラム”を新たに作成したことで、どの産業医が担当しても同じような視点で判断できるといった標準化ができたと思います。さらに、復職が見えてきた段階から、復職後6か月までの間の検討会に、上司も4回同席をします。特に最初の3回は、かなり密な感覚で面談を行っていますので、復職後の配慮の必要性も感じられると思います。そのことは、しっかりと現場に伝わっていると思います。本人にとっては、これまでの経緯や産業医が伝えた職場復帰時の注意点について上司も分かっていることで、安心につながります。職場復帰後は、些細なことであれば、上司と本人とでこまめに面談をしていただくことで、不安が解消したり現場で解決できたりします。この仕組みは本人だけではなく、上司にとっても経験を積むことで、成長につながります。日頃の支援がうまくできるということは、自然とラインによるケアも充実していきます。“職場復帰支援プログラム”により上司にも情報を共有し一緒になって進めていく機会が作られたことは、とても良かったと思います。」

「今後、“職場復帰支援プログラム”を、さらにブラッシュアップしようと考えています。短期間で組織が変わる会社ですので、人事部門とも連携して、上司が変わるタイミングなどにも注意して本人の支援を続けていければと思います。また、今回、上司の関わりが重要だということが分かりましたので、もっと面談の頻度を多くしていきたいと思います。さらに、プログラムが終了した職場復帰から6か月後のフォローに関しても、上司を中心に職場でケアしていただけるように、チェックリストのようなものを作成しようと考えています。」

“職場復帰支援プログラム”に、“生活記録表”の作成や主治医から診療情報提供書の確認、ならびに復帰までの道筋が見通しやすい復職プランの作成などを定めている。また、職場復帰に関する検討会や面談では定期的に上司も加わるため、上司にとっても復帰に関する対応について経験を積む機会となっており、日常のラインによるケアの向上につながっている。こうしたことが功を奏し、復職1年後の出社継続率が改善しているようである。

【ポイント】

  • ①上司と部下が週一回、1対1で面談する対話の中から、業務や体調の変化についても早期につかみ社内相談窓口につなげることができる。
  • ②“生活記録表”の作成により、休職者は、生活リズムや体力面の回復、気分の状況などを可視化できると共に、主治医等関係者と共有することでアドバイスをもらうことができる。
  • ③職場復帰に関する検討会や面談では、定期的に上司も加わることで、経緯や産業医による注意点を把握することができ、また復帰に関する対応について経験を積む機会にもなり、上司による日常的な面談や支援を円滑に進めることができる。

【取材協力】ヤフー株式会社
(2018年11月掲載)