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第38回:株式会社モスフードサービス(東京都品川区)

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株式会社モスフードサービス
(東京都品川区)

 株式会社モスフードサービスは、1972年創業。ハンバーガー専門店「モスバーガー」をフランチャイズチェーンなどにより国内に1,353店舗、海外に344店舗展開している(2017年9月末現在)。また、その他様々な飲食事業を国内外で行っている。
 従業員数は、全体で1,335人(2017年3月現在)。その内、モスフードサービス単体の正社員数は約580人。本部に約360人、各店舗に約160人、その他子会社への出向や海外駐在などが約60人である。
 今回は、人材開発部人事グループリーダーの永井真美さんを中心に、精神保健福祉士の秋山真貴子さん、国家資格キャリアコンサルタントの梶田マリさんの3人からお話を伺った。

社内外にさまざまな専門職を通じた相談窓口を設置することにより幅広く対応する

最初に、メンタルヘルス対策取り組み全般について、お話を伺った。

永井さん
「当社の本部社員においては、フランチャイズ加盟店に情報提供や指導を行うスーパーバイザーが約70名と最も多いです。その他、商品開発や店舗開発、本部管轄を行う者などがいます。人材開発部人事グループ(人事部門)にて、メンタルヘルス不調者の対応や休業中および職場復帰支援などを行っています。また、上司から心配な部下がいるので相談対応してほしいといった場合は、人事部門で対応しています。これまで約3年間、私1人でほぼ対応してきたのですが、今春、秋山さん、梶田さんが入社したことで、現在は3名で対応しています。」

「その他、事業場内産業保健スタッフとしては、産業医が2名と、保健師が1名いて、3名とも非常勤体制となっています。産業医は、人事部門で面談の日時を調整した上で、職場復帰の可否の判断やその後のフォローを行っています。保健師は、“健康相談室”と称して、日頃の心身の不安や健康診断結果に関すること、あるいは少し体調が良くない時などの相談対応を行っています。保健師には月2回の出勤をお願いしていますが、相談対応の時間と場所を社員に知らせて、いつでも自由に相談できる仕組みにしています。こちらは人事部門とは独立した窓口として運営しています。」

「また、毎月の衛生委員会には、産業医や衛生管理者も参画しています。労働災害の発生状況報告などリスクマネジメントやコンプライアンスに関することを話し合い、災害防止に努めています。」

「メンタルヘルス研修に関しては、管理職が集まる全体会議の中で、少し時間をとって、産業医や保健師に講演をしていただきました。また、昨年、管理職を対象にEラーニングによるラインケア研修を実施しました。ちょうどストレスチェック制度が始まったこともあり、メンタルヘルスに関する基本情報を管理職全員に知ってほしいとの考えから始めました。」

「その他、外部EAP機関による電話相談窓口も設置しています。自分自身で不安を抱えた時に、周囲の方に相談するのも一つだと思うのですが、社外の専門家にも客観的に話をきいてもらいたいという時に、気軽に相談できる窓口として紹介しております。」

秋山さん
「私は障がいのある方のジョブコーチとしての役割が主です。サポートの中で、周囲から仕事の指示の出し方や、メンタルヘルスケアに関することの他、他者とのコミュニケーションなどをコーチングしていくことも行っています。障がいをもっていても、もっていなくても、職場において“働く”ということは共通です。そこで、コミュニケーションや人間関係の問題は少なからず発生しますので、最近では、障がいをもっていない社員も合わせてメンタルヘルスケアのサポートも行っています。」

「入社して間もなく、当社は休職期間が他社よりも長く、その間とても手厚いサポートをしていると思いました。休業期間も休業者とやり取りをしながら、『いつでも戻ってきてね』というメッセージを出し続けていくことは、大事だと認識しました。休職制度が手厚い分、職場復帰後の支援についての体制にいても、今後は少しずつ作っていけたらと思います。」

梶田さん
「秋山さんが言っていたように、休職制度が手厚い会社だという点は、入社した時、私も同様に驚きました。職場復帰を待つ体制ができており、臨機応変に対応していると思いました。私はこれまでにいろいろな会社の休職制度を見てきたのですが、当社の場合は人を見て、様子を見て、産業医と相談しながらきめ細かく対応を決めていくというところにも、優しさがある企業だと感じています。」

永井さん
「例えば、職場復帰した後でも、また少し不安になったり、周囲との関係に悩んだりすることが少なくはないと思います。これまでは私の方で、あまり間隔をあけない程度に、状況確認をかねた相談対応を行っていました。今後は、二人増えたことにより、復帰者をフォローアップできる体制ができたので、期間を定めて定期的に状況確認と対策を行っていきたいと考えています。」

「また、そもそも休業に入らないよう、一次予防にも力を入れていきたいと思います。例えば、『今後、どのように自分の仕事人生やキャリアプランを立てていけばよいか』といった相談であれば、国家資格キャリアコンサルタントの梶田さんが相談対応しますし、『不安を抱えているようで、状況確認した方が良さそうだ』と思ったら、精神保健福祉士の秋山さんにつなげるといったように、様々な種類の相談にいくつかの案を提示できるというのは、人事部門にとって非常に良いことだと思っています。早い段階で相談できる機会を設けることで、本人も心の負担が軽くなる効果があると思いますし、私どもとしても早めに対処することができるので、お互いにとって良い面があると思います。このような相談体制を社内に周知していくことも今後の課題であります。」

人事部門では、産業医の相談調整を行う他、精神保健福祉士や国家資格キャリアコンサルタントが直接相談対応している。また、人事部門を通さずに、社員が自由に利用できる保健師による健康相談や、外部EAP機関による電話相談窓口も設置しており、幅広く対応している。

休業前と復帰前に職場復帰支援の流れを示し、手続きや復帰部署が変わる可能性などを説明する

続いて、職場復帰支援の取り組みについて、永井さんを中心にお話を伺った。

永井さん
「休業に入る前に当社の職場復帰の流れについて伝えておき、さらに復帰の目途がついた段階でも、再度手順について説明します。復帰する部署が変わる可能性があることも事前に伝えています。」

「体調が悪くなり、本人から休みたいという話があれば、主治医からの診断書を会社側に提出していただいた上で、休業期間の見通しを本人と人事部門との間で共有しています。例えば、3か月くらいと示された場合は、社内規程に基づき支払われる給与や手当金に関する金銭面の話をした上で、今後の手続き全般について説明し、療養に入ることになります。」

「休業期間中の窓口は、不調時から上長がずっと支援してきた場合は、そのまま上長にお願いしています。その方がスムーズにやり取りすることができています。診断書の提出時期に合わせて、定期的に状況確認を人事部門から上長に依頼し、上長を介して人事部門に休業者についての報告してもらっています。上長での対応が難しい場合は、私たち人事部門が直接、本人と連絡をとって、体調や状況を確認します。」

「連絡頻度は、1ヶ月から2ヶ月に一度くらいが多いです。短い期間で会社側から連絡をとると、本人にとって負担が大きくなることもあり得ます。療養というからには、自宅でゆっくりしている時間を大切にしてあげたいという気持ちがあります。また、一人暮らしの方であれば『食事はとれている?』など、生活状況の確認もしています。」

「連絡方法は電話が多いのですが、対面で行う場合もあります。会社側に診断書を提出する際に、私たちから出向いて行き、本人の自宅の近くで会うこともあります。もちろん本人の負担も考慮しつつですが、会社側として、『あなたのことを心配していて、戻ってきてほしいんだよ』という会社側の姿勢も伝えたいこともあり、こちらから出向くようにしています。会社からのこうしたメッセージは大事だと思っています。あとは、職場復帰可能な状況になれば、対面相談を行い、顔色などを含めて状況確認した上で、主治医に職場復帰可の確認をしていただく流れになります。」

「職場復帰可の診断書が提出された後は、それを基に、産業医による面談を行い、会社側で復帰時の勤務時間や復帰職場などの調整をした上で、職場復帰する流れとなります。」

「復帰後は、まず短時間勤務からはじめる方が多いです。時間も5時間や6時間など細かく設定することが可能です。職場復帰後の産業医面談時には、体調確認と合わせて、勤務状況や業務が負担に感じていないかなどの確認を行っています。本人および産業医や人事部門とで状況を勘案しながら、少しずつ時間を延ばしていき、3か月後には8時間の通常勤務ができることを目指しています。」

「復帰場所は、基本的には、元の部署に戻るようにしています。なるべく環境変化が少ないようにすることを、第一に考えています。上長にも事前に本人の状況や、負担に感じやすい場面や対策案などを説明し、復帰後の配慮をお願いしています。しかしながら、最初は違う部門で復帰をすることもあります。例えば、当社には直営店があります。店舗部門だとどうしても立ち仕事中心になるため、体調により立ったままの業務が難しい場合は、スタッフ部門でまず復帰することもあります。スタッフ部門で、事務作業を中心に行った後、体調がある程度戻って、仕事に支障がない状況になれば、産業医との面談の上、店舗部門に改めて戻るという場合もあります。」

「再休業後の復帰はなかなか難しいと感じているので、最初の休業から順調に復帰できるよう、慎重に進めています。『人を大切にする』という当社のスタンスが基本線としてあります。皆が楽しく仕事をしてほしいという思いがベースにあり、何度もお休みしないようにサポートしています。実際、再休業した方はほとんどいません。」

「お客さまから『モスバーガーに行くと元気になれる』というお話を伺うと、私たちもそのようなお店でありたいと思います。そのためには、モスバーガーのスタッフが元気でないとお客さまを元気にできないと考えています。スタッフにとっても、お店そのものが活力再生産の場だと言えるでしょう。当社の社員の多くは、ことあるごとに『モスは、モスは、』と自分の会社のことを“モス”と言っているところからも自分の会社のことが好きな人が多いと感じています。」

「スタッフが元気でないとお客さまを元気にできない」との考えのもと、再休業を防ぐために、休業に入る前と復帰の目途がついた段階で、職場復帰支援の流れを示し、手続きや復帰の部署変更も含んだ業務軽減などについても説明するよう心がけている。また、復帰後は、短時間勤務や軽作業職場への一時的な配置替えなどを通じて、慎重な支援を行っている。

【ポイント】

  • ①社内外にさまざまな専門職によるさまざまなタイプの相談窓口を設置することにより幅広く対応する。
  • ②休業に入る前と復帰の目途がついた段階で、職場復帰支援の流れを示し、手続きや復帰の部署変更も含んだ業務軽減などについても説明する。
  • ③復帰後、短時間勤務から始める場合は、通常勤務に戻る目標時期を定めた上で、産業医面談で状況確認しながら時間設定していく。