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第36回:株式会社レンタルのニッケン(東京都千代田区)

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株式会社レンタルのニッケン
(東京都千代田区)

 株式会社レンタルのニッケンは、1967年の創業以来、土木・建築・産業関連機械を中心とした約6,800種類、90万点の商品のレンタルサービスを行っている。東京本社、足利オフィスを中心に全国17支店、241拠点体制である。
 従業員数は、2,918名。内、契約社員は542名、サービス職は991名である。(2017年4月現在)。
 今回は、健康相談センター担当課長の相聞 小和(そうもん こより)さん(本名:渡部富美子さん)にお話を伺った。

出張巡回面談を通じて、社員全員と対面すると共に職場の現状を知る

最初に、メンタルヘルス対策の取り組み、相談窓口、教育研修などについて、お話を伺った。

「よく聞かれるビジネスネームの由来は、創業20周年行事の1つの施策として創業者が、『公私の区別をつけよう』と、考案しました。社内では“ビジネスネーム”を名乗り、専門業務を行い、仕事が終わったら“本名”に戻って個人の生活に切り替える、という毎日です。私は、相手の話をよく聴く仕事なのと万葉集の相聞歌の歌集から、“相聞小和”と名付けました。」

「10年前に産業カウンセラーとして入社しましたが、その翌年に“健康相談センター”が開設となりました。まず、メンタルヘルス関連の相談もしやすい産業医を探しました。社員2名からのスタートでしたが、現在は全員で5名、社内カウンセラーは私を含め3名となりました。」

「社内の健康相談窓口専用の電話は本社にあり、またカウンセラーも全員携帯電話を持っています。全従業員に配布する“社員手帳”にも相談窓口として記載していますので、出張中も、休日にも相談電話がかかってくることがあります。実際、10年前に相談対応を始めた頃は、メンタルヘルス不調者が多く、最初は電話やメールによる相談対応で手一杯でした。そのうち、対面を必要とする相談も多くなってきました。特に地方からの相談の場合、電話やメールで対応した後、実際に現場に行ってカウンセリングを行うことになります。現場に行った時は、その相談者だけでなく、所内全員のメンタルヘルスケアを行うこともありました。」

「その後、2,3年が経過しメンタルヘルス不調者の対応が一段落してきたところで、『今までは不調者への対応ばかりだったが、もっと予防対策に力を入れたら、メンタルヘルス不調者は減るのではないか』と考えるようになりました。そこで上司に約240の全事業場をまわる“職場巡回面談”を提案し、ようやく開始することになりました。2010年7月から約6年をかけて、すべての事業場をまわることができました。既に2巡目に入っている箇所もあり、現在まで述べ295か所で職場巡回面談を実施しています。」

「最初は簡単に考えていた巡回でしたが、全国各地に営業所があり、地方の営業所の多くは交通の便が悪いところでしたので、移動面でも非常に苦労しました。ただ、実際に営業所に出向いたことで、社員が喜んでくれたり、『なぜこの職場で不調者が出たのか』、職場の現状を肌身で感じたりできました。職場環境そのものや営業所全体の雰囲気・考え方、上司の関わり方、時にはハラスメントらしきものなど、現場に行かないと分からないものが多くありました。また、東日本大震災や熊本地震の時にも、面談に出向き、多くの社員が被災した中で、お客様のために頑張る姿にも感動しました。」

「メンタルヘルス研修に関して、これまで新卒採用者や新任管理者に対しては行っていましたが、管理者全員には実施していなかったことに気づき、2014年から全国各支店と東京本社、足利オフィス、関連会社を含め計18回の研修を実施しました。各地域では、所長会議開催時に2時間の研修枠をもらい、講師としてまわりました。全所長に研修をするには、とにかく全域をまわらなくてはという使命感もありました。この研修の中で、職場復帰支援についての具体的な説明も行いました。さらに今年は、昨年より実施したストレスチェック結果を分析した上で、1時間くらいの復習を兼ねたラインケア研修を実施したいと考えています。」

「健康相談センターを開設したことで、社員も管理者も何かあったら、すぐに相談しやすい環境ができてきたと思います。管理者からは、『事例性のある気になる社員がいるので、相談対応してほしい』という依頼も多くあります。特に、新任管理者は、期待と共に不安やプレッシャーで一杯一杯の状態だと実感しています。さらに上級管理者である支店長や経営者は、自由裁量もあるのでストレス度は低い結果でした。その自由裁量のある上司と部下との狭間にいる管理者、特に新任管理者にとっては、自分自身で調整できない中で、無理をしてしまい過重労働になりがちです。そこに他からのサポートがないと、一気に不調になってしまいます。そうなる前に、相談できることが大事だと思います。」

「健康相談センター」を設置し、メンタルヘルス関連の相談もしやすい産業医や、カウンセラーを配置したことで、日頃の相談や不調者への対応窓口が機能的となった。また、カウンセラーが「職場巡回面談」として、全事業場をまわることで、全社員の状況や取り巻く職場環境を把握し、状況に合わせた研修を実施するなどメンタルヘルス不調の予防につなげている。

職場復帰後に本人と上司が状況や回復度を記入しお互いに確認し合い調整していく

次に、職場復帰支援の取り組みについて、お話を伺った。

「“職場復帰支援プログラム”は、約7年前に産業医や人事部長と話し合って、健康相談センターで作成しました。」

「まず休業に入る時には、本人が上司に休業診断書を提出した後、上司は人事部に提出すると共に、健康相談センターに状況を伝えることになっています。以前から本人の状態が分かっている場合は良いのですが、急に報告があった場合は、私が直接本人と電話や対面での相談対応を行います。」

「休業中は、上司に状況報告ができる状態の場合、原則週一回電話で報告することとしています。報告窓口として上司が難しい場合は、私の方で対応しています。体調や、休業中の過ごし方、通院状況について、確認をしています。『あなたの声が聞きたいから』と、メールではなく電話による報告としています。また、休業中は、一人暮らしや寮暮らしの方は原則として実家や家族のもとに戻るように促しています。誰かと話したり、面倒をみてもらったり、何かしら他者と触れ合う機会があることが大切だと思っています。」

「その後、本人が職場復帰の意向を示した後は、たとえ主治医が復帰可能と判断しても、『職場復帰支援プログラムのルールに則って、職場復帰の最終決定を行います』と、きちんと伝えています。本人に、2週間の“生活記録表”を記入してもらい、毎日の生活リズムと体調レベルを確認します。また“職場復職願”も記入してもらい、『職場復帰後の再発を予防するために心がけること』の項目には、本人自身で、じっくり考えてまとめるよう伝えます。産業医面談では、自らが再発しない対策を立てているかどうかが大切なポイントになります。」

「事前に本人の職場復帰希望の意思を確認し、組織長から意見をもらった上で、産業医面談を実施しています。この産業医面談では、地方の社員にも、必ず東京本社に来てもらうことを前提としています。遠くからの移動は大変ですが、全社的なルールとして運営し、復帰可否の指標にもなります。その際、職場復帰可能の診断書、生活記録表、職場復職願の他に、“お薬手帳”も持参してもらいます。生活記録表の内容は、生活リズムが整っているか、睡眠が十分とれているかを確認すると共に、薬の種類や用量についても確認しています。例えば、営業職の場合、服薬の内容によっては、車の運転を控えた方がいいと思われる場合、もう一度、主治医に意見を伺い、職場復帰の可否を検討することもあります。産業医面談の際は、私も同席し、日頃から巡回面接して把握している業務に関する情報を産業医に伝え、本人のサポートもしています。その後、産業医の承認を得て実施する“復職判定会議”では、産業医面談での会話内容もとりまとめて報告し、判断材料にしています。」

「“復職判定会議”では、組織長、人事部、健康相談センターの構成員によって、判定を行います。この会議をもとに、最終的に職場復帰可否の決定をいたします。その決定事項はまず組織長に伝えられ、組織長から本人に伝わる流れになっています。」

「職場復帰は、原則通常のフルタイム勤務を条件としています。短時間勤務から始めない代わりに、残業をさせず、業務量を抑えながら、やさしい仕事内容から始めるよう依頼しています。業務を細かく分けて一つひとつ丁寧に進めてもらうようにしています。」

「職場復帰した後、最後にもう一枚“就業状況報告書”を提出してもらいます。週単位で、本人に業務内容と所感を記入してもらい、また上司にも状況確認と上司から見た所感を記入してもらいます。それを、毎週、健康相談センターに提出してもらいます。そして、1ヶ月経った最後に、『あなたの回復度はどの程度ですか?』と質問して、本人と上司それぞれに、10段階評価をしてもらいます。例えば、本人は『もう10戻っているから大丈夫』と言っても、上司は『回復はまだ6くらいかな』といった、お互いの違いを認識してもらい、翌月からの就業内容の検討に活かしてもらう工夫もしています。」

「健康相談センターでは、職場復帰した社員とは、電話やメールで相談対応しています。その中で、場合によっては職場に行って、直接面談を行うこともあります。職場復帰1~2か月後、通常勤務状態となり、少し経ってから職場に状況確認に行く際には、職場巡回面談は、有用な方法でもあります。このような取り組みを通じて、再休業の割合は少しずつ減ってきました。」

職場復帰支援プログラムを作成し、それにもとづいて、休業中の対応、職場復帰前の産業医面談での生活リズム等のアドバイス、そして、職場復帰判定の工程を守りながら行っている。職場復帰後は、本人の業務を細かく分けて、状態に合わせて業務の進め方を変えていくなどして、着実に通常勤務へ戻れるようにしている。結果として再休業も減ってきている。

【ポイント】

  • ①カウンセラーが「出張巡回面談」として、全事業場をまわることで、全従業員の状況と共にその職場環境を知り、メンタルヘルス不調の予防につながる。
  • ②休業中も、定期的に休業者と電話連絡を取るようにしている。
  • ③生活記録表を作成するなど再発防止対策を休業者自身にも考える機会をあたえ、職場復帰前の産業医面談にて確認する。