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第22回:岡山放送株式会社(岡山県岡山市)

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岡山放送株式会社
(岡山県岡山市)

 岡山放送(OHK)は、瀬戸内海を挟み岡山県と香川県をエリアとする1969年に開局した放送局である。さらに2014年12月には、岡山駅直結のショッピングモール内に、「OHKまちなかスタジオ ミルン」を開設。5階にスタジオを置き、ニュース放送や制作番組等、生番組を放送している。6階は放送設備、番組センターやオフィスとなっている。報道部、制作部、アナウンス部、映像技術部等の社員が「ミルン」に勤務している。スタジオのみならず、放送局としてのオフィスも一緒の商業施設内への開設は日本で初めてとなる。
 従業員数は、全体で150人程。ショッピングモール内に約60人、管理部門や編成、営業等が本社に約60人、支社(東京、大阪、四国、広島、倉敷など)に約30人が働いている。本社には別途、制作関連会社の社員が50人程働いている。
 今回は総務局局次長兼人事部長の奥原寛樹さん、人事部担当部長の吉留康弘さんのお二人にお話を伺った。

安全衛生委員会で話し合い長時間労働対策として始めた「ノー残業デー」

最初に、放送業界ならではの「職場のストレス要因」について伺った。

「部署によって業務内容が全く違うので、一概に『これがストレス要因』ということを同じ基準で測れないので、何とも言えないところです。当社では、報道や番組制作の他、広告収入獲得に向けて企画提案していく営業部門やイベントを実施する事業部門、我々のような管理部門もあれば、カメラ、音声、映像、機械類の操作や電波送信といった技術部門など、様々な職種があります。中継基地局がいろいろなところにありますので、保守点検も必要な仕事内容となっています。実際1日23時間位は放送をしているので、放送に立ち会って機械操作をする業務もあります。また、報道や制作部門等では、社会情勢に応じて、朝早くから夜遅くまで勤務がある場合もあります。」

「その点では、長時間労働が健康不調の原因の1つになっていると思いますね。勤務管理は各部門長だけでなく人事部門でも行っていますから、全従業員の実際の時間外労働時間を把握しています。休日もあまり休めていない、深夜までの残業が続いている社員がいれば、部門長と話し、長時間労働を削減するために効率化を図ったり、うまく現場の中でローテーションを組んだりして、できる限り時間外の労働を減らしていこうと一緒に話し合って活動しています。」

「その他、産業医による面談を月2回実施しています。本社とショッピングモールの2拠点に分かれているため、1回はショッピングモール内のオフィスに、もう1回は本社の医務室に来てもらっています。面談は、社員が自発的に来る場合だけではなく、時間外労働が多い等、気になる社員には産業医面談を受けるように総務人事部門から声掛けする仕組みとしています。当社では時間外労働時間が月に80時間を超える従業員を対象として産業医面談につなげています。」 

「また、安全衛生委員会の内容としても、長時間労働対策が一番の中心ですね。長時間労働の問題からメンタルヘルス不調へつながるリスクを考慮しています。毎回、総務人事部門にて、開催する前月の部門ごとの労働時間数を示します。長時間労働者が多い部門には、特に改善をしていくように話をしています。ただ、限られた人数でやっている部門もあるので、なかなか難しい状況でもあります。」

「そのような状況下で、”ノー残業デー”を始めることにしました。安全衛生委員会で話し合い、決定し、実行している点では、安全衛生委員会が起点になっています。放送業界ではノー残業デーの実施はあまり例がなく、当時、他局からは驚かれもしました。実際、私たちの後を追って実施に踏み切った放送局もあるようです。」

「ノー残業デーは毎週水曜日です。我々が、ノー残業を告げるため職場内を回ると、みんな『帰ります』と答えてくれます。達成状況も最近では平均で80%まで上昇してきました。社員にも浸透してきていると言えるでしょう。それにともない『会社に長くいるのが良い』といった昔ながらの感覚も薄れていったように感じます。かつては、帰りたいけど他の部署が残っているからといった、つきあい残業もあったのではないかと思います。でも、週1回ではありますが大手を振って6時に帰れることは、とても良いことだと思います。メンタルヘルスの面でもプラスになっているでしょう。夏場だと6時はまだ明るいですし、プライベートな時間も充実させて欲しいですね。」

安全衛生委員会は、労使が安全と衛生に関して定期的に調査審議する場である。なかでもこの企業における不健康要因として、長時間労働の問題を審議事項として皆で話し合い、”ノー残業デー”を提案し、全社で実行していくといった社内体制・仕組みが大切だと思われる。

カウンセラーによる月1回のカウンセリングを実施

次に、職場のメンタルヘルス対策の経緯について伺った。

「メンタルヘルス対策に本格的に取り組み始めたのは、2010年からです。当時、メンタルヘルス不調の社員が現れているなかで、個別に対応はしていましたが、元気な社員が発症しないような予防策を打たなければと思い、外部EAP機関と契約し、社外のカウンセラーによる月1回のカウンセリングを始めることにしました。当社の医務室で実施している他、外部機関が設置している相談室でもカウンセリングが受けられるようにしています。」

「カウンセリングについては、社員から希望が出されている場合を最優先し、その他空いている時間については、若手社員や部門長、元気がない社員などに、人事部から声をかけています。カウンセリングを体験することでどのようなものなのかが実感され、数か月後に改めてカウンセリングを希望する社員も結構います。」

「ただ最初は、カウンセリングを受けることに社員の不安もありました。そこで、当時の人事部長自ら、最初に率先してカウンセリングを受けました。『カウンセリングで言いたいことを言えて、スッキリしたよ』と言っていましたね。それから総務人事部門の社員が順に受けていきました。その後は、管理職を積極的に受けさせました。管理職を通じて、周りの社員にも正確な情報を説明してもらい、さまざまな”誤解”が解けていったと思います。現在では、カウンセリングに関するこれらの仕組みが社員に浸透したと考えています。これまで、全社員の半数以上がカウンセリングを体験しました。」

カウンセリング体験を通じて、カウンセリングへの誤解を解くと共に、社員にとっては、何かあればまずはカウンセラーに相談することができる、といった安心感が波及していったのではないかと思われる。

職場復帰前後に契約精神科専門医との面談を実施し、状況と対応策を確認

次に、メンタルヘルス不調者への対応、並びに職場復帰支援の流れについて伺った。

「カウンセラーによるカウンセリングを始めてしばらくしてから、外部機関の紹介で、産業医とは別に、メンタルヘルス専門窓口として精神科専門医とも契約しました。メンタルヘルス関連については、産業医という立場をお任せしています。」

「カウンセリングの主な位置づけは、メンタルヘルス不調の予防および早期発見です。カウンセラーが面談し、医師の診断が必要との意見があり、人事総務部門から精神科専門医につなげた事例もあります。早め早めの対応で、休むなり、適切な治療を受けることで、メンタルヘルス不調で長期間休む方が減りました。その点では、カウンセリング実施の成果はあったと思います。」

「カウンセリングの仕組みが浸透していくにしたがい、我々社員のメンタルヘルス不調者への関わり方も変わってきました。2010年までは、上司、同僚や総務人事部門等がいつもと違う様子の社員を把握しても、軽く声をかけながらも、そのまま様子を見ていくしかできませんでした。ところが今では、『カウンセリングを受けてみる?』と勧めることができます。いきなり精神科医を紹介されると抵抗を持ってしまいますが、カウンセラーならば相談しやすい、大丈夫という思いが、多くの社員にあると思います。カウンセラーに相談して、必要に応じて、『あなたのことが心配だから、精神科の先生と面談してみる?』と、カウンセラーから精神科専門医につなぐ流れになっています。」

「その後、働ける状態ではないと判断されると、休業に入ることになります。このように、休業に入る前には、必ず当社が契約している精神科専門医と面談することにしています。面談後は、その精神科専門医が主治医として治療する場合もあれば、休業者自らが選んだ主治医にて治療する場合もあります。」

「休業中も本人の希望に応じて、カウンセラーのカウンセリングを社外にある相談室で受けることができる仕組みにもしています。」

「職場復帰に際しては、本人同意の上で、我々総務人事部門も一緒に、契約している精神科専門医と本人との面談に同席します。最初、本人だけで面談し、その後、総務人事部門も入り、職場にてどのように対応すれば良いかのアドバイスをいただきます。必要に応じて短時間勤務から復帰することもあります。また、職種によっては、総務人事部門で事務など簡易作業を経て、復帰に慣れてから、元の職場に戻る場合もあります。このあたりも復帰後のフォローとして定期的に精神科専門医との三者面談を行った上で、判断しています。」

「今は、社員の間では、もうメンタルヘルス不調の話がタブーといった様子は無くなり、オープンになってきたと思います。メンタルヘルス不調になることは、とんでもない病気にかかったという意識は本人にもなく、よくある病気の1つだと。このような活動は、社員に対する意識づけが大きかったと思っています。結果的に、心の病による長期休業の社員は現在いません。」

「私たち総務人事部門が、1日中、社内を巡回することはできないので、最終的には現場にいる各職場の部員に、職場改善と対応を委ねることになります。その点では、何かあったときに職場からすぐに問題点が上がってくる、風通しの良い総務人事部門にしなければと考えています。地道な努力になりますが、普段から社内ですれ違ったら声をかけるといったことも大切ではないでしょうか。総務人事部門担当者が、難しい顔で、しかめっ面して働いていたら、声もかけにくいでしょう。メンタルヘルス不調者が現れない企業風土を目指しています。」

産業医の他、専門家(精神科専門医、カウンセラー)と契約しながら、心の健康づくり専門スタッフとして活動してもらっている。また、職場の問題だからこそ、社員である総務人事部門が多く関わり、専門家と連携して実践している。職場の問題は職場で改善するように努め、安全衛生委員会で話し合い、具体的対策を実行していくことが大切である。

【ポイント】

  • ①安全衛生委員会で職場環境の不健康要因を把握し、長時間労働やメンタルヘルスに関して審議をし、具体的対策を実行する。
  • ②従業員全員にカウンセリング体験を通じて、何かあれば相談できる窓口があることを周知する。
  • ③産業医の他、専門家(精神科専門医、カウンセラー)と契約し、社内担当者と連携しながら、職場環境改善につなげる。