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[事例1-28] 営業企画課長に抜擢され各部との調整業務に苦慮し、職場不適応となった事例

1 職場不適応症とは

 職場不適応症とは、図1に示したように「抜てきに伴う配置転換や昇進、リストラ」などの職場要因の変化に対して、「性格傾向や価値観、就職動機など」の個人要因が適合できずに、「出勤したいが出勤できない」という葛藤状況が強くなり、出勤への不安、緊張などの症状を示したものをいいます。また、図1には、現在、変容しつつある職場構造の変化と個人要因を含め、変化の予想を示しました。

 職場不適応症の発症の仕方は、「場」や「場の変化」に対して個人の適応が上手くいかず、日常生活に障害が生じた場合です。DSM-Ⅳ(アメリカ精神医学診断と統計のためのマニュアル)では「仕事の停滞を伴う適応障害」であり、ICD-10(国際疾病分類)では「適応障害」の範囲に入ります。一般的には「出社拒否・恐怖症」、「昇進うつ病」、「退却神経症」などと呼ばれることが多いのです。

2 事例 41歳の男性

 具体的、実際的に理解していただくために、代表的ケースを示し解説を加えます。

概要

 大学卒業後、大手メーカーに就職して18年になる事務系の課長です。性格は、真面目で努力家であるが、融通性が乏しい人です。キャリア・ウーマンの妻と2人の子供、母親の5人家族です。

 一昨年4月の人事異動で実績が評価され、課長代理から会社の中枢部門である経営室営業企画課長に抜擢され、昇進しました。期待に応えようと努力しますが、営業一筋の加藤さんには、経営室は初めての仕事なので戸惑いました。特に、本人らが作成した「A製品に関する企画書」が重役会に提出されるので、「大切な仕事だ。完全なものにしなければならない」と思い、プレッシャーを感じたのです。また社内への根回しで、各部課との調整業務が多く、帰宅はいつも深夜になりました。

 すなわちA事業部の部長と課長から、「それは困る。納得できない。何とか、ウチの部課のことを、考慮してほしい」と、強く言われれば真面目に考え、対応や調整に苦慮しました。つい、つい、引いてしまうのですが、このようなことが、3~4の部課でおこったのです。

 夜中に目覚め、どうしたらよいかと悩む。「半分、聞き流したら良いのではないか。行動しながらまとめていけばいい」と、上司に助言されますが、それができないのです。「聞き流すことは性分として出来ない。行動しながら、まとめようとしても、きっちりしたものにならないし、気がすまない」と、考えこんでしまいました。

 休日出勤をし、ガンバルが、思うようにいかないのです。本人は、「抜擢してくれた上司の手前もあり、何とかしなければと思う、しかし、根回しがうまくいかない、きっちり各課の要望を処理したいが、関係部署の利害が絡み、なかなかまとまらない、焦る、いらいらして‥‥」、と悩みが深まっていきました。この頃より食欲がなくなり、出社しても仕事が手につかなくなりました。不眠が続き、本社ビルを見ると動悸が激しくなり、冷や汗が流れだしました。前に進もうとすれば、恐怖で足がすくんでしまうのです。1週間後に出勤できなくなり、心配をした妻に付き添われて、近くの精神科医に受診しました。うつ病と診断され、治療を受けますが3か月を経過しても、出勤ができない状態になりました。

図1 職場不適応症の発症メカニスム、現在と今後

図2 職場不適応症の治療

事例の発症の仕組みと対応

 このケースは「うつ病」ではなく職場不適応症です。その治療の実際を図2に示しました。事例は重症ケースです。3週間後、すなわち症状が軽快した時点でカウンセリングを行いました。テーマは、「自己の考え方や性格傾向、価値観、認知の歪み(妥当でない思い込み),ストレス」などを、中心に行うのです。その過程で、「過剰に自己批判的であった。すぐ、自分が悪いと考えた」や「会社人間であった。それを最優先しすぎていた」、「性格は真面目で頑張る。融通性が乏しい」、「白黒をはっきりさせたい、きっちりしたい。いい加減では気がすまない(以上は妥当でない思い込みです)。"まあまあ、なあなあ"はイヤである」、「全くの会社人間(価値観の問題点)であった。一人で悩んでいた。気分転換ができなかった」、「第一選抜であるという気負いが強すぎた」など、自己の思い込みの強さや性格、価値観に対する気づきができるようになったのです。時間の経過とともに頭での理解から、気持ちで納得ができるようになり、復職につながったのです。