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[事例1-32] 身体的検査を求めて他医療機関を受診し続けた事例

概要

 34歳、男性、システムエンジニア

現病歴:

 事例は工業高校卒業後に就職、数年前に出向したのを契機に、出勤するとめまい、動悸、頭痛、しびれが出現するようになり、脳外科で1週間の検査入院をしました。特に異常はありませんでしたが、その後出勤途中で具合が悪くなり、途中から自宅に帰るようになり出勤できなくなりました。その年の秋に本人の希望で職場復帰をしましたが、症状は改善されませんでした。この頃から本人は「どこかに悪い身体の病気があるに相違ない」と確信するようになりました。今度は、違う病院の脳外科、循環器科を数か所受診しましたが、結果は同じで、異常がありませんでしたが、納得できず、診療所を受診したものです。

ポイント

対応の留意点:

  1.  身体疾患が存在すると確信しているため、頭から否定しない。
  2.  現代の医学検査で未解決な面も可能性としてあること。
  3.  症状発生の背景を探る。
  4.  職場、家庭での状況を聞く。

ICD-10による身体表現性障害の主要症状:

  1. -1 身体化障害
    1.  2年以上の多彩な身体症状の訴えがあるが、それを裏付ける身体的障害がない。
    2.  身体科の専門医を繰り返し受診する(3回以上)。
    3.  身体的原因がないという医学的説明を頑なに拒否すること。
  2. -2 心気障害
    1.  2種以上の身体疾患があると確信していること(6か月以上)。
    2.  症状へのこだわりが強く日常生活に支障をきたしていること。
    3.  (2) のため医学的検査や治療を求める。
    4.  身体的原因がないという医学的説明を頑なに拒否すること。

本事例の多彩な身体症状とは:

 腹痛、悪心、嘔吐、下痢、めまい、動悸、息切れ、頻尿、手足の痛み、呼吸困難 身体表現性自律神経機能不全(自律神経失調症):

  1.  心臓循環、消化器、呼吸器、泌尿生殖器系の症状
  2.  動悸、発汗、口渇、紅潮、心窩部の不快感の2以上
  3.  前胸部、胸痛、呼吸困難、排尿困難、腸蠕動の亢進、灼熱感

診断と治療の留意点:

 この症例は、頭痛、めまいの背景に会社への不満があることは明らかでした。特に職位の違いによる心的葛藤が背景にあったことは事実です。しかし、初診後も一つの病院で身体的に異常が指摘されなくても自分としては納得できず、お腹の具合が悪いと消化器科、尿が近いと泌尿器科、頭が痛いと脳外科というように医療機関を受診し続けた行為は、身体症状へのこだわり・執着があるがためと考えられます。そこで所属長・妻・本人を含めた関係者面接を繰り返し、本人の希望を受け入れ仕事の負担を軽くした状態で経過をみることにし、通勤経路の変更、フレックスの有効利用、あるいは配置換について検討を加えました。その結果、職場の状況は変えることができないものの、職場での業務を自分の中で割り切ることができるようになり、かろうじて職場復帰を果たしたのです。