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[事例1-25] 裁量労働制において納期ひっ迫や長時間労働などによりメンタルヘルス不調をきたしたチームリーダーの事例

  1. 1 本人の概要

     性別・年齢:男性37歳 職種:システム・エンジニアリング幹部候補社員、勤続15年

     同居家族:両親・妻・子ども(2歳) 学歴・趣味: 大学卒・山登り(トレッキング)

  2. 2 症状概要: (本人の弁)

    口 が渇きやすいのが気になり、また疲労感が強く昼間仕事中に眠ってしまいます。健康診断で口が乾くことについての不安を書いたら、保健師より産業医との面談を勧められました。

     現在、有期プロジェクトのチームリーダーとして、5名のメンバーとともに仕事をこなしています。なお、以前から2名の要員削減を求められており、社内では肩身が狭い思いをしています。

     受注業務には精通しているつもりですが、納期が迫っており忙しく、納期後のフォローや次の案件を考えると、時どき逃げ出したい気持ちにかられます。

     帰宅は午前0時30分頃で、軽い食事・入浴を済ませ午前2時頃に寝ます。寝つきはまずまずで、朝は妻に揺り起こされてやっと目が覚めます。平均睡眠時間は5時間程度です。午前中は何となく気分が乗りません。

     子どもと遊ぶ時間も無く、妻との会話・性生活もほとんどありません。トレッキングに出かける時間は、もちろんありません。

  3. 3 業務関連: (上司の弁)

     2年前に受注した案件で、けっして大きくはないのですが、長年の顧客からのものであり、拡販を考えるとモデルケースとしても重要案件です。すでに関連案件の受注が10件位控えており、それらも早期にスタートしなければなりません。納期後のアフターケア体制も必要です。

     費用便益からすると3名のチームで2年間となりますが、業務量等を考慮し5名体制でスタートしました。当初は6か月後には3名体制に移行予定でしたが、顧客の要望等の変更もあり、また納期も目前であり要員体制はそのままとしています。

     裁量労働制は、好況時に以前の上司に勧められて当人が選択したものです。当人は業務能力が高く有能な社員ですが、弊社ではチームとして業務を遂行していくのが大半で、本人の能力以上にリーダーとしての資質が課題です。メンバーの持ち味をもっと生かして、チーム全体として効率のよい仕事を目指して欲しいと願っています。

    裁量労働制は一部に導入し初期は大きな成果をもたらしましたが、能力以上に過剰な業務を引き受け効率が低下し、顧客からのクレームが増え、悪循環をきたしている面が見られ、若干見直しを考えています。

  4. 4 職場関連:(チームメンバーの弁)‥‥人事よりの情報

     メンバーに任すというより何でも自分でやってしまう傾向があります。また、メリハリが無く、ただ仕事に追われているという感じです。残業も社内では多いほうのチームです。早く帰宅したいと思っても、リーダーが残業しているので帰りづらいところがあります。次の案件もこのような仕事の運びだと、しんどい思いがします。

  5. 5 家庭関連:(妻の弁)‥‥保健師よりの情報

     子育てに忙しいが、両親もよく面倒を見てくれるし、パートの仕事は気晴らしにもなり続けたい。夫はよく働くと感心するが、欲を言えば家族と触れ合う時間を創り出して欲しい。子供がほんとにかわいい時期でもあるので。

  6. 6 気質関連:(本人の弁)

     独りで山登りをするとほんとに解放感にひたれます。パソコンが好きだったし、以前の上司は面倒見がよく、この会社に入ってよかったと思っています。チームはうまくいっていると思いますが、雑用を言い出しにくく仕方なく自分でやってしまいます。

  7. 7 裁量労働制の課題

    (1) 時間管理(自己管理)‥‥疲労と休息

     裁量労働制における重要課題の一つが、時間管理です。労働時間が長くなればなるほど疲労は進行・蓄積し、休息時間の短縮によりその回復も損なわれます。身体的疲労により業務効率は低下し、思考力も落ち仕事が進まなくなり追いつめられ、ついには極度の精神的疲労に至ります。とくに前頭葉の休息である睡眠が障害されると、身体的精神的疲労感が増します。効率と休息は「にわとりと卵」の関係であり、タイミングよく休息をとる知恵(時間管理)は裁量労働制には欠かせません。

     つまり、「休憩」はけっして「怠慢」ではなく、逆に身心のリフレッシュで効率と質が手に入り、目標以上の思わぬ成果を生むことを認識し、作業現場では「目標管理」とともに「早め早めの休息」を積極的に取り入れることです。

    (2) リーダーとしての資質(差別化)‥‥メンタルトレーニング

     いかに裁量労働制といえども常に独り作業ではなく、大半はチーム力を発揮しての成果(実績)が問われます。組織の中ではリーダーの独自判断で「適材適所」なる人材を集めるわけにはいかず、大方は組織の意向で人事は決定されます。そのような環境下、「やりがい」(働きがい)を創出して、活力を生む組織づくりがリーダーに求められます。

     まずは(1) リーダーが何を考えているかを不断に、率直に周囲に伝え組織に統一性を持たせること、(2) 次に常に現場から最高のアイデアが生まれることから、自由で気楽な雰囲気で異論・異見を歓迎すること、(3) 最後に差別化での適材適所により優れた人材を得(育て)持ち味を引き出すことです。この3つ、いわばリーダーのメンタルトレーニングで、「やりがい」を創出し、効率(ゆとり)・高質(充足感)を手に入れることができます。

  8. 8 対処

    仕事にはやりがいをもっていること、仕事はそれなりに順調であること、職場・家庭の人間関係もまずまずで支援体制が組めそうなことから、当面は次の対応策を実施することになりました。

    1. 1 支援策

      (1) 顧客への理解と協力の依頼

      ア 率直に現況を話し、納期遅れが生じる可能性があるが質はけっして落とさない

      イ 当人抜きでは本件は完了しないとの確信と、責任体制・支援体制整備の決意を伝える

      ウ 作業場の整理・整頓の工夫を提案し、スペースを確保し作業しやすい環境づくりへの協力を求める

      エ 昼食休憩はじめ適切な休息がとりやすいように、近隣の公園・カフェ等「場」の確保を行うことの了解を得る

      オ 仮眠場所として社用車の活用も考慮する

      (2) 労務管理面での支援

      ア 直属上司が一時的にチームの世話をする

      イ メンバーの意見を参考に当人と調整し業務再配分を行う

      ウ 横並びではない残業の指示を行う

      エ 雑用については,チーム全体でシェアするよう采配する

      オ 月4日の休日は最低限確保できるよう、上司とチームメンバー全員で知恵を出し合い、相互協力体制を築く

      カ 当人の裁量労働制は現行のままとし、次期プロジェクトでの労働条件は別途調整する

    2. 2 当人へのアドバイス・提案(産業医より)

      (1) 「ピンチはチャンス」で、この経験が今後の業務遂行・暮らし方に必ず役立つ

      (2) 効率と質を求めるには、「何はともあれ休息」

      (3) ちょっとした工夫で可能であり、睡眠は最低6時間を確保するよう指示

      (4) 休息時のストレッチ、昼の仮眠など、早め早めの身心の休息・リラクゼーションを行う

      (5) まずは、3日間の休日を設け、家族との団欒、トレッキングを心おきなく楽しむ

  9. 9 結末・評価‥‥保健師

     顧客先はこの不況で納期遅れは厳しく受け止めるとのことでしたが、永年の信頼関係の中で作業環境改善・休憩への配慮等は積極的に評価・協力してくれました。

     労務管理では、上司の協力もありチーム全体のモラルは驚くほど向上しましたが、結局雑用は総務より1名(兼務)の応援を得て対応しました。

     当人は3日間の休息で「生活(暮らし)の歓び」に触れ、自信も回復、睡眠時間を軸に疲労のコントロールを身に付け、元来好きな業務であったのが何よりで「納期」まで業務を完遂しました。

     「納期」は約3か月遅れでしたが、打ち上げではチーム全員が祝福し合い、上司の笑顔が印象的でした。顧客との信頼関係は、納期後のアフターケアで「向上」したいとのことです。"休息,万歳!"