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[事例1-16] 過重労働と同僚からの叱責を契機に仮面うつ病を発症した若い女性プログラマーの事例

概要

 女性プログラマー(26歳)は、従業員500人規模のソフトウェア会社の優秀なプログラマーでした。性格は几帳面で責任感が強く、頼まれたら断れずについ何でも仕事を引き受けてしまうところがありました。これらはうつ病になりやすい典型的な性格です。

 ある年、私事で悩みがあり、数人のグループで開発していたソフトの担当分に遅れが出始めました。毎晩11時近くまで残業し、睡眠時間を3~4時間に切詰めて仕事をしていました。納期が迫っていることから焦りもあり、ベッドに入ってもなかなか寝つかれない日々が続きました。そんな中、同じグループ内の年上の男性社員から仕事の遅れの件で強い口調で叱責されました。

 これがきっかけとなって、めまい・吐き気・頭痛・眼の奥が痛い・腰痛・疲れがとれない・息苦しいなどの症状があらわれました。特に、息苦しいという症状は出勤途上に強くなり、通勤電車に乗ると息が詰まりそうで怖いと感じるほどになりました。どうにか出社して仕事をしていましたが、能率が上がらず落ち込んでいるのを上司が気づいていました。会社ではメンタルヘルスの重要性がよく認識されていましたので、この段階で社長から嘱託産業医に相談がありました。

 社長・上司との相談の結果、1)グループのメンバーから外すこと、2)業務を1人でできる仕事に替えること、3)納期を気にせずにできる仕事にすること、などの対応をとりました。また、強い責任感が災いして、仕事を放棄した形にすると却って症状の悪化を招くと考えられたため、4)本人が同意するなら休養させる方針で臨みました。 数日後の面談で、本人は、「先日まで多忙でした。懸案だった仕事のほうは仲間に引き継いでもらい、私はそのシステムのネットワーク化に関する仕事を一人でしています。仕事は自由裁量でできるところがあって随分楽になりましたが、相変わらず出社する時が辛い」と話していました。環境は改善されているものの症状が解消されていないため、精神科医を受診していただくことになりました。

 精神科医の診断は「仮面うつ病」で抗うつ剤を処方され、1か月間休養するよう指示されました。1か月後に改めて面談した時には前回に比べて明らかに落ち着いていました。症状の中で最も本人が辛く感じていた”息苦しい”という症状は解消していましたが、”咽喉に何かつまっているように感じる”という症状を訴えていました。その後も定期的に受診され、症状の増悪はみていません。

ポイント

1. 仮面うつ病
 本事例の症状は1)全身倦怠感、2)めまい、3)腹部・消化器症状(吐き気)、4)頭痛(眼の奥が痛い)、5)他の部分の疼痛(腰痛)、6)呼吸困難感、及び、後に自覚されてきた7)咽頭部違和感 などに整理できますが、いずれも仮面うつ病の身体症状です。 一般に「うつ病」では、抑うつ気分、焦燥感、気力の減退、自信喪失・自責感、興味や関心の低下、集中力減退、自殺念慮などの精神症状がみられますが、「仮面うつ病」ではこのような精神症状がほとんど認められないのも特徴です。

2. 職場の課題
 一般にシステムエンジニアやプログラマーは長時間労働に陥っていることが多いため,うつ病を発症する危険度は高いと考えられます。本事例では長時間残業で睡眠時間3~4時間になっていました。睡眠不足とそれに伴う心身の疲労が発症に拍車をかけた可能性はあります。

 職場のメンタルヘルス対策としての「4つのケア」の中でも「ラインによるケア」が重要であるとされていますが、本事例ではまさに「ラインによるケア」が奏功してメンタルヘルス不調者の早期発見につながったといえます。また、会社が比較的規模が小さく、社長自ら社員とのコミュニケーションを欠かさなかったことも好結果をもたらしました。