• HOME
  • 事例紹介
  • [事例1-3] インターネット依存から睡眠障害、職場での問題行動を起こし、休職となった事例

事業者・上司・同僚の方へ

支援する方へ

コンテンツ一覧

[事例1-3] インターネット依存から睡眠障害、職場での問題行動を起こし、休職となった事例

概要

 事例は32歳、男性の方で、大学卒業後3年目に父親の会社の取引先に嘱託職員としてようやく縁故入社できました。

 会社での勤務内容は、社員にコンピューター使用を教えることと書類等の受け渡しなど簡単な作業だけで、それ以外の時間は倉庫の片隅を囲った部屋を与えられ、OA化のための基礎勉強をするなど、会社でも仕方なしに雇ってやっているというお荷物的存在でした。

 事例の生活歴をみますと、暗記力は良く、高校は校区トップの高校へ進学しましたが、しだいに成績は低下し、大学受験は4回目の受験で某私大の工学部に入学しています。

 彼は、大学2年目頃よりインターネットのゲームにのめりこみ、昼夜逆転してしまい、大学では3年留年、ようやく28歳で卒業できました。

 さて、入社3か月目頃、父親の会社がうまく立ち行かなくなったことを告げられてから漠然とした不安が出現したようです。 彼は思いつめたように、株式サイバーネットと株式関連の情報収集に朝から晩まで執心し、大事な情報を見逃すのではという不安、焦燥感から、自宅では母親の目がうるさいので、週30時間以上会社のパソコンを使ってネットにアクセスするようになり、会社に寝泊りするようにさえなりました。

 その頃より、睡眠時間が少しずつシフトし始め、非24時間型睡眠障害の状態に至ったと考えられます。

 当初は、職場からは仕事熱心だと思われていましたが、数か月たって、朝の点呼をサボり、昼過ぎに報告に来るといった時間のルーズさなどが職場の問題となり、そのことを指摘された際にカッとなり、同僚を突き飛ばし、全治1か月のケガを負わしてしまいました。

 会社側は、1回の事情聴取で直ちに解雇を決定し、彼は父親に伴われて精神科医を受診、「強迫現象(ネット依存)、不安障害及び非24時間型睡眠障害」の診断を受けています。

ポイント

 本事例は、最近話題となっている「高機能自閉症スペクトラム」(知的障害のない広汎性発達障害)の診断基準を満たしていませんが、日常生活を検討してみますと、「高機能自閉症スペクトラム」の事例と同様の対処が必要であったと考えられます。

 そうした観点から職場の課題を検討しますと、第一に、本人の強迫的な性格傾向と常識的なセルフケアすらできない現実吟味の不十分さに、早くから気づくべきでした。

 第二の問題として、職場ラインケアの不徹底があり、上司が職員の身心の状態や性格特性を十分に把握できていなかったことと、家族との連絡・対応の不備があったことが挙げられましょう。

 第三には、精神科のコンサルテーションなど療養義務を経ずに、ただちに解雇に至ったことは、労働関係法令等の法律の趣旨からいえば問題ありと云わざるを得ません。

対処

 この事例の睡眠障害の治療に関しては、大学病院に依頼する一方、本人の洞察の欠如、セルフケアについては、企業内の診療所で生活リズムの安定と症状に対するカウンセリングを実施し、さらに、両親との面談を行い、メンタルヘルス上の問題点と家族としてのサポートについて基本的な対処法を説明しました。

 職場の問題に関して、本人と家族、上司と被害を受けた同僚との合同面談を設定することができ、本事例の成り立ちとラインケアの方法について説明し、被害を受けた同僚も理解を示し、和解に至りました。

 ネット依存は、学術的用語ではなく、Youngら(1999)によれば、ネガティブな感情から逃避するために強迫的にインターネットを週30時間以上利用する嗜癖であるとされています。

 ネット依存には、アダルトビデオ嗜癖、チャット嗜癖、コンピューターゲーム嗜癖や本事例のように株式ネット情報収集などの嗜癖があるとされています。

 本事例は、精神医学的には、不安、睡眠障害を伴う強迫現象ですが、本人、家族および職場の人々にメンタルヘルスの知識があれば十分に予防し、本人の機能障害、行動や社会活動を支援することができたと考えられます。

 ネット依存という強迫現象は、今後、注目していかなければならない強迫現象の様式のひとつだといえましょう。