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[事例1-2] 職場への関心を呼び起こした研究開発職の出退勤に問題のあった事例

概要

年齢: 41歳
性別: 男性
職業: 研究開発職
経過:

 Yは、某国立大学を卒業し、その年に通信機メーカーに入社しました。当初から研究開発に所属しながら業績もあげていました。上司もその才能に着目していたと言っています。

 ところが35歳をすぎたあたりから欠勤を続けるようになりました。昼夜が逆転しているということから某大学病院の心療内科に通院していましたが症状が変わらず、1年の半分は休むということを続けていました。入社時の業績から推して上司も立ち直ることを期待していましたが、主治医もよくわからない、というので職場の同僚がただ手を拱いていたことが分かりました。妻も子供もいるが、妻は何も言わないということでした。両親には事情を話していなかったし、現在も両親は状況を把握していないと思うということでした。

 治療者が診察を依頼されたのは休職期間が満了する1か月前でした。上司を交えて話を聞きますと、休職に入る以前にYが休みがちであったことを現在の上司が気づいていなかったこと、優秀な人材だという申し継ぎはなされていたが、どういう研究をしているのかはよく理解していないし、最近は発表したという話を聞いたことがない、という経緯を知りました。一方、Y自身は上司からは何も言われなかったし、主治医からは休んだときに診断書をしたためてもらい、それを提出していたということでした。休み癖がついたかなと思うこともあったがそれほど切迫感を覚えていなかったと治療者に話しました。

対処とその後の経過:

 治療者はYの振る舞いに深刻さがなく、時どき屈託のない笑顔をみせることと、Y自身もこのままではいけないと思っていると述べたので、治療者はY自身が自分でもどうしてよいのかわからずにいるのではないかと推測しました。それで、才能が枯渇していくことに危機感はないのか、とYに聞いたら、それはありますが、と応えたので、これまで睡眠遅延症候群と診断されているようだが、診断書の診断名には疑問がある、現在では病気とは言えない、このままだと自を貶めることになる、出勤したらどうかといったら、主治医の先生も病気なのかなと同じようなことを最近は言っておられました、と笑いながら述べました。

 上司が部下の勤怠を把握していないことから、人事部で管理することを条件として出勤を認めました。その後は欠勤していないということです。

ポイント

対処の評価・考察:

 症例Yは関わりがある人びとが自分のことに関心を抱いていないと思い込んでいた節が窺われます。Yは、彼自身が抱いていたあるべき自分自身の姿の基準を満たすことができないと感じ、周囲の人びとに自分を認めてもらおうとして無理をし、無理がきかないと知ると自暴自棄になったのでしょう。しかし人事部の介入によって自分を取り戻しました。上司がYについて実は無関心であったことにY自身が気付き、人事部が介入したことでこれまでの生き方を変えるきっかけをつかんだといえます。であればこそ産業医が人事部に事実上の上司の役割を依頼したことがY自身を立ち直らせたと言っても過言ではありません。

まとめ:

 勤怠に関わる課題はうつ病ではなく、近年いわれているような新型うつ病でもありません。そのため治療という領域を超えている面が多々あり、産業医や職場の関係者だけでは解決できません。当事者も実は戸惑っているのです。異論はあるでしょうが勤怠に関わる事例が生じたときには職場の上司が速やかに人事部に支援を求め、カウンセラーも加わり、関心をいだいていることを誠意をもって伝えるという一貫した対応をとり続けることで信頼関係を築くことができるということを、この症例を通して述べまし。