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[事例8-2]不眠、うつ状態の従業員をめぐり、パワハラ対策等ライン教育が成功した事例

1 概 要

年齢・性別:48歳、女性
業種:コンサルティング会社
職種・職位:翻訳業務、一般社員
診断名:睡眠障害(専門外来)、うつ状態(精神科)
主訴:眠りが浅い、仕事中に強い眠気
生活歴等 :単身で親と同居。職場ではせっかちでやや注意力に欠けるとの評判。

2 経 過

  A氏(本人)は、この会社に一般事務で入社しましたが、やや単純ミスが多く、また一人でできる仕事をという本人の希望もあって、10年ほど前に今の部門に移りました。

  2年前の夏、B氏(42歳、男性)が上司として着任しました。B氏は長い海外経験を買われての中途入社組で、エネルギッシュなリーダータイプでした。はじめは好意的に受け入れられていたB氏ですが、数か月もするとパワハラ的な言動が目立ちはじめるようになりました。A氏は職場で強い緊張を感じるようになり、首・肩のコリや痛みがひどくなって整形外科を受診しましたが、”異常なし”でした。この頃から、人事が把握する範囲でもA氏の業務にミスが目立つようになったため、翻訳業務を減らし事務分担を増やす配慮がされました。

  それでも体調は改善せず、1年後にA氏本人から産業医(嘱託)に相談がありました。主な訴えは、「眠りが浅く、昼間に眠気が強いため仕事に差し支える」というものでした。身体所見に異常はなかったので、生活リズムを保って適度に身体を動かすなど、一般的な注意を与えて1か月経過観察しましたが改善しなかったため、病院の睡眠外来を紹介しました。

 4か月ほどたったその年の秋に人事から相談があり、「A氏にミスが多い。本人は不眠のせいだと言っている。産業医にも相談しているようだがどうか」とのことでした。この際、人事からは「A氏の同僚にそれとなく聞いてみると、B氏のパワハラがA氏に集中しているようだ」との話もありました。

3 対 処

  A氏と人事の話を総合すると、不眠の一因がパワハラにあり、上司のB氏は他人の心情に思いが至らない傾向があることについてほぼ確信が持てました。そこで、人事には不自然でない形でA氏とB氏を分離する、管理職研修にパワハラを加えるとともに、B氏には個別に職場の言動について例をあげて具体的に注意するよう伝えました。

  翌月A氏と面談をしましたが、その内容はやや意外なものでした。A氏からは、「仕事の流れが変わりB氏とのコンタクトが減って心理的な圧迫は小さくなったが、一方で置いていかれる不安が増し体調は良くない」とのことでした。B氏は、部下を集めて定期的に勉強会を持っていて、それに参加できないことによる不安でした。

  その後、人事から「先週、A氏が休業の診断書をもってきた」が、「A氏はけっして休職を望んでいない」との話がきました。A氏が言うには、同僚から「疲れているようなので病院に行っては」と言われ(心療)内科を受診すると、医師から休んだほうが良いと言われ診断書をもらったとのことでした。

  このため、A氏と面談し「業務上の配慮が必要なので人事と協議したい」と伝えて了解を得ました。そのうえで、人事には「休んでもパワハラや不安感はなくならない」、「本人は出勤意欲があり身体面でも出勤可能」なので、体調を理由に人事の管理下で業務の量と内容を限定して勤務させるのが良いと伝えました。

  その後、A氏は体調も回復し事務部門で通常勤務するようになりました。B氏のパワハラ的な言動はその後問題になることもなく、A氏以外のメンバーに職場の不満や体調不良を訴えるものは出ていません。

4 考 察

  パワハラが起きる状況はさまざまでしょうが、指導者自身のストレス感が原因であることが多いようです。ただ、この事例のように、発達障害的な面をもった指導者である場合は、一般的なパワハラ研修や注意ではなく個別対応が求められるでしょう。

  職場としてパワハラの研修や啓発活動は大切ですが、同時に産業医等による個別事例のアセスメントでより効果的な対応が可能になると思われます。