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[事例8-3]経営者が指導力を発揮してメンタルヘルス対策が進んだ事業場の事例

1 概 要

 わが国では、安全と健康の確保は事業を経営する事業者の責務であるとし、労働安全衛生法等の一連の法規が定められ、健康管理や作業環境、作業条件の整備、労働衛生教育等について言及されています。このような社会基盤の中、事業場でメンタルヘルス対策を円滑に推進していくためには、管理監督者・人事労務担当者・産業保健スタッフの役割分担を明確にし、連携できる体制を作ることが重要であると考えられます。

 特に、事業場が広域に渡って多数存在する事業形態では、産業保健組織の機能を十分に検討することが必要となります。これらの点に対し経営者が指導力を発揮し、メンタルヘルス対策が進んだ大企業の広域分散事業場の事例を紹介します。

2 取組みの内容とポイント

(1)まず、経営者が社内誌に「健康を守る」というタイトルで寄稿することで、メンタルヘルス対策を積極的に推進する旨を表明しました。

一部抜粋:
  15人に一人はかかる可能性があるとも言われているうつ病にも注目したい。一番大事なことは「職場に過大なストレスはないか、部下に心の不調は見られないか」という日頃の気配り。今や管理者に不可欠の能力である。併せて「気づいたら堂々と早く申告できる風土」、「治療から復帰までを暖かく見守り支援する風土」が大事である。お互いの心がけで「うつ病が少ない会社、うつ病からの復帰が早い会社」にしたい。

 その際、管理監督者から「健康は自己の問題と考えていたが、経営者が健康を守ると公言するとはカルチャーショックだ」という意見も出ました。

(2)経営者の主導で、メンタルヘルスケアに関する一般社員と管理者への教育研修、情報提供を一定の規模で毎年実施し、また、ストレスチェックを用いて不調者をスクリーニングして経過観察を行う等、ポピュレーション・アプローチとハイリスク・アプローチの両面から施策を展開する方針を出しました。

(3)事業場の管理監督者が、メンタルヘルス不調者の早期発見につなげるため、産業保健スタッフと連携しつつ社員を支援する管理者用の対応フローを作成しました(一般社員からの産業保健スタッフへのアクセス情報も整備しました)。

(4)人事労務管理を健康管理と連動させるため、就業上の配慮や復職支援等に必要な事務連絡を事業場に周知する機能を強化しました。

(5)先の(1)~(4)を実施する過程で管理監督者・人事労務担当者の健康管理に対する意識は大きく方向転換し、その後メンタルヘルス対策に本気で取組む企業文化が徐々に醸成されました。

(6)その結果、管理監督者・人事労務担当者と産業保健スタッフとが意見交換をしながら、医学的実状と正しい組織規範の相互観察を行い、医学的見解と心理学的見解を尊重する風土ができてきました。

(7)その上で、心の健康づくり計画を策定し、全社に周知しました。人事労務管理や人材育成とも密接な関連を持ち、事業場内で経営管理の一部と位置づける見方も出てきました。

(8)経営管理的に産業保健組織は独立した部門とし、助言機能ばかりではなく、自律的に専門機能を執行する機関としました。産業医・保健師・臨床心理士・事務等の産業保健スタッフが具体的な健康管理施策を作成し、計画(Plan)-実施(Do)-評価(Check)-改善(Act)のPDCAサイクルを回しながら、連続的かつ継続的に全社的な視点でメンタルヘルス活動を推進する体制を目指しました。

(9)データ管理と面談実施において、システム化を進めたり社内の規定を整備する等により、個人情報保護への配慮も行いました。

  以上により、4つのケア(セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフによるケア・事業場外資源によるケア)と3つの予防(一次予防・二次予防・三次予防)にて網羅される総合対策が可能になりました。分散事業場では、経営者の参画が社内全体の機能と産業保健の機能を融合する上で、非常に有用であると考えられました。