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[事例6-4]家族の支援で自殺を思いとどまったエリート社員のうつ病等の事例

1 概 要

年齢・性別:41歳、男性
職業:会社員、課長
疾患名:うつ病
家族歴・生活歴:大学卒業後、現在の会社に就職。順調に出世、38歳で最年少課長に。家族は妻と小学生の子供2人の4人家族。30年のローンを組んで6年前に家を購入。

2 病歴・対応の経過

  41歳の4月、社内でもっとも多忙な部署の課長に抜擢。メンタル不調で休業した前任者の後を引き継ぎました。

  10月、うつ状態となり、不眠、食欲不振、倦怠感があり疲れ易く集中力も低下し仕事能率が落ち始めました。ここ半年、残業は月に100時間以上で、睡眠時間が4時間くらいしか取れないハードな仕事が続きました。内科で処方してもらった睡眠薬をのみながら仕事は続けていたものの、能率低下→残業増→睡眠時間短縮→疲労蓄積→能率低下の悪循環に陥っていました。

  12月、仕事上の判断ミスを上司から叱責されたことを契機に出社できなくなり、妻に付き添われ心療内科を受診。

  希死念慮を伴う重症化したうつ病と診断され、即日休業を指示されましたが、本人は頑なに出社を主張。仕方なく、服薬しても出社困難が続くようなら休業することと約束し、経過を見ました。結局、出社できず休業することになりました。休業はしたものの、仕事のことが頭から離れず、さらに家族にも迷惑をかけると悶々とした日々を送りました。会社にも迷惑をかけているし、家族にも迷惑をかけてしまった。これから子供の教育にもお金がいるし、ローンの返済もあるし、こんな自分は生きている価値がないと強い自責感に苛まれ、希死念慮も強い状態でした。

  休業1週間後、首吊りによる自殺企図がありましたが、物音に気づいた妻が駆けつけ未遂に終わりました。”あなたさえ生きてくれたら何もいらない、ローンが払えないなら家だって売れば良いし、私も働く。子供も高いお金のかかる学校に行かさなくても良い”と、未遂を目の前にした妻の口から出たとっさの言葉が、うつ病回復のきっかけとなりました。5か月間の休業のあと、職場復帰。現在部署は変りましたが、元気に課長職をこなしています。

3 ポイントⅰ-重要な家族の理解や支援

  自殺企図を目の前にした妻のとっさの一言で、ハードな仕事やローン、子供の教育費などのこころの縛りから開放され、うつ病回復のきっかけとなりました。夫婦の間でも、うつ病の重さは分かっているようで案外分からないことが多いものです。妻には希死念慮が強いのでくれぐれも気をつけてください、と注意を促していましたが、自殺企図があり、始めてハッと気づき、本当に真剣に本人の状況を共感理解したものと思われます。そういう意味では、妻の心の奥に秘められていた愛が本人を救ったとも言えます。

  その反対に、ぎりぎりのところで妻が別居や離婚を持ち出し、病状が増悪し長期化するというようなケースもあります。薬物療法がどんなに進んでも、治療のベースに家族の愛情に基づいた支援がなければ、病気の回復は望めません。うつ病治療には一般に思われている以上に、家族の理解や支援を含めた家族力が大きな影響を与えます。

4 ポイントⅱ-休業は本人の気持ちを尊重しつつ納得の上で

  大学、就職、昇進と最短距離でエリートコースを歩んできた本人には、”出社できない”ということはありえず、休んでいる現実があるのに休業を拒否するという認知障害の問題があります。出社困難の状況が続けば、休業するということを先に約束した上で、本人の気持ちを受け入れ、休業とせずに様子を見、約束を守って休業するという経過をとるほうが本人も納得しやすく、休業がうまくいくことが多いものです。