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[事例1-4] システムエンジニアの脳・心臓疾患事例

1 概要

年齢・性別:43歳、男性
業種:重機械メーカー
職種・職位:技術職・管理職
診断名:急性心不全、急性心筋梗塞(再発)
生活歴等:3年間の単身赴任の後、自宅から通勤可能な本社に戻っていた

2 経過

 A氏(本人)は3年前から、単身赴任で関東支社のシステム部門の管理職を勤めていました。管理職といってもプレイング・マネージャーで、実務も担当しているため、ウィークデーの退社は22時~23時、土日のどちらかは出勤という状況でした。

 こうして、月の残業時間は100時間前後が当たり前という中、赴任して3年目の冬に、帰宅した寮で突然に強烈な胸痛を感じました。その時は、同僚らの素早い対応もあってすぐ救急搬送され、一命はとりとめましたが急性心筋梗塞でした。

 翌春、会社はA氏の健康状態を考慮して、自宅から通勤可能な本社に異動させました。しかし、その後は体調が回復したこともあって、またまた猛烈に働くようになりました。しばらくは、さしたる問題もなく勤務していましたが、半年もたたないある日、自宅のふろ場で倒れ再び救急搬送されましたが、急性心不全(急性心筋梗塞の再発)で不幸な帰転をとりました。

3 対処

 定期健診で肥満、高血圧、高脂血症を指摘され、喫煙者でもあったA氏は、支社の産業医や保健師から必要な事後指導を受け、自分でもそれなりに食事や睡眠時間には注意を払っていたようです。

 異動後の本社では、病歴を考慮して管理業務は外されていました。所属長は心筋梗塞という既往症から、A氏には業務過多にならないよう、再三注意をしていました。こうした中で問題があったとすれば、喫煙が継続されていたことと、A氏の性格傾向からくる働き方への対応だったと思われます。

4 考察

 心理テスト等で評価したわけではありませんが、A氏は典型的なタイプA性格だったように思います。

 タイプA性格というのは、1950年の中頃、アメリカのフリードマンとローゼンマン(医師)が言い出した性格傾向のことです。具体的には、競争的、野心的、精力的、何事にも挑戦的で出世欲が強い、常に時間に追われている、攻撃的で敵意を抱きやすいといった特徴があり、そのため行動面で機敏、せっかち、多くの仕事に巻き込まれているといった状況になりやすいとされています。こうした性格の人は、心筋梗塞を発症しやすいのです。実際に、このフリードマンとローゼンマンの2人が約3,000人の米国の中年男性を、タイプAとそれ以外のタイプBに分けて8年間観察したところ、タイプAの人はタイプBの2倍以上も心臓病になりやすかったのです。

 このA氏も、当時の経済状況の中で少数精鋭の働き方を余儀なくされた面はありますが、タイプA的な性格も手伝って長時間で心理負担の大きい過重労働の状態が続いていました。また、治療が奏効して医学的なケアが必要でなかったこともあって、節煙はしていたようですが禁煙にはいたらず長時間労働も解消されませんでした。

 会社は、健康面を考慮して自宅から通勤可能な本社に異動させましたが、性格からくる働き方は対応が困難でした。本社の保健師は、そうした点の気づきや過重労働への注意を与えていましたが、能力的に高い上に支社での実績もあって、体調の回復とともに再度猛烈に働きはじめたようです。

 この事例は、過労死という言葉から想像される状況とはやや異なります。しかし、健康管理の観点からは、自発的な長時間労働だからといってそれでよいことにはなりません。長時間労働と心理ストレスの重なりで起きる過労死は、職場の実態の中でそれぞれの労働者の個別の事情に即して対応される必要があります。