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[事例1-3] 交通事故受傷後からメンタルヘルス不調に陥った看護師の事例

1 概要

症例: 30代、女性
疾患名: 適応障害(抑うつ状態)
職種: 医療職(看護師)
勤務状況: チーム医療を大事にしているため、同僚に迷惑にならないようにということを常に気を遣いながら仕事をしていたようです。勤務状況に特に問題はありません。
家族歴: 精神科遺伝負因はありません。現在は結婚して夫と2人暮らしです。
既往歴・健康診断結果: 特記事項はありません。
生育・生活歴: K市に2人同胞中の第1子として生まれました。出生、発育、発達に問題はありません。高校卒業後、看護学校へ進学しました。看護学校卒業後、地元の病院の整形外科、循環器内科、集中治療室での勤務を10年勤めたのち、家庭の都合で、業務負荷の比較的軽い現在の職場へ転職となりました。
病前性格: 完璧にものごとを終わらせないと気がすまない性格です。

2 現病歴及び治療経過

 平成X年6月に自動車旅行の帰りに大きなトラックが乗車しているタクシーに衝突するという交通事故に遭遇しました。頚椎捻挫をおこし、救急車で病院へ運ばれましたが命には別状はなく、そのまま帰宅となりました。しかし、翌日から、「目を閉じると交通事故の衝撃が浮かんでくる」、「眠れない」、「同じ夢をみる」などの症状のため、業務への集中度が落ちてしまいました。心配した看護師長のすすめで精神科へ受診となっています。

 事故後しばらくは、看護師長の配慮で勤務スケジュールを比較的負荷のかからないよう組んでもらい、まわりの同僚も体調を心配する対応をとってきました。また、家庭でも夫が家事を手伝うなど支援が得られていました。次第に元気を取り戻し、なんとか通常の勤務ができるようになりました。

 事故後2か月が過ぎ、交代勤務のスケジュールが通常に戻ってきたあたりから、診察場面で「こんなに辛いのに勤務スケジュールを配慮してくれない」、「同僚が辛さをわかってくれない」など看護師長や同僚への激しい不満を打ち明けるようになりました。また、「お金をもらえるだけもらう」など事故に対しての激しい怒りも吐露されました。症状は次第に気持ちがはれない、食事がのどを通らないなどの抑うつ症状が目立ってくるようになり、同年8月からお仕事を休みはじめるようになりました。

3 考察

 上記症例は適応障害の抑うつ状態か外傷後ストレス障害(PTSD)か診断の難しい症例です。治療をすすめていく中で、周囲からの同情的配慮が少なくなるに従い、今までの経過からは信じがたい他者への激しい怒りを吐露するなど、何か複雑な心理が心の奥底にある印象を受けます。パーソナリテイ障害の診断がつくかどうかはもう少し経過をみたいと思います。

 看護師が陥る抑うつをⅰ. 人間関係に伴う抑うつ、ⅱ.抑うつ気分を伴う適応障害、ⅲ. 外傷後ストレス障害(PTSD)、ⅳ.大うつ病性障害、ⅴ.パーソナリテイ障害に伴う抑うつに分類している解説があります。パーソナリテイ障害に伴う抑うつの場合、安易に「外傷後ストレス障害」と診断を告げることは本人の被害者として尊重される心地よさを与えることになり、かえって、症状を複雑にする場合があるので、パーソナリテイ障害をもつ人に対しての初期対応は非常に重要であると考えられます。初期対応を誤らないために、大きな外傷をおったスタッフが出た場合は速やかに専門家へ相談しましょう。