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[事例1-3] 上司からの叱責がもととなり、身体症状を伴った適応障害を引き起こした事例

1 概要

年齢: 35歳
性別: 男性(既婚)
職種・業種: IT関連
勤務状況: 今回の発症までは良好
疾患名: 身体症状を伴った適応障害(抑うつ型)
家族歴: 特になし
学歴: 大学卒
症状: めまい、吐き気、体の震え
既往歴: 特になし

2 経過

 約1年前より、現在のIT関連の会社に勤めていましたが、約3か月前に、仕事上のことで、上司に叱責されたことをきっかけにめまい、吐き気などの身体症状が出現しました。

 X年7月に精神科を受診。受診時は、やや抑うつ気味で、仕事の上での自信を喪失しているように思われました。治療は、自律訓練法(筋弛緩による不安軽減法)を教示し、不安時にロラゼパム0.5mgの頓用から開始しました。1週間後に通院し、ロラゼパムを一日3回ほど服用したとのことでした。系統的脱感作法(自律訓練法を用いたイメージ療法)を行うために、不安階層表(一番ストレスのかかる場面を100点として10点刻み毎に不安の低い場面の順に並べた表)を作成させ、30点くらいの不安場面を自律訓練中にイメージすることから開始しました。その後、2週間毎に通院しましたが、上司が目の前に現れると心拍数が早くなり体の震えを感じることは、まだ持続しているものの、徐々に自覚症状としては軽快してきました。

 しかし、受診開始から3か月後には、吐き気などの体調不良で会社を休むようになりました。内科で精査をするも、問題ないとのことでした。この頃より、抑うつ気分が強くなったために、塩酸セルトラリンを追加し、抑うつ症状の改善をはかるとともに、職場内での本人の孤立化を防ぐために、直属以外の他の部門の上司とも仕事のことを相談するように働きかけました。また、抑うつ気分については、診断書を作成し、職場内のストレス環境の可能性を指摘し、本人の能力を生かせるための配置転換も含めた職場内での配慮を依頼しました。その結果、受診開始から約1年後に部署変更があり、直属の上司が変わり、抑うつ気分も改善傾向となりました。

 その後、現在の上司とは、比較的、仕事上でのトラブルもなく、うまくやれています。しかし、会社内で以前の上司と会ったときは、今でも、体の震えを感じたりすることがあるとのことです。

3 解説

 職場での上司と部下との間に生じる対人関係からのストレスには、今回のように、めまい、吐き気、震えなどの身体症状を中心として発症する場合があります。身体症状には、薬物による対症療法が、ある程度有効です。しかし、対人関係から生じるストレスが軽減したわけではありません。また、自律訓練法を取り入れたイメージ療法もある程度、効を奏しますが、十分な改善を期待することが難しい場合があります。そのような場合には、職場内での対人関係を調整することが必要となってきます。本事例は、会社側に診断書を通じて本人の状況を説明することにより、会社側の理解が得られ、治療効果をあげることができたものと考えられます。