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[事例4-1] システムコンサルタント事件・脳出血

1 概要

 ソフト開発会社で、システム開発業務をされていた33歳の方が脳幹部出血により亡くなった事例です。この方の労働時間は入社以来過重で、亡くなる前の月も、またその前の月も100時間以上の所定外労働時間が記録され、特に直前1週間での労働時間は73時間超(週40時間の倍近く)と著しく過重労働であったようです。亡くなった当時はプロジェクト・リーダーをされており、プロジェクト・マネージャーのもと、プロジェクトの進捗管理、要員管理、品質管理及び発注元及び協力会社との連絡調整など、精神的にも緊張を伴う作業にあたっていました。そこでご遺族から、会社は業務を軽減するなどの健康配慮義務があったのに、それが果たされなかったとして訴えられたものです。

2 裁判の経過等

 この方は、定期健康診断でも高血圧を指摘されていました。亡くなる数年前から要治療の状態で、高血圧のためと思われる心肥大も確認されるようになっていたと言います。ところが、この方は精密検査を受診したり、専門医の治療を受けたりすることはなく、健康診断自体受診しなかった年もあったようです。この会社では、受診しなかった従業員に対しては、担当者が再度受診スケジュールを作成するものの、それでも受診しない場合は放置されており、健康診断の受診率は57~85%程度でした。精密検査も受診するかどうかは各人に任されており、担当者や産業医からのフォローはありませんでした。この点について裁判所は、「労働者が自身の健康を自分で管理し、必要であれば自ら医師の診断治療を受けることは当然であるが、使用者としては右のように労働者の健康管理をすべて労働者自身に任せ切りにするのではなく、雇用契約上の信義則に基づいて、労働者の健康管理のため安全配慮義務を負うというべきである」と示しています。

 そして、「入社直後から高血圧に罹患しており、昭和58年ころからは心拡張も伴い高血圧は相当程度増悪していたことを、定期健康診断の結果により認識していたものである。」から「高血圧患者は、脳出血などの致命的な合併症を発症する可能性が相当程度高いこと、持続的な困難かつ精神的緊張を伴う過重な業務は高血圧の発症及び増悪に影響を与えるものであることからすれば、使用者は、労働者が高血圧に罹患し、その結果致命的な合併症が生じる危険性があるときには、当該労働者に対し、高血圧を増悪させ致命的な合併症が生じることがないように、持続的な精神的緊張を伴う過重な業務に就かせないようにするとか、義務を軽減するなどの配慮をするべき義務があるというべきである」と判断しています。

 重要な点は、「このこと(前述の義務)は労働者から業務軽減の申出がされていないことによっても、何ら左右されるものではないというべきである。また、本件においては、医師による業務軽減の指示がされていないか、使用者が選任した産業医が使用者に対して業務軽減の指示をしなかったという点も、一審被告(会社)の前記業務軽減措置を採るべき義務の有無に消長を来すことはないというべきである」としている点です。

 なお現在では、このような不幸を来たさないためにも、月100時間以上の残業をされている方には産業医が面談し、疲労度やメンタル不調の有無などをチェックすることが労働安全衛生法にも規定されるようになりました。そして、産業医が何らかの問題を感じた場合には、会社に対して意見を述べることにもなっています。

(東京高裁1999年7月28日判決、最高裁2000年10月13日決定により確定)