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[事例2-1] 過重労働による女性看護師のくも膜下出血による死亡の裁判事例

1 概要

 25歳、女性、看護師。勤務状況は病棟における交代勤務、くも膜下出血により死亡。

 平成12年8月14日以降、頭痛などの病気による休暇を取得したことはなく、定期健康診及び特殊健康診断において特段の異常はなく、業務にも支障なく、勤務状況も良好でした。しかし、平成13年2月13日、勤務を終えて帰宅した後に自宅でくも膜下出血を発症しその約1か月後に死亡した事例です。

2 裁判の経過

 下級審(地方裁判所)において、発症前6か月間の時間外労働を平均52時間22分であるとして、「時間的(量的)過重性のみをもって、本件発症の公務起因性を認めることは困難というべき」とされましたが、交代勤務によるリスクを考慮すれば、「通常の業務に比較して特に質的若しくは量的に過重な業務」に匹敵するとして、公務起因性を認め、原告らの遺族補償一時金の給付請求を認めたものです。

 控訴審(高等裁判所)においては、亡Hさんの従事していた看護業務は、先端的医療等が求められる水準も自ずから高度であり、身体的及び精神的緊張の程度も相応に大きなものであるとされました。また、シフト勤務については、疲労の回復のための十分な量の睡眠をとることができず、恒常的な残業、夜勤等の条件が重なって、疲労が回復することなく蓄積していたものとされました。さらに、発症当日の午後9時45分に「とりあえず帰ってきました。眠すぎる!」とする電子メールを携帯電話から送信したことから、眠気の表出は格段に程度が高いものであって、不規則勤務による身体的負荷が限界近くまで達していたことを推認するものであるとされました。時間外労働時間数は、発症前6か月は平均54時間15分でした。私生活において、休日は活発に活動しており、休日が、疲労回復としての役割を十分に果たせなかった可能性はあるとしつつも、亡Hさんの公務が、同人の基礎疾患である脳動脈瘤を、自然経過を超えて増悪させる要因となり得る負荷のある業務であったとする判断を左右するものでないとしています。そして、時間外労働時間が、発症前1か月は54時間45分、発症前1週間は11時間15分であり、1か月当たり100時間を超えていないが、亡Hさんの公務が基礎疾患たる脳動脈瘤を自然経過を超えて増悪させたかどうかは、時間外労働時間の量のみに基づいて行うことは相当ではなく、実際に従事していた業務の質的な面を加味し、総合して行うことが必要であるとして、公務の他の確たる発症因子はないことから、くも膜下出血の発症には公務起因性が認められるとし、一審判決と同じく遺族補償一時金の支払いを命じました。

 業務の過重性の判断は、当該労働者の具体的な勤務実態を検討した上で、総合的な観点から行うべきもので、通常の業務の過重性や他の看護師の業務の過重性を具体的に検討することなく、その過重性を否定することは相当ではないとし、被控訴人ら(遺族)の遺族補償一時金等の請求を認めました。